星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
地球の為政者達が頭を悩ませたり駆け引きに精を出している頃、そもそも発端となった当事者であるティナは。
「合衆国の料理はとてもボリュームがあって味付けも大胆ですね」
「豪快な風土だからねぇ。お腹いっぱいになるから良いんだけど、たくさん食べるのはちょっとキツいかもしれない」
異星人対策室本部の食堂でフェルと一緒に合衆国料理を楽しんでいた。
合衆国の料理は豪快で濃厚な味付けであることが多い。今二人が食べているのも分厚いステーキと山盛りのサラダ、濃厚なスープとパンと言うメニューだ。
日本人からすれば胃もたれしそうなものだが、実はアード人やリーフ人との相性は良かったりする。
アード人、リーフ人は地球人に比べて一日に必要なエネルギーが多く、アード人としては小柄なティナですら成人男性の倍以上を平らげるし、リーフ人としては少食に分類されるフェルもティナと変わらない量を食べる。
まだ幼いフィーレも睡眠不足をエネルギー摂取で補っている様子で大人顔負けに食べる。
「フィオレは?」
「フィオレちゃんならあちらに」
二人の視線の先、食堂から良く見える広い運動場ではフィオレが多数の訓練用ロボットを相手に大立ち回りを見せていた。
「ふっ!」
振り降ろされた鉄製の大剣を横に飛び退いて避け、そのまま地面を蹴って懐へ飛び込み、すれ違い様にがら空きの胴を手にしたビームソードで両断。
抜けた先で待ち構えるセンチネルバトルドロイドを模したロボットに対して、素早くビームランスに持ち替えて勢いそのままに突き刺す。
「やっ!」
更にもう一体が放ったビームに対して羽を力一杯羽ばたかせ、宙返りの要領で避けて持ち替えたビームガンを撃ち込み機能を停止させる。
もともと活発な性格であるフィオレは暇を見付けては戦闘訓練に明け暮れており、クラフト装置から精製されるセンチネルバトルドロイドを相手に訓練に励んでいる。異星人対策室本部には試験用も踏まえて広い運動場があり、いつの間にかフィオレ専用のエリアが設定されている。
これはフィオレ、フィーレ姉妹が異星人対策室研究部と独自に交渉し、破壊されたバトルドロイドの残骸を全て提供する事になったからである。
未知の金属、未知の技術の塊であるバトルドロイドの存在は技術部の変態……失礼、狂人……失礼、変わり者達を狂喜乱舞させたのは言うまでもない。
「今日も精が出るね、フィオレ君」
「身体を動かさないと嫌なのよ、おじいちゃん。これの処分、任せて良い?お腹空いちゃった」
「もちろんだとも。ティナ君達も食事をしているから、ゆっくり食べてくると良い」
残骸を回収しつつ奇声を上げながら狂喜のダンスを舞う研究員達を背景に、エドワード主任がフィオレと和やかに言葉を交わす。
「どうやら彼女も順調に馴染めているみたいですね。一安心です」
「異星人対策室の包容力は伊達ではありませんぞ!しかし、技術部の変人達には困ったものですな」
「うーん、彼らも貴方には言われたくないと思っているかもしれませんよ?」
そんな光景を見ながら、朝霧とジャッキー=ニシムラ(キ◯ン装備)は言葉を交わす。明日の来訪に備えてバタついてはいるが、本部そのものには穏やかな空気が流れていた。
朝霧も椎崎首相からの個人的な親書をティナへ届けるために訪米していたが、その任務も終わっているので引き続き異星人対策室で情報収集に当たっている。
特に最近は地球外技術研究センターと異星人対策室の協力体制を強化するため、双方と関わりが深い朝霧は連絡員としての役目も帯びているため多忙を極めている。
「ちょっと前までは外務省の冷飯喰らいだったのになぁ」
そう苦笑いをしながら漏らす彼に、閑職だった頃の鬱々としたものは感じられない。
さて、目一杯運動してきたフィオレの登場で厨房は大忙しとなっていた。エネルギー消費の激しい彼女は当然ながら健啖家であり、良く食べる。特に運動後はティナ達の倍以上は食べるのだ。
ティナも流石に食費を気にしたが、彼女達から得られる未知の技術などを加味すれば何の問題もないとジョンは笑みを浮かべて気にしないように伝えている。
「明日はセシルさんとアナスタシア様が地球へ来訪されるんですよね?」
「うん、場所は混乱を避けるために此処にしたよ。急だったしね」
ガツガツ食べるフィオレを眺めつつ、ティナとフェルはデザートとして用意されたアイスクリームを食べながら明日の予定を話し合っていた。
「ここで?」
「人里から離れているからね。今後も交流の拠点として使うってジョンさんが言ってたし」
転移魔法はもちろん、完全ステルス機能を持つスターファイターを保有するアード人やリーフ人は地球人からすればまさに神出鬼没。更に言えば彼女達は国境の概念に対する理解もない。ならばせめて玄関口だけは設定しようと試みられて、合衆国では異星人対策室本部が宛がわれた。
日本も同じように富士近郊にある地球外技術研究センターが玄関口として整備され、各国も同様に玄関口の整備を始めていた。
翌日に向けて各々が準備に奔走している最中、偶然にも訪米していたブリテンのチャブル首相は何とかスケジュールを調整してハリソン大統領と個別会談を行っていた。その席上で。
「明日の来訪だか、各国は祝電を送るだけみたいだね?」
「ええ、全く困ったものです。時間的な余裕がないのは分かるが、いざ面倒な案件が起きると押し付けてくるのだから質が悪い」
明日訪米予定だった中華の黄卓満国家首席は、体調不良を理由に土壇場でキャンセルしている。そして連邦の大統領は、祝意と贈り物を在米大使館経由で用意して静観の構えを見せた。
二大国の行動に他の国も同調している。セシルはまだしも、アナスタシアに対する認識故であるが。
「それはいかんな。長年の同盟国として、是非とも参加させていただきたい」
「なんと!それは助かります!是非ともお願いしたい!」
このタイミングでのチャブル首相の参加は合衆国としても有難い話である。何かあったとしても、責任その他を分担できるのだから。
会談後、予定になかった首相の決断に随行員達は慌てたが、彼は愛用の葉巻を吹かしつつ笑みを浮かべて答えた。
「淑女からお茶会の誘いを受けたんだ。襟を正して参加するのが紳士と言うものではないかね?」
と。