星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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移民団来訪の影響

 ティナ達がオーロラ号での一時を過ごしている頃、合衆国のホワイトハウスではいつものように異星人関係の会議が開かれていた。

 ファーストコンタクトから幾度も開かれている故にメンバーも変わり映えがなく、政府からはハリソン大統領に政府要人達。そして異星人対策室からはスキンヘッドマッチョ、朝ギリー、そして常識的な海パン野郎が参加していた。

 

 

 

 ここに本来ならばオブザーバーとしてティリスも参加する予定であったが、アナスタシアの開幕やらかしを目の当たりにしてティナがオーロラ号滞在中は目を離せないと判断し、辞退する運びとなった。

 ティリスの不参加にジャッキー=ニシムラ(UMA)以外の参加したメンバー全員は安堵のため息を吐いた。強かな彼女にまたどんな要求を出されるか分かったものでは無いからだ。

 チャブル首相ならば上手く付き合えるだろうが、この場には残念ながらティリスと渡り合える人物は居ない。

 

 

 

 さて、今回の議題は月に建設中の居留地である。既に月面基地や地上からの観測でドーム状の巨大な建造物がいくつも建設されていることが判明しており、ドームの間には幾重もの通路と思われる構造物も存在した。これらの映像がスクリーンに映し出されて、まさにSF映画のような光景に参加者一同は息を飲む。

 

 

 

「統合宇宙開発局からの報告では、あの巨大戦艦がやって来てから建設速度が上がったらしい」

「ええ、オーロラ号には入植者達が同乗しているらしく居留地の完成を急いでいるのだとか。

 どちらにせよ、我々からすれば非常識な早さであることに変わりはありませんが」

 

 

 

 ハリソン大統領の言葉にジョンが応じる。現地では複数のクラフト装置が次々と建材を生み出して、それを無数の作業ドロイドが素早く組み上げているのだ。

 やり方そのものは地球のブロック工法に近いものがあるが、その規模と速度が常識外であることは確かである。

 

 

 

「入植者についてだが、昨日ティナ嬢から詳細が伝えられた。人数としては二百名だ」

「にっ、二百名……!」

 

 

 

 纏まった数のアード人が同時に月へ入植する事態に皆が息を飲む。場の空気を変えるべく、ハリソンは敢えて笑顔を浮かべた。

 

 

 

「諸君、慌てる必要はない。確かに地球上ならば問題が山積みだが今回の居留地は月だ。地球に大きな影響はない。ケラー室長、そうだろう?」

「はい、大統領。当分は月面での生活に慣れることを最優先にするそうです」

「つまり、地固めですな?」

「ええ。その間に我々も受け入れの準備を行います。先ずは観光地への招待を考えています」

「場所は入念に検討する必要がありますな。警備の問題もありますから」

「候補としては我が国、或いは日本。またはブリテンを考えているが、他に案はあるかね?」

「中東など如何でしょう?アードに砂漠は存在しないと聞きますし、物珍しさもあるのでは?

 それに、いつまでも傍観させるわけにはいきますまい?」

 

 

 

 ジャッキー=ニシムラ(特技は水鉄砲)提案を受けて、皆が唸る。地球環境の多様性を示す好機ではあるが、中東連合はアードと距離を保っている。

 とは言え先の国際首脳会議で地球とアードの国家観の違いを再認識するに至り、多少は態度を軟化させつつあるが。

 

 

 

「つまり、ジャッキーはこれを機会に中東を交流に参加させるつもりなのだね?」

「そうです、大統領閣下。アード側が秘密裏に提示した条件を覚えていらっしゃいますかな?我々は百年以内に統一政体を作り上げる必要があるのです。残念ながら、悠長に構えている時間はありません」

「やれやれ、まさか異星人交流がこんなにも難しいものだとはな……」

「映画のようにはいきませんな、大統領」

「全くだ、マイケル。とは言え、相手は侵略者ではなく良き隣人となり得る存在だ。少なくとも巨大な円盤で都市を破滅させるような存在ではなかったことを、神に感謝しよう」

 

 

 

 一方中華国某所の地下会議室。堅牢な地盤で護られた秘密の部屋に、国家主席である黄卓満と幕僚達が集まっていた。

 

 

 

「ふむ、移民の数は二百名。それも女子供だけか」

 

 

 

 黄卓満の呟きに皆が神妙な視線を向ける。ティナから情報を受けた合衆国は無用な混乱を避けるために各国と情報を共有していたのだ。

 

 

 

「女子供だけとは不可解な。何らかの事情があるのでしょうな」

「うむ。だが、それは重要ではない。いずれこの二百名が地球へ舞い降りると言うことだ」

 

 

 

「相変わらず交流の主導権は合衆国が握ったままです。全く何を考えているのか」

「我が国こそアードの先進的な技術を必要としているのに」

「米帝は今も変わらずか、不愉快ですな」

 

 

 幕僚達が騒ぐ中、黄卓満は静かに口を開く。

 

 

 

「欲しいな。可能ならば雄雌一匹ずつ。アード人と言えど子供ならばやり様はあるだろう。例の国は?」

「はっ、残念ながら元首の失脚は避けられません。既に息子二人が後継の座を巡って動き始めています」

「……外交部長」

「はっ」

「アード人を手に入れた方を後援すると伝えてくれ」

「御意。もちろん口約束ですな?」

「当然だ。失敗したとしても、腹は痛まん。いや、その際は平和を護るために併合すれば良い。大義名分はいくらでも作れる」

「はっ。成功した場合は?」

「アードとの関係を重視する我が国が率先して保護する。その際健康状態を確認するために様々な検査を受けて貰う必要はあるが、文句は言えまい」

「ではその様に」

 

 

 

 中華が怪しい動きを見せ、そしてブリテンでは。

 

 

 

「ああ、外務卿。新しいお客様の来訪地だが、我が国は辞退すると合衆国に伝えてくれたまえ」

 

 

 

 チャブルの言葉に幕僚達は目を見開く。

 

 

 

「汚名返上のまたとない機会ですよ!?」

「ははは、それはあり得んな。むしろ恥の上塗りにならんか心配だ」

 

 

 

 驚く閣僚達を前に、チャブル首相は愛用の葉巻を片手に笑みを深めた。

 

 

 

「移民の皆さんは地球の事を熱心に学んでくれているようだ。実にありがたい。だが、ティナ嬢ほどの理解は無いだろう。忘れるな、諸君。彼女は異常なのだ。当然大問題が発生する可能性が高い。

 そんな危険な博打に我が国が巻き込まれるなど想像もしたくない。先の件もある。辞退は不自然ではない。違うかね?」

「閣下」

「諸君、目先の利益に囚われてはいかん。汚名返上の機会は幾らでもある。腰を据えてじっくり取り掛かろうではないか」

 

 

 

 セシル達の月移住に地球各国も動き始めていた。

 そして。

 

 

 

「おねーちゃん、やる気が出るお薬ちょうだい」

「あんまり薬に頼るのは良くないんだけど……ほら、これを飲みなさい。元気になるから」

「ん、ありがと」

 

 

 

「……胃が痛くなってきたな」

 

 

 

 フィーレ、フィオレ姉妹のやり取りを聞いたジョンは静かに胃を痛めた。

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