星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
フィーレが色々やらかして異星人対策室本部にある人型ロボットが二体増えてしまったけど、不可抗力として合衆国は処理してくれた。豪徳寺さんが言うには著作権の問題も解決しているみたいだし、純粋な技術の産物として研究者の皆さんが目を輝かせていたのが印象的だよ。ただ、ドクターはあんまり関心がないみたいだけど。
「それは誤解だよ、ティナ君。確かに私はあらゆる分野に手を出す節操無しではあるが、今現在関心を寄せているのは以前フィーレ君から提供されたパルスドライブシステムと、フィオレ君が進めている薬学だ」
「薬学?」
「おじいちゃんの知識には助けられているわ。地球の植物には、地球人が気付いていない有益な効果があるのよ」
最近フィオレはドクターと一緒に居ることが多いけど、地球の植物を使った研究をしているんだよね。前作ってくれた頭痛薬については、コメントを控えるよ。効き目は抜群だったけど。
「ラーナフラワーを使えば万能薬が作れるんじゃないの?」
「セシルさん達が生産を安定させたとしても、地球人全員に行き渡らせることはできないわ。だって、百億人くらい居るんでしょ?」
「まあそうだけどさ、量産は無理なの?」
「アードで使う分を全部使えばいけるわよ。でも、それはアンタの望み?ティナ」
「まさか、そんなことはないよ」
アード人に犠牲になれとか絶対に言わないし、思わない。確かに前世は地球人だけど、今の私はアード人だからね。故郷はアードだ。
「なら、ラーナフラワーだけじゃなくて地球の植物で万能薬、或いはそれに準じた薬を作るしかないわ」
「フィオレ君には既に地球のあらゆる薬草についての情報を提供している。代わりにアード、正確にはリーフか。そちらの薬学を伝授してくれている。実に興味深い」
「地球人の分析も悪くないけど、まだまだ甘い部分があったから口を挟んだだけよ。取り敢えず、そう時間を取らずに癌だけを駆除する薬効がある薬を精製できると思うわ」
「癌を駆除!?世紀の発明になるよ、フィオレ!」
たくさんの人が苦しめられて、そしてたくさんの悲しみを振り撒く難病を失くせるんだ。それだけでもスゴい発明だよ。
前世でも私を可愛がってくれた叔父が大腸がんで亡くなったし、幼馴染みも若くして胃癌で逝っちゃったから……個人的に癌は身近で、憎むべき存在だ。
「その通り。そちらから提供されている医療シートでは、内科的な治療ができない。フィオレ君の研究が捗ることは、すなわち地球の医療技術向上にも繋がる。もちろんまだまだ時間は必要になるがね」
「フィオレ、凄いじゃん!」
普段は姉バカだけど、フィオレが持つ薬学の知識は本物だ。まだ成人していないのに薬師の資格を持つくらいだからね!
「アンタの交流に役立つならそれで良いのよ。ただ、サンプルとしてアードやリーフ由来の植物を幾つか持ち込みたいから、一度アードへ戻りたいんだけど」
「それなら心配要らないよ。アナスタシア様達と一緒にアードへ戻るつもりだから」
パリでの事件とか交流の進捗を報告したいし、食べ物もたくさん貰ったから次の交易品のトランクや医療シートを用意したい。
エジプトから貰ったコットンも持ち帰って皆の反応をみてみたいしね。上手くいけば、新しい交易品になる。
それに、アリアから羽根を取られたことについて本星での精密検査を強く推奨されてるし。
「おや、戻るのかね?」
「はい。ただ、今回プラネット号はそのまま地球軌道に残しておきます。フロンティア彗星みたいな事件がまた起きたら大変ですから」
前回帰還した時に、フィーレに任せてプラネット号もグレードアップしてる。主に主砲を銀河一美少女ティリスちゃん号並みの出力にしてある。代わりに門数は減ったけど、フロンティア彗星くらいのサイズなら数回の砲撃で蒸発させることができるからね。
尚、ティナの完全な善意なのだがこれにより四六時中軌道上にアードの軍艦が駐留することが確定したのである。
結果為政者達の胃に継続ダメージを与えることになるが、それはまた別の話である。無自覚砲艦外交、ここに極まる。
作っちゃったものは仕方ないから、ジョンさんに報告して後を任せることにした。フィーレの了承も得たし、所有権は合衆国へ譲渡してるからね。
ついでに言えば、鉄人さんはジョンさん以外の指示を受け付けないようにしてる。マラ◯イに関しては、ジャッキー=ニシムラ(変態と誤解される紳士)さんの熱望で彼専用になった。
今も元気に周りの荒野を走り回っている。いつから地球は宇宙世紀になったのかな?
アナスタシア様達は早めに休まれてしまったし、どうしようかな。寝るにしても早すぎるし、フィーレも疲れたからかフィオレと一緒に部屋へ戻っちゃったから安心ではあるけどさ。
フェルはまだ起きているみたいだし、フェルとお喋り……カレンを誘うのも良いな。確かメリルさんと一緒に戻ってきてる筈だからなぁ。
『ティナ』
「どうしたの?アリア」
『マスター美月から着信です。回線を繋ぎますか?』
「美月さんから?分かった、繋げて」
指示を出すと、ブレスレットから私の目の前に美月さんの映像が投影された。美月さんには私物だけどアードの携帯通信機を渡してある。地球には無い魔道通信機で、盗聴される心配もない優れものだよ。
「こんばんは、美月さん。あっ、こんにちわかな?それともおはようございます?」
時差があるからなぁ。私の言葉を聞いて美月さんは優しげな笑顔を浮かべた。
『ふふっ、どちらでも大丈夫よ、ティナちゃん。夜にごめんなさいね?』
「いえ、ちょうど暇だったので大丈夫ですよ。むしろお話相手が見つかって嬉しかったりします」
手持ち無沙汰だったのは本当のことだしね。
『あら、そうだったの?それなら良いけど……今日は貴女の晴れ舞台に参加できなくてごめんなさいね、ティナちゃん』
「いいえ、美月さんがお忙しいのは良く知っていますから」
首相だもん、多忙な筈だ。スケジュールもぎゅうぎゅう詰めだろうしなぁ。
『実はその件でお話があるの』
「今日参加できなかった件ですか?」
『ええ、明日の予定は?』
「アナスタシア様達と一緒に宇宙へ戻って、一度アードへ戻るつもりですよ。直ぐに戻ってきますけど」
『そう……どうにか時間を作って会えないかしら?贈り物があるのよ』
「もう貰っていますよ?」
美月さんからは、西陣織を始めとした日本の伝統である織物を幾つか貰ってる。
『それとは別なのよ。こんな言い方はしたくないけど、お願いだから断らないで。辞任しなきゃいけなくなるから』
「断りませんけど、辞任!?何があったんですか!?」
穏やかな感じじゃない。慌てて尋ねると、美月さんは疲れたような笑顔で。
『菊の御紋。そう言えばティナちゃんには伝わるわよね?』
……ファッ!?