星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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オーロラ号にて

 私を包み込む柔らかい感触と心地よい香りを感じて、自分が目覚めつつあることを自覚した。昨日はフィーレのやらかしの後始末とアナスタシア様との面会で疲れ果てて、案内された部屋でそのまま眠っちゃったんだ。

 用意された部屋は物凄く豪華で、どう考えても貴賓室だった。庶民である私はどうしても慣れないんだよねぇ。個人的にはビジネスホテルで十分だ。まあ立場があるから無理だろうし、こればっかりは慣れるしかない。

 ……というか、随分と柔らかいベッドだなぁ。枕も独特な形を……ぉおおおお!???

 

 

 

「なにこれどういうこと!?」

 

 

 

 今の状態を説明すると、ベッドで仰向けに眠ってるフェルの上に私がうつ伏せになってその富士山みたいな双丘を枕にして眠ってたんだ!なにがあったの!?

 確か昨日は部屋に来てそのままベッドへダイブして……そもそもフェルは隣の部屋だったような!?

 いや、今はそれよりも!

 

 

 

「ごめんフェル!重かったよね!直ぐに降りる……」

 

 

 

「うう~ん……」

 

 

 

「むぎゅうっ!?」

 

 

 

 慌てて起き上がろうとしたら、逃がさないとばかりにフェルが両腕を私の背中に回して抱きしめた。私はそのままフェルの胸に顔を押し付けられて……ヤバい!フェルってば力が強い!逃げられない!

 

 

 

「むー!むー!」

 

 

 

 つっ、強い!私の顔は今フェルの富士山(控え目表現)に埋もれてる!このままじゃ二度目の人生の死因が愉快なことになっちゃう!

 とにかく拘束から抜け出すためにジタバタしていると……。

 

 

 

「むー……ロック」

 

 

 

「ふむぐっ!?」

 

 

 

 まっ、魔法!?身体が動かないっ!

 ……あっ、ダメだこれ。そのまま私の意識は暗転してしまう。

 

 

 

 

 

「悲報、様子を見に来たら事後だった件☆」

 

 

 

「違うからっ!!」

 

 

 

 しばらくしてようやく拘束から脱出できたけど、心配して様子を見に来てくれたばっちゃんに誤解されてしまった。

 いやまあ、結構ジタバタしててお互いの寝間着……ネグリジェみたいな奴かな?それが乱れていたから、そう見えても仕方無いんだけどさ。

 

 

 

「ティナちゃんはまだしも、フェルちゃんは早起きなのに珍しいね☆」

 

 

 

「疲れが溜まっていたんだと思うよ」

 

 

 

 精神的な疲れは私と比べ物にならないと思う。心配ばっかり掛けちゃってるからね。今も眠ってるし、このまま寝かせてあげよう。

 

 

 

「ばっちゃん、なにか用事があるんじゃないの?」

 

 

 

「セシルちゃんが会いたいってさ☆」

 

 

 

「セシルさんが?分かった」

 

 

 

 月の居留地へ本格的に入植する前に挨拶しておきたかったしね。地球と居留地を行き来できる転送ポートも設置済み。場所は合衆国と日本にした。将来的にはあちこちに設置したいけどね。

 因みにこの転送ポート、利用するには魔法が必要だから地球人だけじゃ使えない。

 つまり、怪しい人が居留地へ乗り込むリスクを最小限に出来る。当分は地球人は利用しないようにしているからね。

 これはハリソンさんからの提案だ。危険物を持ち込んだり危険な考えを持ってしまった人を近付けないようにするためだ。悲しいけど、まだまだ受け入れられたとは言えないからさ。

 

 

 

「ティナ大使、お久しぶりですね」

 

 

 

 身支度を済ませてオーロラ号の談話室へ行くと、そこにはセシルさんと数人のラーナ星系の方が待っていた。

 

 

 

「こんにちは、セシルさん。それに皆さんも。出来れば気軽にお願いします。堅苦しいのは得意じゃなくて」

 

 

 

「そうですか?では、少しだけ」

 

 

 

 セシルさんの表情が少しだけ和らいだ。うん、この方がお話しし易い。

 

 

 

「謝らせてください。アードでの事で何の力にもなってあげられなくて……」

 

 

 

 ばっちゃんに丸投げしてしまった。もちろん本星に居る間は出来るだけ交流していたけど、役立たずだったのは間違いない。

 

 

 

「貴女が危険を顧みずに私達を助けてくれたから、私達二百名は生き延びることが出来たの。

 だから、貴女が謝る必要はありません。むしろ、私達こそ助けてもらったのに別の負担を掛けてしまってごめんなさい」

 

 

 

 セシルさん達が頭を下げたので私は慌てて立ち上がって手を振った。

 

 

 

「頭を上げてください!負担だなんて思っていませんから!」

 

 

 

「……ありがとう」

 

 

 

 セシルさんはもう一度頭を下げて、ようやく頭を上げてくれた。

 

 

 

「いよいよ移住ですが、なにか不安はありませんか?いや、不安はありますよね。私も出来る限り協力しますから!」

 

 

 

 先ずは架け橋として、セシルさん達と地球の間に立たないといけない。セシルさん達の事は事前に地球へ伝えてあるけど、改めてハリソンさん達に伝えておこう。

 物資はアードから持ってきて貰った物があるから、当分は不足しないとは思うけど……。

 

 

 

「その事なのですが、ずっとお世話になるのは忍びなく私達にも何か出来ないかと思って」

 

 

 

 セシルさんが頷くと、隣に居た女の人が透明なケージを取り出して……これは……。

 

 

 

「氷の……花?」

 

 

 ケージに入っていたのは、氷で出来たバラのような花弁を持つ花だった。茎から葉っぱまで全部氷だ。

 

 

 

『これはラーナフラワーです。ラーナ星系のラーナ3、ラーナ4に植生する珍しい花です』

 

 

 

 アリアが解説してくれた。

 

 

 

「ラーナフラワー……セシルさん、これは凍結保存されたものですか?」

 

 

 

「いいえ、この花は自然そのままの姿ですよ」

 

 

 

「えっ!?凍っていますよ!?」

 

 

 

「ラーナは寒い惑星ですから、このように不思議な花があるんです」

 

 

 

 ラーナ星系の恒星は赤色矮星だったかな。放出されるエネルギー量も少なくて、居住惑星でも平均気温が地球単位でマイナス100℃以下だったような気がする。

 

 

 

「どんなに温めても決して溶けない氷の花です。そしてこの花は、医薬品の材料として重宝されていました」

 

 

 

『マスターセシルの言う通りラーナフラワーはその植生から環境適応能力が非常に高く、また免疫機能も優秀です。

 それ故に美しさから観賞用としても愛用されますが、高度な医薬品の生産に不可欠な材料として利用されています』

 

 

 

「へぇ~、こんな花があるんだ!」

 

 

 

 宇宙は広いなぁ。常識では考えられないような生き物や植物が存在するんだから。

 

 

 

「私達はこのラーナフラワーの栽培方法を熟知しています。居留地に専用の薬草園を作っていただいて、こちらを栽培して地球やアードとの交易品にならないかなと」

 

 

 

「本当ですか!?」

 

 

 

 観賞用としてはもちろん、医薬品の材料にも使えるなら地球も興味を持つはず!トランクや医療シート以外の交易品は大歓迎だよ!

 

 

 

『ラーナフラワーの適応力を加味すれば、地球でも問題なく生育することが可能です。また免疫力の高さ故に細菌などを媒介することもありませんので、地球環境への影響は無いかと。ただ、繁殖力が低いので大量生産には向きませんが』

 

 

 

「栽培も隔離された居留地で行いますから、地球環境に悪影響を与える心配はありません。ただ、取り扱いには注意してほしいのですが」

 

 

 

「早速問い合わせてみます!これ、借りても良いですか?」

 

 

 

「もちろんです、こちらはサンプル品として用意したものですから。少しでも貴女の役に立てたなら良かった」

 

 

 

 セシルさん達も笑顔だ。私はケージを受け取って、直ぐにジョンさんへメッセージを送った。この不思議な花を紹介するために!

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