星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ティナ達がアナスタシア達と一緒に太陽系を後にした日、アードでも動きがあった。ティナの母であり王妹であるティアンナは、持ち前のフットワークの軽さを存分に発揮して科学省のマッドサイエンティスト……失礼、情熱溢れる様々な分野の学者達を焚き付けて地球へ向かう準備を速やかに整えさせた。
科学省の管轄する調査船オリンポス号を稼働状態にし、万が一に備えて無人フリゲート艦も六隻同行させることとした。
このフリゲート艦はプラネット号を始めとしたハンマーヘッド級駆逐艦より一回り小さい船であるが、完全に無人であり余分なスペースを廃して武装に重点を置いた重火力艦である。
AI制御のため有人艦に比べれば運用面で難はあるが、生産性に優れ母艦の楯、或いは数で相手を押し潰すことを念頭にしているので問題はない。センチネル相手だと圧倒的に数が足りないのは否めないが。
そして調査船オリンポス号であるが、まるでイカの頭を連想させる巨大な船体は何と全長五キロにもなる。これは調査船としての役目、すなわち様々な研究機材や資材の積み込みはもちろん、未知の動植物を研究観察飼育するために必要な空間を確保するためである。
一般的なトランクは生物を保存することは出来ない。もちろんティナが使っていたような上位のトランクならば居住性を有するものもあるが、それでも多数の生物を保存することは出来ない。
海洋庭園のような魔法具もあるが、それを利用するためには対象の動植物にとって最適な環境を設定する必要がある。
そのため調査船オリンポス号の巨大な船内には広大な空間を利用して、様々な環境を再現するための設備が充実している。
広大な牧場や森林、海洋を再現することも可能であり、そこで収集した動植物をじっくりと観察、研究が行えるのだ。
センチネルとの大戦中は本来の役割とは違い広大なスペースを利用した輸送船として運用され、特に一般的な輸送船より頑丈で足が速かったため最前線へ投入されることが多く、それ故に数多の損失を招き今となってはオリンポス号のみが残存している。
そのオリンポス号艦内では数百名の学者や助手、船員達が慌ただしく動き回っている。大戦時を考えれば少なくとも四百年ぶりの調査航海である。
古参達が歓喜するのは勿論、大戦後生まれの若手達からすれば初めてとなる航海だ。意気揚々と準備をするのは当然と言えた。
更に今回の調査はセレスティナ女王直々の依頼となれば、士気が天元突破するのも無理はない。
「君も無茶をするなぁ。まさか女王陛下直々の御認可を取り付けてくるなんて」
「余計な茶々を入れられたくなかったし、これくらいの役得はあっても良いじゃない。それに、アードのためになることなんだから、文句は言わせないわ」
広々とした資材置場を一望できるキャットウォークにてティアンナ、ティドル夫妻が言葉を交わす。愛娘でありティナの妹であるティルは初めての宇宙船に大はしゃぎして、疲れ果てて父に抱かれて爆睡している。
「それはそうかもしれないけど、良いのかい?最近は何かと不穏な状況だ。君が側に居るから女王陛下も安らげるんじゃないか?」
「長く空けるつもりはないわよ。太陽系にも数日だけしか滞在しないつもりだし、半月もあれば戻れるわ。それに、ティナ達が戻ってくるし」
「入れ違いになってしまうか。戻るまでアードに居てくれれば良いけど」
子煩悩なティドルとしては、しばらく愛娘達に会って居ないので心配と寂しさがある。そんな夫を見てティアンナも笑みを浮かべる。
「大丈夫よ。私達が戻るまでアードで待つようにメッセージを残しているし」
「それなら良いんだが。今回の調査は地球以外も含まれているんだろう?」
「そうよ。どうやら地球人は星系内にある他の惑星の調査をほとんどしていないみたいだし、代わりに私達が調査してあげれば喜ぶでしょ。それに、私達の目的は別にあるし」
ティアンナの言葉にティドルも表情を引き締める。
「パトラウス政務局長殿から話は聞いているよ。ティナは無事なんだね?」
「里長のメッセージを読む限りね」
「そうか……やはり危険な交流になってしまったか」
「センチネルに比べれば言葉が通じるだけマシよ。親として、地球人には色んな意味でお礼をしてあげたいしね」
「ティナは報復を望まない。あの娘の願いを無下にはしないでね」
妻から溢れる怒気に冷や汗を流しつつ、ティドルも妻を諌める。ティルは爆睡していた。大物である。
「あなたはそれで良いの?」
「もちろん私だって思うところはある。理由はどうあれ、我が子を傷つけられて平気な親は存在しないよ。
でも、あの娘はそれでも融和の道を選んだ。父親として、その決断を尊重してあげたい」
「……分かったわよ。まあ、太陽系の調査をしたかったのは事実だし、ティナがお世話になっている地球人にお礼を言いたいのも本音だしね。今回は我慢する」
「ああ、それが良い。ありがとう」
妻の激情家としての一面をよく知っているティドルは、胸を撫で下ろす。
その日のうちにオリンポス号及びフリゲート艦六隻からなる調査艦隊はアード星系を離れた。これは直ちにパトラウスの手で、ハイパーレーンを航行中のティリスへメッセージで伝えられた。
「威嚇する意図は無い……かぁ。下手をすればオーロラ号が来た時より大きな騒ぎになりそうな気がする……地球の皆さん……ガンバッ!☆」
極彩色のハイパーレーンを突き進むオーロラ号にてメッセージを受け取ったティリスは深々とため息を吐く。ティドルが同行していることに安堵しつつ、地球の為政者達に同情を寄せた。
そして側を航行する銀河一美少女ティリスちゃん号のティナとフェルの部屋では。
「ふっ……ぁ……っ!」
「ティナ、あんまり動かないでください。手元が狂っちゃいますよ?」
「だってフェル、いつの間にこんなっ……!はぅっ……待って!そこは弱いから!」
「大丈夫、優しくしますから……」
「ふぁあああっ!???だめっ!やっぱりだめっ!」
「ほら逃げないで……」
「んぅっ!!」
「ふふっ……ティナ可愛い」
「待って!本当にそこはダメだから!……あっ!!!」
『ただのちょっと過激なスキンシップを兼ねた羽繕いです。よってこれ以上の観覧は禁じられています』
ティナ達はいつも通りである。