星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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ティアンナ、ティル。地球へ

 私はティアンナ。ティナとティル、そしてフェルの母親よ。アードに君臨する女王セレスティナの妹でもあるから、王妹って立場ね。

 でも女王の妹がしゃしゃり出ても良いことなんて一つもないから、普段は科学省に属する博士の一人として過ごしているわ。

 一応医学が専門だけど、こう見えて欲張りだから色んな方面に手を広げてる。

 私の正体を知るのはアードでも極一部。近衛兵でも直接姉様の身辺警護を行う上位の兵しか知らない。ドルワの里じゃ、ティドルと里長くらいね。

 

 

 

 さて、先日姉様とお茶会をしていたら地球からとんでもない知らせが飛び込んだ。ティナが地球人の手で怪我を負わされた。しかも羽根を千切り取るなんて、正気の沙汰じゃないわ。地球人のモラルはどうなってるのかしら?

 以前来てくれたジョンさん達はモラル意識も高かったし、歩み寄る真摯な姿勢を見せてくれてとても好感が持てたけれど、まさか彼らが特別な個体だなんて言わないでしょうね。

 地球人の知性に重大な欠陥があるのなら、あの娘を説得して交流なんて止めさせる方向で考えないといけない。報復云々はティナ本人が望まないから我慢するにしても、母親として地球人を見極める必要がある。

 出発前に受け取ったアナスタシアからの報告では、問題もあるが交流に足る人種であるとされていたけれど、やっぱり直接見てみないと気が済まないわ。

 自分の娘に危害が加えられたのよ。母親として当然の行動よね。

 

 

 

 科学省の学者先生達が随分と地球に関心を持っていたし、姉様の許可も取り付けたから保管されていた調査船オリンポス号と護衛として無人フリゲート艦六隻を使うことにした。

 科学省の要求を叶えつつ、私の個人的な願望も叶う。皆が幸せな案よ、悪くないでしょ?

(もちろんこのティアンナの考えは良いこと尽くめに聞こえる。急遽関係各所の調整に奔走する羽目になったパトラウスの胃痛に関しては見ないこととする)

 

 

 

 まあ、もちろんそれだけが理由じゃない。使節団には含まれていなかったけれど、地球にもティナ達がお世話になっている地球人が居るみたいだし、お礼を言いたいのも本心よ。親として当然よね?

 七日間の航海を経て私達は無事に太陽系へ辿り着けた。途中でセンチネルの反応を何度か検知したけど、位置としてはおそらく銀河の中心付近。

 異空間スキャンを実施してみたけど、少なくとも百光年以内にセンチネルの反応はなかった。これからも安全だという保証はどこにも無いけれど。

 

 

 

「ママ~、どこいくの?」

 

 

 

「お姉ちゃんのお友達に会いに行くのよ。ティルも行きたいわよね?」

 

 

 

「いくー!」

 

 

 

 私達三人は月と呼ばれる衛星に作られた居留地へ降りて、星系の調査は学者先生達に丸投げした。地球に対しては最初に分かりやすく挨拶はしているし、問題ないわよね。

 ジョンさんが来たみたいだけどティドルが相手をしてくれているみたいだし、私はティルを連れて一足先に地球へ降りることにしたわ。ティナが聞かせてくれる地球のお話やレポートに度々名前が出てくる地球人。美月さんだったかしら?

 確か、日本と呼ばれる島の里長だったかしら。彼女にも随分とお世話になっているみたいだし、最初に挨拶しておかないと。

 同じように名前が出てくるハリソンさんはジョンさんの住んでいる地域の長みたいだし、取り敢えず後回しにするわ。ジョンさんと一緒に行けば良いんだし。

 居留地に配備されているスターファイターを借りて、ティルを膝に乗せた私はそのまま地球へ向かった。騒ぎは起こしたくないわね。

 

 

 

「AI、ステルスモード起動」

 

 

 

『畏まりました。各種ステルスモードを起動します』

 

 

 

 周囲の風景に溶け込み、地球側からの探知を一切無効化して地球へ降下。とても広い大地、大陸と呼ばれているんだったわね。宇宙から見ても圧倒されるわ。地球の陸地面積はアードの倍以上だと聞いたけれど、本当みたいね。

 

 

 

「AI、アリアに接続して」

 

 

 

『畏まりました。個体名アリアに繋ぎます』

 

 

 

 ティナを支えているAIのアリアは、他のAIとは違って特別な存在。専用の装置があれば分身を増やすことも出きる。確か、地球にも分身体を残しているはずよね。

 

 

 

 

『ごきげんよう、マスターティアンナ。急な来訪で驚きました。ティナも知らないのではありませんか?』

 

 

 

 予想通り、すぐにアリアが応じてくれたわ。彼女は他のAIと違って明確な自我、感情がある。

 

 

 

「貴女や里長が送ってくれた情報を見たのよ。後は分かるわね?」

 

 

 

『報復をお考えならば、阻止させていただきます。ティナの望みではありませんから』

 

 

 

 ほらね?AIなのに反抗してくるのが何よりの証。だから面白いし、頼もしい。

 

 

 

「あの娘の気持ちを、頑張りを台無しにするような真似をするわけ無いじゃない」

 

 

 

『畏まりました。ご用件を伺います』

 

 

 

「ティナがお世話になっている美月さんだったかしら?その地球人と会いたいの。お礼を言いたいし、これからもお世話になるだろうからそのお願いもしたいのよ」

 

 

 

 ティナの話じゃ随分と多忙みたいだし、日頃のお礼に特製の栄養ドリンクを持ってきたわ。

 取り敢えずティドルで試してみたけど、色々と凄かった。三人目が出来るかと……こほんっ。まあ、滅茶苦茶元気になる薬よ。

 

 

 

『マスター美月の状態を検索中……公務を終えて、小休止の時間です』

 

 

 

「あら、そうなの?ちょうど良かったわ。建物までの案内をお願い。それと様子も見たいわ。転移するから」

 

 

 

『参考までに、マスターティアンナの転移距離は?』

 

 

 

「地球単位だと十万キロくらいかしら?」

 

 

 

 王妹だけあって桁違いのマナ保有量であり、アリアも絶句していた。

 同時刻、椎崎 美月首相は忙しい公務を一段落させて小休止を取っていた。新たに現れたオリンポス号について国内でも大きな混乱は起きていない。逆に歓迎ムードであり、この順応性の高さはアードとの交流で大きな強みとなっている。

 とは言え、国内に全く不穏分子が居ないのかと問われれば椎崎首相は首を横に振るだろう。野党勢力の一角である世界融和党は反アード姿勢を鮮明にしており、密かに武器を蓄えているという噂まである。椎崎首相の悩みの種である。

 

 

 

「ちょっと一人になりたいわ。人払いをお願いしても良いかしら?」

 

 

 

「はい、総理。どうかごゆっくり」

 

 

 

「ある程度の案件ならばこちらで処理しておきますよ」

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 閣僚達の気遣いにより、首相官邸にある執務室で疲れを癒すためにソファーへ身体を預ける。ちょっとした高級品であり野党からは無駄遣いであると叩かれたこともあったが、日々の激務を思えば少しくらいの贅沢は許されても良いのではと考えている。

 事実彼女の働きは滅私奉公を体現しており、私腹を肥やしたことなど一度もない。それどころか、必要経費を除いた給料の大半を子供達のための基金に寄付するような善人である。

 

 

 

 ゆっくりと柔らかいソファーに身体を委ねて少し仮眠を取ろうかと思った瞬間、部屋の隅に鮮やかな魔法陣が出現し、そこから現れた子連れの女性を見て。

 

 

 

「いつも娘がお世話になっています」

 

 

 

 ああ、間違いなく親子だと苦笑いを浮かべるのだった。

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