星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ワシントンプラザ事件の翌日、軌道上でプラネット号、銀河一美少女ティリスちゃん号の二隻と合流したオーロラ号について情報を得るためにハリソン大統領はティナとの速やかな会談を望んだ。
しかし、当のティナも事態を正確に把握できていないことが判明してハリソン以下首脳陣は頭を抱えることになった。
そこでリーフ姉妹を呼び寄せて四人で後始末を手伝い、ティリスが状況把握のために宇宙へ上がることになった。
「ティナちゃん、ギャラクシー号借りるね☆」
「ばっちゃん、操縦できるの!?」
「美少女に不可能は無いんだよ?☆」
「美少女(平安時代から存命)」
「笑うな☆」
斯くしてティリスはティナの愛機であるギャラクシー号を駆ってオーロラ号へ向かう。着艦要請を出してみるとあっさり許可が下りたので強硬派による独断ではないと判断し、少なくとも最悪の事態は回避できたとティリスは安堵する。
オーロラ号は近衛宇宙軍の旗艦で自身も女王付き武官時代に何度も訪れているので、構造は把握しているし乗員とも面識がある。
その為ティリスもそこまで事態を重くは考えていない。いや、来訪早々の祝砲についてはお説教するつもりであるが。
広大な格納庫の一角に着艦してギャラクシー号を下りたティリスを出迎えたのは、かつての腹心であり今では義妹であるアナスタシアであった。
「義姉上、お変わり無く何よりです」
「も~、アナスタシアちゃん硬いぞ?☆お義姉ちゃんって呼んでも良いんだよ~?☆」
「お戯れを……こちらへ」
いつもの調子でふざけてみたが、相変わらずの義妹を見てティリスも笑みを引っ込めた。意図を察したアナスタシアはティリスを個室へ招き、人払いを行う。宇宙が一望できる部屋で、二人は対面する事になる。
「アナスタシア、何故お前が此処に居る。近衛兵長としての務めを忘れたとは言わせんぞ」
見た目に反して厳しい口調で問いただす義姉に対して、アナスタシアも直立不動のまま答える。
「義姉上からのメッセージを耳にしまして、馳せ参じた次第です。女王陛下のご身辺に関してはヴァルキリーを常時展開させていますのでご安心を。またこの件はパトラウスも了承しております」
義妹の返答にティリスは深々と溜め息を吐く。メッセージの内容をアナスタシアに知られる危険性は承知していたが、弟の嫁に対する弱さを改めて実感したためである。
「パトラウスは帰ったら説教するとして、何故お前が?」
「義姉上、お戯れを。殿下の一件にございます」
「あれは私の判断ミスが招いた結果であり、パトラウスに女王陛下へお詫びする手配を頼んだものだ。本星へ戻り次第御前へお目通りを願い、お詫び申し上げる。お前を呼んだ覚えはない」
「慈悲深い女王陛下はお許しになられます。それよりも重要なことは、地球人が殿下へ傷を負わせたことです」
「既に話は付けた。何よりも殿下は報復を望まれていない。今更場に介入して状況を複雑化させることは殿下のご意志ではない。弁えろ、アナスタシア」
「義姉上」
「幾度も言わせるな。それで、他の任務は?まさか物見遊山に来たわけでは無いだろう」
話を続けるに当たり、身長差でどうしても自分が見上げる形となっている現状では首が疲れると判断したティリスは、室内を見渡す。
「義姉上、僭越ながら私が抱っこすると言う選択肢がございますが?」
「ふざけるな、私の精神衛生上その選択肢を採用するはずが無いだろう」
「そうですか」
しょんぼりしたような義妹を取り敢えず無視してティリスは室内を見渡し。
「些か礼節に反するが、大目に見てくれ」
サンダルを脱ぎ翼を羽ばたかせて浮かび上がった彼女は、そのまま手頃な高さのテーブルに着地。これでようやく視線を合わせることが出来た。
「よし、これで良い。それで、先ほどの質問だが」
「はっ。本心としては、殿下の身辺警護に不安が生じたので地球人を躾けるために参りました。しかしながら、この件は一旦義姉上にお任せします。
もう一件はラーナ星系の民を運ぶことです。セシル以下二百名と当座の物資を持って参りました」
アナスタシアの言葉にティリスは少しだけ眉間にシワを寄せる。まあ、幼女が怒っているようにしか見えないのだが。
「待て、想定より随分と早いな」
「義姉上のお言葉を借りるならば、ミドリムシの暗躍がありました。パトラウスが気付いた時には、ラーナ星系からの避難民の存在を不安視する同胞の数が一定数存在する状態となっていました」
「……里を離れたのは愚策だったか」
「しかし、義姉上には殿下をお支えすると言う大命がございます。起こるべくして起きたこと、避けようがありませんでした。故に予定を繰り上げたのです」
事情を聴いたティリスは深々と溜め息を吐いた。リーフ人上層部は主にリーフ人とアード人の夫婦を利用して不安を煽ったのだ。
それも露見しないよう慎重に行われた結果、ドルワの里以外でセシル達の存在を不安視する声が無視できない域に達したのだ。
もちろんセレスティナ女王による受け入れの認可はあるのだが、否定するのではなく不安を煽る辺りに嫌らしさを感じる。
「事情は把握した。地球には開拓団の来訪と、先の砲撃は双方の友好を願う祝砲であると説明する。だからアナスタシア、あまり勝手な真似はするな」
「承知しております、義姉上。数日滞在した後、本星へ戻ります。しかし、今回の威圧は必要であったと判断しております。パトラウスには無理を言ってしまいましたが」
「否定はしないが、もう少し落ち着きを持て。近衛兵長はその気になれば政治を容易く動かせる地位にあるが、故に自制が求められる職だ」
近衛兵長と政務局長はアードでも政治の中枢を担う二大職といえる。パトラウス、アナスタシアの夫婦が両職に就いている現状を疑問視する声は少なくともアード人には無い。
二人のこれまでの貢献と私利私欲に無縁な性格を皆が正しく理解しているからだ。まあ、アナスタシアの直情的な面が玉に瑕ではあるが。
「はっ、努力します。時に義姉上」
「なーに?アナスタシアちゃん☆」
難しい話は終わりとばかりにいつもの調子に戻った義姉を気にすること無く、アナスタシアは問い掛ける。
「私はまだ殿下のご尊顔を拝謁する栄誉を得ていません」
「あれ?アナスタシアちゃんはティナちゃんを見たことがないの?☆」
「はい。ハロン神殿へお越しに為られた際も、私は外の警戒に出ていましたので」
「ありゃりゃ。はい、これがティナちゃんだよ☆」
ティリスは魔法を使い直接アナスタシアの脳内にティナの画像を共有する。光を失った彼女に何かを見せるには、手っ取り早い手段なのだ。
共有されたティナの姿を確認して、アナスタシアは真顔のまま口を開いた。
「ギガント可愛ゆす」
「おいコラ」