星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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セシル、アナスタシアの来訪

 ~合衆国広報誌ワールドジャーナル~

 

 

 

 最近はなにかと異星人関連の話題が尽きない。ティナ大使はワシントンプラザで起きた悲劇的な事件に介入し、数多の人々を救い出してくれた。マンハッタンの奇跡の再来として合衆国中が沸き、そして感謝しただろう。

 個人的なことで恐縮だが、私自身もワシントンプラザで働いていた姪っ子をティナ大使に救われている。彼女達には感謝以外の言葉もない。

 そしてワシントンプラザを救ったと思えば、大使はエジプトを電撃訪問した。相変わらずのフットワークの軽さは最早見慣れたものだ。調整役の皆さんにとってはお気の毒としか言えないが、ここは頑張って貰おう。

 ティナ大使はピラミッドを中心に名だたる遺跡群を視察され、地球の長い歴史に関心を寄せていたようだ。その様子は彼女自身の動画で皆が知ることになったが、未知の遺跡などに圧倒されてフェル嬢とはしゃぐ姿は見るものを和ませたのは言うまでもない。

 

 

 

 突然の訪問であるにも関わらず、エジプト政府の対応もまた完璧に近いものだった。万全の警備体制、ガイドの手配などそつがない。現地報道や大使の動画を見ればそれが分かる。或いは事前に連絡していたのだろうか?それならば調整役の負担も少しは軽減されるだろう。

 またエジプト政府は名産品であり世界的にも高級品であるコットン、エジプト綿を手土産として提供。大使達は興味深そうにしていたのが印象だ。

 アードに関する情報は徐々に公開されているが、本社に属する専門家曰く陸地面積の狭いアードは綿花栽培に適した星ではなく、綿製品は非常に珍しいものになるのではないかとの事だ。

 だとすれば、食料品以外の交易品について各国が頭を悩ませる現状でエジプトが一歩リードしたことになる。我が国の政府にも頑張って頂きたいものだ。

 

 

 

 さて、近況報告はここまでにしよう。昨日最大の出来事は、新たなアード人の訪米に他ならないだろう。五大湖周辺にいつの間にか建設されていた異星人対策室本部にまるでSF映画そのままの航空機?が降り立った。

 形としては、オスプレイをSFチックにしたようなものと形容すれば良いだろうか。まあそちらは記載されているフォトを見て貰うとして、本命は降り立った二人だ。

 

 

 

 一人は月へ移住されるアード人達の代表であるセシルさんだ。我々地球人からすれば、初めて地球へ来訪した大人のアード人と言うことになる。

 服飾に詳しい同僚の話だと、古代ギリシャのドーリス式キトンに似た服装に身を包み、背中の中頃まで伸ばした美しい金の髪と純白の翼をもつスレンダーな女性。その優しげな微笑みもあって、天使と言うより女神の様だと思ってしまったのは筆者だけではあるまい。

 

 

 そしてもう一人。巨大な宇宙戦艦を率いてきたアード人、アナスタシアさんだ。彼女の服装はアード人の民族衣裳と異なっていた。漆黒のブーツに白い長ズボン、紺色のような軍服を身に纏い、両目を青い布で覆っていた。

 更にアード人らしい金の長い髪を、ポニーテールのように結い上げていた。まさに軍人を思わせる出で立ちである。

 仕草から推察するに、失明しているのだろうか。だが、アードの医療技術を考えれば治せそうな気がする。事情があるのだろう。

 何より我々報道陣はもちろん、出迎えたハリソン大統領らを驚かせたのは彼女が地球式の敬礼をしたことだ。直ぐに軍の人々が答礼していた。ハリソン大統領の質問に対して彼女は。

 

 

 

「星は違えど、貴公等は民の盾であり剣の重役を担う者。ならば同じ役目を負うものとして、敬意を払うのは当然の事だ」

 

 

 この発言は反響を呼ぶだろう。リップサービスと捉えるのは簡単だが、彼女は敬意を示してくれた。その事を喜ぶべきではなかろうか。

 

 

 

 ~ワールドジャーナル編集長の特別コラムより抜粋~

 

 

 

「改めまして、セシルと申します。この度は私達のために月と呼ばれる衛星の土地を提供してくださり、ありがとうございます」

 

 

 

 報道陣へのお披露目と歓迎の式典を終えた後、異星人対策室本部の特別応接室にて、ハリソン大統領とセシルの個別会談が開かれていた。

 

 

 

「いえいえ、はるばる銀河の反対側から月へ移住なさるのです。つまり、私達はご近所付き合いとなります。色々不便もあるかと思いますが、出来る限りの援助をさせていただきます。なにかお困りのことがありましたら、遠慮なくお申し出ください」

 

 

 

 会談そのものは非常に和やかに進んだ。セシルは理知的な女性であり、地球の事情についても勉強している最中である。その姿勢は地球側に好感を持たせるには十分であった。

 

 

 

「これからお世話になる証として、こちらを納めさせてください」

 

 

 

 セシルが持ち込んだトランクを開くと、そこにはたくさんのラーナフラワーが納められていた。

 

 

 

「これは、ラーナフラワーですか。ティナ嬢からお話は伺っていますよ。貴重な医薬品の材料となるのだとか。ただ、取り扱いには注意が必要になるでしょうな」

 

 

「承知しております。ですから今回お持ちしたものは、全て根を断ち切っています」

 

 

 

「根を?」

 

 

 

「はい、根を絶たれたラーナフラワーは強い衝撃を与えない限り原形を留めますが、熱を吸収する特性、そして含まれている全ての成分を失います。つまり、完全に観賞用の小物となります」

 

 

 

「ほう、根を絶ちきれば懸念される問題が解決されると?」

 

 

 

「はい。研究用としては別に纏まった数を提供します。こちらは純粋にインテリアとしてどうぞ」

 

 

 

「これはありがたい。こちらもなにかお土産を手配させていただく。当座として食料品になりますが」

 

 

 

「それは良かった。子供達は地球の食べ物が大好きで」

 

 

 

「ははは、それならお菓子の類いも十分に用意しましょう」

 

 

 

「お菓子?」

 

 

 

 セシルが首を傾げるのも無理はない。主食が栄養スティックであるアードではお菓子の概念が存在しない。まして本星と数百年連絡が途絶えていたラーナ星系では物資節約の面からも嗜好品の類いは存在しなかった。

 アード移住後もティナが持ち帰る食料品は缶詰等の保存食が主であり、菓子類は無かった。

 

 

 

「主食ではありませんが、軽く口にするような甘い食べ物です。直ぐに用意しますので、是非とも食べてみてください」

 

 

 

 直ぐに用意した菓子類を食べたセシルは大変喜び、手土産としてたくさんの食料や菓子類を合衆国から提供された。両者の会談は無事に終わりを迎えたが。

 

 

 

「地球最大の軍隊を見てみたい。小さな駐屯地で構わないのだが」

 

 

 

「無論だとも。君、直ぐに手配してくれたまえ。まさか、合衆国は大切な客人のリクエストに応えられないほど狭量なのかね?」

 

 

 

「お願~い☆」

 

 

 

「はっ……はいぃ……」

 

 

 

 アナスタシア、ティリス、そして相手をしていたチャブル首相の無茶振りで担当者が胃を痛める珍事が発生した。

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