星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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菊の御紋

 アナスタシア様とセシルさんが地球へ降りてきた翌日、改めてハリソンさんと会談を開いて双方の友好関係促進を約束して、今後も交流の主軸は私が担うことが確認された。私もその場に参加していたんだけど、ちょっと胃が痛くなったのは秘密だ。個人的には政治外交の難しいお話は専門家の皆さんに引き継いで、フェル達とのんびり地球観光をしたかったんだけど。

 

 

 

「大使殿以上に地球を知る人材は存在しない。少なくともこれが今現在アード永久管理機構が持つ認識だ。

 将来的には正式に外交官が赴任する事になるだろうが、まだまだ我々は地球に対する理解が足りていないのが実情である。

 双方の誤認による不幸な行き違いを防ぐためにも、大使殿には今後も尽力を願いたい。なにより、畏れ多くも女王陛下はその様にお望みだ」

 

 

 

「非才の身ではありますが、微力を尽くします」

 

 

 

 女王陛下のお名前を出されたなら文句なんて言えない。両手を左右にまっすぐ伸ばし掌を上に向けて、翼を広げ右足を少し後ろへ下げて頭を下げる。

 立ったまま行えるアード式最敬礼でアナスタシア様のお言葉に答えた。だって相手は雲の上のお方なんだよ。それくらいするのは当然だ。

 悲しいサラリーマンの性とも言えるけどさ。ハハッ。

 ん?アナスタシア様が震えてる?

 

 

 

「なんということを!お止めください!でん……」

 

 

 

「あわわっ☆あっぶなーい☆」

 

 

 

「おっふぅ!?」

 

 

 

 軽快なステップと共にばっちゃんの肘がアナスタシア様の脇腹に突き刺さったーーっっ!!身体がくの字に折れ曲がったように見えたんだけど!?

 

 

 

「いっ……痛い……」

 

 

 

「ですよね!思い切り肘が入りましたもんね!?ばっちゃん、なにしてるのさ!?」

 

 

 

「躓いちゃった☆美少女だから仕方無いね☆」

 

 

 

「美少女(最長老)」

 

 

 

「笑うな☆」

 

 

 

 ほら、ハリソンさん達も苦笑いを浮かべて……うん?

 

 

 

「ジョンさん、大丈夫ですか?」

 

 

 

「ああ、ちょっと胃に穴が空いただけだから気にしなくて大丈夫だよ」

 

 

 

 ジョンさんは笑顔でとんでもないことを言った。いや、それ重傷じゃないの?え?平気?そっか……。

 

 

 

 その日の正午、アナスタシア様にちょっとだけお時間をいただいて私は渡米してきた美月さんと面会することにした。美月さんは先にアナスタシア様、セシルさんと会談。

 その後に会ったんだけど、会談なんて堅苦しいものじゃなくて場所も異星人対策室本部ビルの談話室だ。

 

 

 

「急なことなのに時間を作ってくれてありがとう、ティナちゃん」

 

 

 

「美月さんのお願いなら幾らでも。それに、内容が内容ですから。その、本当に?」

 

 

 

 私何の接点も無いんだけど……?

 

 

 

「ええ、最近のティナちゃんの活躍をずっとご覧になっていらしたみたいで、日本人を始めとして色んな国の人を助けてくれているでしょう?それに対する感謝と、アードとの友好の証として……」

 

 

 

 

 美月さんが一緒に来ていた男性の秘書さんへ視線を向けると、秘書さんは大切に持っていたアタッシュケースを抱えて、美月さんに見える様にゆっくりと開ける。

 それを見て美月さんもアタッシュケースへ一礼する。

 

 

 

 中には紫色の布に包まれた物が入っていて、美月さんはそれを丁重に取り出す。

 そして箱を半回転させ、布をゆっくり丁寧に解いていく。すると、菊の家紋が描かれた漆塗りの箱が姿を表した。

 

 

 

 私の隣に座っていたフェルは、日本人なら誰もが知っている畏れ多い家紋が描かれた箱を不思議そうに首を傾げて眺めてる。

 美月さんが随分と礼を尽くしてその箱を扱うから、不思議なんだろうなぁ。

 

 

 

「フェル、あれは日本の天皇陛下……んー、日本の皇帝陛下の一族の紋章なんだよ」

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

 あっ、ビックリしてる。天皇はアードやリーフ人には理解が難しいだろうから、取り敢えず皇帝陛下って事にした。

 確か前世で海外ではエンペラーと呼ばれてるって聞いたことがあるし、完全な間違いじゃない筈。

 

 

 

「そうよ、フェルちゃん。私は中身について知らないけれど、この箱や布は我が国でも最高級の物が使われているの。そしてこのマークは天皇家の家紋。この箱や布だけでも家宝になる代物なのよ?」

 

 

 

 美月さんはフェルにちょっとした解説をしつつ、箱を丁重に差し出してきた。私も緊張してきたっ!

 直ぐに立ち上がって、アード式の最敬礼で深々とお辞儀をする。

 隣を見ると、フェルも床に両ひざをついて右掌を胸に添えて、左手を左側へまっすぐ水平に伸ばして、掌を空へ向けてお辞儀していた。これ確かリーフの最敬礼だったはず。

 多分天皇家云々は良く分からなかったと思うけど、私や美月さんが礼を尽くしているのを見てしてくれたんだろうなぁ。相変わらずフェルは優しい。

 

 

 

 私は慎重に美月さんから箱を推し頂いて……あー……丁重にポーチへ仕舞い込んだ。天皇陛下からの贈り物なんて畏れ多すぎる。

 

 

 

「えっと、美月さん。こちらの品は、アードとの友好を願った贈り物ですよね?」

 

 

 

「まあ、ティナちゃんへの感謝も含まれているけれど、そう解釈してね」

 

 

 

 よし、とても光栄だけど同時にとんでもなくプレッシャーの掛かるプレゼントだからね。私の精神衛生のためにも、扱いはばっちゃんに丸投げしよう。うん。

 

 

 

 ティナのこの決断はアード側に凄まじい誤解を与えることとなる。しばし椎崎首相と談笑している間に、アリアがティリスやアナスタシアへ情報を共有。一足先にオーロラ号へ戻っていたアナスタシアは。

 

 

 

「“地球の皇帝”が女王陛下への贈り物を!?つまり、地球の王が女王陛下へ敬意を払われたと言うことだ!諸君!女王陛下の御威光は、銀河の果てまでも照らしていることが示された!そして、銀河の果ての文明を統べる王に敬意を示せ!」

 

 

 

 アナスタシアを含めた近衛一同が狂喜乱舞したのは言うまでもなく、地球の人々に一時の別れを告げて銀河一美少女ティリスちゃん号へティナとフェル、リーフ姉妹が戻ったその時。

 オーロラ号より来訪時の数十倍の礼砲が放たれて、地球はもちろん太陽系全体に無数の巨大な宇宙の花火が咲き誇る。

 

 

 

「ばっちゃーーんっっっ!!!」

 

 

 

 これによりティリスを卒倒させることになったが、オーロラ号は礼砲の射撃を終えると銀河一美少女ティリスちゃん号を伴いさっさと太陽系を後にした。

 再び発生した壮大すぎる天体ショー(太陽系規模)とISSの隣に鎮座するプラネット号。地球が大騒ぎとなり為政者達に特大の胃痛を与えたのは言うまでもないが、これで終わりではない。

 ティナママ、ティナパパ、妹ちゃん来訪まで後一週間(無慈悲)。

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