星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
フェルが転移に失敗して私達は今アフリカ大陸北部にある国、エジプトのピラミッドの側に居る。間違いはないと思うけど、一応現在地を確認しておこう。
「アリア、現在地が分かる?」
『現地呼称エジプトのギザと呼ばれる地域です。前方にある建造物は……』
「ピラミッドだよね。と言うことは、ギザの大ピラミッドと大スフィンクスかな?」
「ピラミッド?スフィンクス?」
「あの三角形の建造物だよ。昔の王様のお墓だって聞いたことがある。そしてスフィンクスは、あれだよ。顔が人間で身体がライオンなのかな?」
『現地ガイド情報を参照するに、この周辺にはピラミッドが多数存在するためメンフィスとその墓地遺跡と呼称されています。建造時期は凡そ四千年前とされています』
「四千年も昔の建物が現存しているんですね。それに……お墓、ですか」
「大きなお墓だよねぇ」
宗教的なものや権威的な理由があるらしいけど、何千年も前にこんなにも大きな建物を作れるんだから地球人の潜在能力の高さには圧倒されるよね。
「ところで、フェル。どうしてここに?」
「実は昨日、ティナが早く休んでしまったので地球の事を調べていたんです。それでピラミッドの事を知りまして。近代的な建物じゃなくて石造りだったからアードみたいだなって」
「それなら仕方ないか」
転移魔法はイメージ力が大切だ。転移する時にピラミッドの情景を思い浮かべてしまったのかもしれない。
「地球の遺跡にも興味があるんです。簡単に調べただけですけど、ここ以外にも何千年の歴史を感じられる遺跡がたくさんあるとか。いろんな場所をティナと見てみたくて」
「私もだよ、フェル」
本音を言えば、政治とか気にしないでフェルと一緒に色んな場所を見て回りたい。それは紛れもない私の素直な気持ちだ。
親善大使を任された以上勝手は許されないけど、これも交流の一環と思えば良い。それに。
「何だか警備が厳重だよね?」
真っ昼間だし周りには大勢の観光客や現地の皆さんが居るけど、それをしっかりと警察や軍の人達がブロックしてる。
そりゃ有名な観光地だから警備の人は居るだろうけど、ちょっと多いような。どう考えても軍人さんは居ない筈。
「もしかしたら特別なイベントを開催しているのかもしれませんよ?」
「それだと邪魔するのは悪いし、ちょっと離れよっか」
「はい、ティナ」
私達は翼や羽を羽ばたかせてゆっくりと浮かび上がった。まるでそれを待っていたように警備の人達も動き始めた。
私達は彼らに合わせるようにゆっくりと飛んで、出来るだけ人が居ない場所を目指す。
実は昨晩の段階でフェルはティナの気晴らしのためにエジプト訪問を思い付き、ジョンに相談していたのだ。パリでの一件で地球人への警戒心が更に高まっていたのも理由である。
ワシントンプラザの一件でティナの精神的な疲労を心配していたジョンは、気晴らしになるだろうと直ぐに了承してハリソンに相談。気晴らしはもちろん、エジプト訪問が実現すれば蚊帳の外扱いだったアフリカ連合も少しは落ち着くだろうと言う政治的判断もあり、現地大使館を通じて密かにエジプト政府にティナとフェルの訪問を伝えていた。
急な連絡でエジプト政府も困惑したが、アフリカ最初の訪問地に選ばれたことは政治的にも極めて重要な意味を持つことを正しく理解していた。
また訪問時間は不明であったが転移する場所が分かっていたので、現地警察と軍を投入して警備体制を強化していたのである。時間に猶予があったことも幸いし、何よりパリでの一件の再来など絶対に起こさせないと言う覚悟が垣間見えた。
もちろんエジプトを含む地域もまた複雑な宗教問題を抱えていたが、それよりも環境問題の方が遥かに深刻でありアードとの交流によって状況が改善することをエジプト政府が望んだと言う事情もある。
政府としては国民の反応を危惧していたが、ティナとフェルは現地の警備隊にしっかり守られながら誘導にも素直に従い周辺の遺跡群を散策。急遽手配されたガイドの言葉を熱心に聞きながら強い関心を示しつつ敬意を表した。
この行動は生中継で放映され、自国の文化や歴史に関心を示して敬意を表した二人の行動は国民の自尊心を存分に擽ることになる。
そして何より。
「地球の皆さんおはようございます!それともこんにちわ、こんばんはかな?アードからやって来ましたティナと!」
「フェラルーシアです」
「愛称のフェルと呼んであげてくださいね!前々からやろうと思っていた動画投稿を始めてみました!」
ジャッキー=ニシムラ(永久賢者)が用意した世界最大の動画投稿サイトのアカウントを利用して始めた生放送である。
地球上に存在する全ての言語にリアルタイムで翻訳され、誤訳が一切存在しない。
『ティナちゃんフェルちゃん!?』
『嘘だろ!?何かのフェイクか!?』
『いや、このアカウントは異星人対策室の大導師ニシムラが作った奴じゃないか!?』
『ってことは、本物!?』
コメント欄は恐ろしい速度で埋め尽くされ、視聴者は開始数分で万を軽く越えた。
「思っていたよりも反響があるなぁ。今私達はエジプトにお邪魔していまーす!」
『エジプトぉ!?』
『合衆国に居るんじゃなかったのか!?』
『ようこそ我が国へ!』
『俺達はミス・ティナを歓迎するよ!』
『ってか、場所どこだ!?今から行く!』
『流石にアフリカは遠いなぁ』
『くそっ!どこでも◯アの発明はまだか!』
現地の人らしきコメントがいくつかピックアップされ、ティナは笑顔のまま手を振る。
「あー、私達を探すのは止めてください。とても警備が厳重だから、先ず近付けないしお互いにお仕事を増やしちゃったら大変ですから。画面越しで我慢してくださいね」
『お前ら、言われたぞ』
『まあ地球のVIPだもんなぁ』
『直接見てみたいが、捕まりたくはないなぁ』
『物理的に無理だった』
『けどなぁ、それでも行く奴は居るからなぁ。ティナちゃん、気を付けるんだぞ』
「あはは、分かっています。出来れば我慢して欲しいけど……ちょっとフェル~、なにしてんの?放送中だよ?」
キョロキョロしているフェルをティナが注意するが、本人は気にすることもなく。
「ここ、砂が一杯です」
「砂漠だからねぇ」
「緑がありません」
「それが砂漠だよ。まあ、オアシスとかあるけどさ」
「あのスフィンクスでしたっけ?あれは地球人のペットですか?」
「怒られちゃうから止めようね!?」
放送を気にせず周りの景色に興味を示すフェルに対して、珍しくティナが慌てると言う珍事が発生した。
『www』
『フリーダムフェルちゃんww』
『珍しいな、ティナちゃんが振り回されてるぞww』
『まあ、アードは海洋惑星みたいだし砂漠は無縁なんじゃないか?』
『宇宙には砂の惑星は無いのか?』
『ロマンだよなぁ』
だが、ニュースで報道される姿ではなく等身大の彼女達を映した動画は大きな反響を呼ぶことになるのである。