星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
巨大戦艦による盛大な砲撃は地球中に衝撃を与えた。ただ宇宙に咲く美しい巨大な花火は脅威よりも先に壮大な天体ショーのようなものであり大半の人々を魅了したことも事実である。空を走る彩り豊かなビームと花火は、まさにロマンチックなものであったのだ。
もちろんこれによって危機感を煽られて過激な思想に走る人間も存在したが、少数派であった。これらはこれまでの交流と各国政府による友好キャンペーンによって、民衆がある程度異星人関係の出来事に慣れていた事も一因である。
ただ、各国政府上層部の受けた衝撃は凄まじいものである。祝砲であるとティリスから知らされてはいるが、もしあれが実弾であったなら地球はあっという間に死の惑星と化してしまう事を正しく認識したためである。
それはブリテンも例外ではなく、急遽開かれた首脳陣による会議は紛糾していた。飛び交う怒号を肴にゆっくりと愛用している葉巻の香りを楽しんでいたチャブル首相は、おもむろにテーブルをそっと叩いた。騒がしい会議室内でも不思議とその音は響き、場が静まり返る。
「さて諸君、充分に騒いだかね?結構。では紅茶でも飲んで喉を潤そうではないか」
「何を悠長な!閣下!これは明らかな軍事的恫喝に他なりません!国民の不安を取り除くためにも、速やかなる対応を取らねば!」
「ふむ、速やかな対応か。君はどの様な対応をすれば良いと思うかね?」
「軍を配備し、攻撃に備える必要があります!また、核兵器の使用を視野に入れた反撃の準備も!」
この若い議員は若さ故か何かと過激な意見が多い。ただ若さ故の勢いは政治の世界に必要だと判断したチャブルは彼を起用し続けている。周囲の閣僚達は固唾を飲んで二人を見守っていた。
「ほう、核兵器の使用を視野にか。随分と大掛かりじゃないか」
「現在アード側へ有効と思われる手段は、核兵器しかないと判断しました。地球最大の火力を準備すれば、アード側への牽制となります。我が国は当然として、地球の主権を護るためには必要であります!」
「ほうほう、実に愉快な提案だ。確かに相手が武力で威圧してきた場合、こちらも備えを見せつけるのは決して間違った判断ではない。反撃する手段があると知れば、相手も躊躇する。それが正しい抑止力だからね」
チャブルは愉しげに微笑み、そして灰皿に葉巻を置いた。
「大いに結構、精力的に取り組んでくれたまえ。準備が出来たらちゃんと知らせてくれよ?ワシはアードへ亡命する準備をせねばならんからな」
「なっ!?」
チャブルの言葉に若手閣僚は目を見開く。そんな彼を見てチャブルは笑みを更に深めた。
「人類の叡知、核兵器か。少なくとも我々より数百年、下手をすれば千年単位で遥かに隔絶した技術を持つアードに対して有効だとは到底思えんし、そもそも我々のセキュリティはアードからすれば無いようなものだ。
準備した瞬間察知されて、先制攻撃を受けて滅びるだけだとなぜ気付かんのかね?」
「それはあまりにも横暴です!」
「先の会議でも述べたが、我々がアフリカ、アジア、南北アメリカで行ってきた事だよ。まさか、アードにはするなと言うのかね?ワシにはそんな真似は出来んな。 それに、彼らは理解して学習してしまったよ。我々地球人の血塗れの歴史をね」
黙り込む一同を見渡し、チャブルは再び葉巻を手に取り香りを楽しむ。
「理不尽だと嘆くのは簡単だ。破れかぶれに反発してみるのも良いだろう。その結果が地球滅亡なら、地球人はそれが運命だったと諦めよう。
だが、それらは一般人の勝手な妄想で済ませるべきであり、我々為政者が取るべき道は別にある」
「それは一体……?」
「極めて幸運なことに、アード人は善意の塊だ。我々からすれば信じられない程のお人好し集団だ。ならば素直に彼らの庇護下へ入り、彼らの善意を存分に満たしてやることを考えるのだ。
そうすれば彼らは、喜んで我々が差し出した以上の恩恵を与えてくれるだろう」
「それは、まあ」
「プライドや面子ではなく国益を優先するなら、アード人の欲求を満たすように動けば良い。
もちろん余計な混乱を生まぬように細心の注意を払う必要はあるが、それは我々為政者の腕の見せ所だ。なに、難しい話ではないよ。地球の抱える問題をどんどんアードへ提示すれば良い。どうせ我々では対処できん」
「しかしそれでは主権が」
「まるで庇護国ではありませんか」
「なにが問題なのだね?途上国を見たまえ。我々からの支援を最大限に利用して国を富ませているではないか。もちろん、例外もあるがね」
チャブルはここで葉巻を置き、再び笑みを深めた。
「萎縮する必要はない。少なくとも我々は先人達に支配された人々に比べ非常に幸運だよ。相手は善行をしたくて仕方がない種族だ。思う存分に甘えてしまえば良い。あちらは善行を行えて幸せ、我々は恩恵を享受して幸せ。うむ、素晴らしい世界だと思わんかね?」
ブリテンの老獪な政治家だけはアード人の本質を見抜き、最大利益を享受すべく舵取りを行う。
一方我らが大使殿は。
「えっ!?セシルさん達が来てるの!?」
「そーだよ☆それに近衛宇宙軍の面々や近衛兵長のアナスタシアちゃんも来てるし、挨拶しておいた方が良いかもね☆」
ワシントンプラザの後始末を手伝ったティナ達は、そのまま市内の高級ホテルで身体を休めていた。そこへティリスが舞い戻り、情報を共有したのである。
「こっ、近衛兵長のアナスタシア様!?」
「ティナ、どんな方なのですか?」
「雲の上の人だよ、フェル。あー、緊張で胃が痛くなってきた」
「はい、胃薬」
当たり前のように差し出された小瓶を見て、ティナは真顔になる。なぜなら小瓶を満たしている液体は虹色に輝いているのだから。
「フィオレ、なにこれ?」
「地球の植物を配合してみた新薬よ。胃痛に効く……多分」
「多分って何さ!?」
「仕方無いでしょ! まだ試してないんだから! ティナ! 薬学の発展のための礎になりなさい!」
「嫌だよ!?フェル助けて!」
「ティナ、痛いのは最初だけですから……」
「まさかの裏切り!?と言うか痛いの!?」
「大丈夫!先っちょだけだから!」
「それ奥まで入れる人の台詞だから!わっ!本当に注射!?」
「美少女の戯れは眼福だね☆」
少女達(?)は賑やかな夜を過ごし、件のアナスタシアは。
「ペロリストだと?なんと面妖な。新しい種族か?」
淑女検索中。
「なんだ、同好の士か」