星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
エジプト来訪初日の夜、私達は政府が用意してくれたオアシス近くにあるホテルで身体を休めていた。本当は政府の皆さんと会おうと思っていたんだけど、スケジュールの問題で明日の昼間になった。
最初は無理をしてスケジュールを調整しようとしてくれたんだけど、申し訳無くて本来のスケジュールを優先してもらったんだよね。
まあ、フェルが砂漠やピラミッドなんかの遺跡に興味津々で直ぐに政庁へ行けそうになかったことも理由だけどさ。
でも、観光に来て良かったと心から思えたよ。前世でテレビや雑誌で見たことがあるピラミッドやスフィンクスを間近で見ることが出来たからね。その威容に圧倒されちゃった。あれこそまさに歴史ロマンだよねぇ。
「不思議な環境でした。とても生物が生存できないような土地なのに、独自の生態系が形成されているんですから」
「過酷な環境でもそれに適応した生態系が形成される。生き物は凄いよね、本当に」
その逞しさには頭が下がる。生命はどんなに過酷な環境でも命を繋いでいく。これは地球だけじゃない、宇宙の奇跡だ。
「ところでティナ。お土産はそれで良かったんですか?」
「うん、あんまりたくさんあげたら問題になりそうだから」
今回私達はいつもの交易品以外にもトランクと医療シートを用意してる。今現在合衆国と日本が主な滞在地で、これだと交流している幅が狭すぎる。
これまでは合衆国に訪問地の策定をお任せしてきたけど、それだと訪問する国は片寄ってしまうし何より外交の主導権を合衆国に握られてしまうのが悪いらしい。私としては構わないんだけど、まあ政治のお話だ。
ただ私個人としても色んな国へ行ってみたい想いもあったし、ある程度は自由にやるつもりだ。もちろん事前に連絡してね。
そして、手ぶらで行くわけにもいかないからお土産を用意することにした。ばっちゃんを含めて皆で話し合った結果、訪問する国にはトランク三つ、医療シート百枚をお土産として提供することになった。
医療シートはまだしも、トランクは取り扱いに注意が必要だ。悪いことに使おうとすればいつでも使える。まあ、これはこれまで持ち込んだトランク全般に言えることだけどさ。
この問題はアリアによってあっさり解決した。いや、していた。どうやらアリアはこれまで持ち込んだ全てのトランクを遠隔で管理しているみたいだ。
『不正利用が発覚した時点で自壊プログラムが作動し、その場で崩壊します。また同時に現在地等を速やかに現地政府に通報します』
安心感が半端じゃない。ちなみに不正利用の判断は法律と地球の倫理を基準にしているみたいだ。ちょっと心配になったけど、要は犯罪行為はダメって事だね。
で、トランクの問題点は持ち運びにある。トランクをトランクに収納できないから、軽いけど嵩張る。ここはフェルの転送魔法に甘えることにした。携帯式の転送装置も用意しないとなぁ。
「ティナ、お話は変わりますけどこの地域の地球人は不思議な服装をしていますね。特に女性はまるで素肌を出さないように気を付けているように感じました」
「直射日光から素肌を守るためというのもあるけど、宗教が理由だと思うよ」
「宗教?」
「そう、エジプトも宗教が盛んな国だから文化に配慮してあげないと」
確か前世でも国民の九割がイスラム教徒だったはず。過度な素肌の露出などは控えた方が良いって観光ガイドに書いてたなぁ。まあ、行く暇なんて無かったけどさ。ハハッ!
「宗教を元にした文化ですか」
「私達はお客さんの立場なんだから、相手の文化を尊重してあげないと」
歩み寄る姿勢は大切だ。前世でも日本の文化を楽しむ外国人さんを見ると、無関係なのに何故か嬉しくなったものだ。着物とかを着たりしてさ。日本人はその辺りかなり寛容だって聞いたことがあるなぁ。
早速ホテルに居る政府の人にその事を伝えると、ビックリして喜んでくれた。
「我が国の文化に関心を示していただけるとは!ですが、明日までにご用意するのは難しいかもしれません。それに恐らく特注になってしまいますから」
あー、やっぱりかぁ。子供用を使うにしても、私達には翼や羽がある。どうしても背中を大きく開かないといけない。素肌の露出は避けられない。
それに、私達の服は環境適応魔法が付与されている。まあフェルが居るから問題ないんだけどさ。
政府の人は直ぐに連絡してくれたみたいで、夕食後部屋にあるテレビをつけてみたら政府の偉い人と……宗教指導者さんが会見を開いている様子が映し出された。
政府の人が私達の事情を説明してくれて、宗教指導者さんも笑顔だ。
『来訪者の事情は文字通り命に関わる。にも拘らず、我々の文化を尊重し歩み寄ろうとしてくれた。ならば、我らも寛容さを以て応えねばなりません』
もちろん政府や指導者の異例と言える対応は先の祝砲が影響しているが、ティナが知るよしもない。
「つまり?」
「今のままの服装で良いということじゃないですか?」
まあ許してもらえるならお言葉に甘えよう。
翌日、私はカイロにある官邸で大統領や政府の皆さんとお会いしてお土産を手渡した。代わりに間に合わなかったけど私達のために仕立ててくれた民族衣装と、生地を手渡された。
って!
「なにこれ!?」
「とても柔らかい生地ですね」
ふわふわな感覚にフェルもビックリしてる!
『エジプト綿、或いはギザ綿と呼ばれるコットンで、地球では最高級品の一つとなっています』
「最高級品!?」
「我が国自慢のコットンで作られた逸品ですよ。他にも様々な品をご用意することが出来ます」
「ありがとうございます!こんなにも素敵なものがあるって皆にも教えますね!」
もちろん営業用だって分かってるよ。でも以前地球の絵画を少し持ち帰った時、皆人物画の服装に興味を持っていた。
アード人は基本この天使みたいな服装だから、地球にある色んな服は間違いなく興味を惹ける筈!
その後私達は政府の人達の案内で雄大なナイル川を見物。エジプト文明を育んだ大河の威容と歴史の重みに圧倒された。フェルは今一だったみたいだけど、やっぱり私としては感動する。
出来れば数日くらい滞在してゆっくり観光したかったんだけど、合衆国でなにか起きたらしくて直ぐに戻ることになった。ちょっと残念だけど、仕方がない。エジプト政府の皆さんに改めてお礼を伝えて、ジョンさんにメッセージを送って異星人対策室本部へ戻った。そこで私達を待ち構えていたのは。
「グ◯じゃん」
「◯フ?」
「それに◯ムもあるし」
「ド◯?」
三体に増えた巨大ロボットだった。私が頭を抱えたのは言うまでもない。フェルは首をかしげてたけど。フィーレは何故かどや顔だ。
「三種の神器だって言ってた」
「また余計な入れ知恵を……」
何を加えるか激しい議論の末らしい。いやそうじゃないから。頭が痛くなってきた……フィオレに頭痛薬貰おう……。