星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
フィーレが造った旧ザ◯はカレンの活躍で一旦ワシントン郊外へ運び出て、エリー湖近くにある異星人対策室本部近くへ運んだ。もちろんかなり距離があるから郊外に出た後は母艦、銀河一美少女ティリスちゃん号のトラクタービームで運んだよ。
目に見えないビームで物体を捕まえて運ぶSF技術だけど、“みよんみよん”って音は鳴らない。様式美だと思うんだけど、残念ながら無音だ。
取り敢えずロボット……。
「ティナ姉ぇ、モビ◯スーツ」
あっ、うん。モビル◯ーツを異星人対策室本部に預けた私達は、そのまま宇宙へ上がることにした。ワシントンプラザ事件の混乱も収まりつつあるしね。
セシルさん達移民団の皆さんと会いたいし、何よりアナスタシア様と会わないといけない。
「呼び出したら?喜んで来ると思うよ☆」
「冗談はやめてよ、ばっちゃん。近衛兵長様を呼び出すなんて畏れ多すぎるって」
「冗談じゃないんだけどなぁ☆」
ばっちゃんの悪ふざけは置いといて、今まで挨拶していないから怒ってるんじゃないかなぁ?怖いなぁ。
でも挨拶しないって選択肢は無いわけだから、頑張るしかない。
宇宙へ上がる前にアナスタシア様と面会する事をジョンさんに伝えたら、地球からの贈り物を預かった。直ぐに準備できたのは、交易用として異星人対策室に備蓄されている地球の食料なんだけどね。これまでの反応を見る限り、喜んでもらえるはずだ。
銀河一美少女ティリスちゃん号へ乗り込んで宇宙へ上がり、オーロラ号を目指す。軌道上から離れて月軌道に居るみたい。まあ直ぐに着くけど。
準備をしていると、ばっちゃんが展望室で星の海を眺めているのに気付いた。何か気になるから声をかけてみる。星を見つめるばっちゃんは真剣な顔だったけど、振り向いたらいつもの笑顔だった。
「ちょっと悩みがあるんだよね☆」
「悩み?私に出来ることは少ないけど、話なら聞けるよ?」
「実は、最近気を付けないと溢れ出ちゃうんだよね☆」
「溢れ?」
まさか、マナが?ばっちゃんもアード人からすれば桁外れのマナを持ってるし、制御できなくなってる!?
「色気が☆」
…。
「アリア、連絡挺を準備して。オーロラ号へ乗り込むのに使うから」
『畏まりました』
「笑え☆」
ティリスを放置してティナが部屋を後にすると、彼女は再び表情を引き締めてメッセージのやり取りを再開する。相手は義妹であるアナスタシアである。
『アナスタシア、分かっていると思うが』
『無論、オーロラ号乗員総出でお迎えする所存です』
『おい』
『義姉上、ご安心を。些か戯れただけです』
『お前の戯れは笑えん。女王陛下のご意志を無視するような真似はするなよ』
『無論です、義姉上。女王陛下のご意志は、すなわち我らアードの意思です。不敬ではありますが、殿下は大使として遇する予定です』
『それで良い』
『お越しになる人数は?』
『私とティナ殿下、それとフェラルーシア殿下だ』
『何と、リーフの忘れ形見まで?』
『フェラルーシア殿下はティナ殿下のお側を離れん。まして地球で色々あったからな』
『でありますか。ふむ、リーフ人の姉妹は?』
『お前に会わせるなど拷問に等しいからな、地球に置いてきた』
『ああ、姉の方は例の件に関与していましたな』
『ようやく落ち着いてきたんだ。蒸し返す必要もない』
『委細承知致しました。では、お待ちしております』
『ラーナ星系の民との時間を多く割いてくれ。このところ色々あったからな。殿下には、ご自身の行動によって救われた命が確かにあると改めて実感していただきたい』
『その様に。セシル団長らも殿下との再会を楽しみにしています』
『それなら問題ないな。部屋を手配してくれ。一泊する。では』
『はっ』
月軌道へ到着した私達は、小型の連絡挺へ乗り込んでオーロラ号へ向かう。間近で見るとその巨大さを実感させられる。銀河一美少女ティリスちゃん号でも大きいのに、その数倍だからね。
今回はフィーレ、フィオレ姉妹を置いてきた。あの事件に関与したフィオレを近衛の人達に会わせるのは避けた方がいいって、ばっちゃんに助言されたからね。
確かにその通りかもと思って二人は合衆国で待機させた。ジョンさんが居るから大丈夫だよね?
そのまま連絡挺は広い格納庫へ着艦。高さも十分にある格納庫には色んな種類のスターファイターが何十機も翼を休めていた。何機居るのかなぁ。
「最大搭載数は機密だが、今回は二百機程積み込んでいる」
フェルと一緒に格納庫を見渡していると、両目を青い布で覆った女の人がゆっくりと近付きながら教えてくれた。高位の役職者である証のローブを纏ってる。この方が、アナスタシア様!
「初めましてだな、大使殿。私はアナスタシア、非才の身ではあるが近衛兵長の大任を務めさせて頂いている」
「ちっ、地球親善大使のティナです!」
「リーフ人のフェラルーシアと申します。初めまして、アナスタシア様」
緊張して言葉が上手く出なかった。フェルは度胸があるなぁ。
「肩の力を抜くと良い。大使殿の活躍は聞いているし、女王陛下より大命を授けられているのだ」
「私なんかに……畏れ多いことですっ!」
近衛の方からすれば、こんな小娘が女王陛下から大命を任されているなんて面白くないだろうなぁ。
「自身を卑下する必要はない。聞けば大使殿は地球人のために尽力しているとか」
「大したことはしていません。命より大切なものは無いと思っていますから」
手を出さない事で救える命がある。そんな話はよく聞くし、理解できる部分もある。でもそれで納得するような性格ならあの日美月さんを助けていない。これだけは変われない。
……ん?あれ?何だかアナスタシア様が震えているような……まるで感極まったような!
「なっ……なんと気高いお考えなのか!このアナスタシア、でん……あっふぅっん!?」
アナスタシア様が何か言いかけた瞬間、いつの間にか回り込んでいたばっちゃんが膝カックンしたぁあっ!!!
「ばっちゃんなにしてんのさ!?」
「もー、アナスタシアちゃんったら☆うっかりさんなんだから☆」
「いっ……痛い……」
「そりゃ痛いですよね!おもいっきり膝からビターンッ!っていきましたもんね!」
膝大丈夫かな?滅茶苦茶膝さすってる。あっ、フェルが魔法をかけてくれた。優しい。
「あー、言い忘れてたー☆アナスタシアちゃんはパトラウスの奥さん、つまり私の義妹ちゃんなんだよー☆ティリスちゃんうっかり☆」
「はぁ!?先に言ってよ!」
「感謝する……とっ、とにかく今は疲れもあるだろう。部屋を用意させた。今日はゆっくり休むと良い……」
「あっ、はい」
……何だろう、色々と不安になってきた。