星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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さあ、胃痛のお時間です(無慈悲)


ティアンナ、ティルの日本滞在

 椎崎首相とティアンナ、ティル母娘との秘密会談は無事に終了。折角だからと椎崎首相に誘われて、母娘はそのままティナ達も滞在時に利用している旅館やすらぎにて一泊することにした。

 その際に椎崎首相は、ティナの母であるティアンナと妹のティルが来日したことを公表。三人の写真を自身のSNSにアップロードしたことで大反響を引き起こした。

 可愛らしいティルの容姿もあってか、国民の大多数は好意的に受け入れてくれた。それどころか旅館へ向かう際の車列は、都内を通る際に詰めかけた群衆の大歓声によって歓迎された。ティアンナは歓迎ぶりを見て娘達の頑張りを実感できて満足げであり、その様子を見て椎崎首相も胸を撫で下ろしたのである。

 

 

 

 だが、この報道を是としない者達は日本にも存在する。反アード団体、その最大勢力である世界融和党である。既にアリアによる警告と警察組織の大規模な取り締まりによって傘下組織の一部が壊滅し、密かに用意されていた武器も一部が失われてしまった。

 これらは厳重な証拠隠滅工作で世界融和党との関係性を断定できずに終わったが、国内に潜む不穏分子の存在は国民に不安を抱かせるには十分であった。

 むしろこの取り締まりを世界融和党側は弾圧であると断定し、傘下組織はより尖鋭化していくことになる。

 

 

 

「重要な国政の論議よりも異星人との秘密会談を選択した総理は、国を率いる立場として相応しい人物とは思えません!」

 

 

 

 世界融和党の迫水議員が自身が要請した会談を断られた事実を巧妙に利用して記者会見で暴露し、世論を煽ろうとした。

 もちろん会談を開いたとしても、批判を繰り返すだけで政策の話など一切行うつもりはなかったが。この批判についても最早誹謗中傷の域になっているのだが、指摘しても無駄である。

 

 

 

 更にやり玉に上がったのが、ティアンナの来日に合わせて急遽実現したアードのスターファイターと日本航空自衛軍戦闘機による、デモンストレーションを兼ねた編隊飛行である。

 日本、アードの親密な関係を宣伝するために行われたものであり、既に合衆国が似たようなデモンストレーションを実施しているため世界的な批判は起きなかった。だが、世界融和党は過剰な反応を示した。

 

 

 

「これはまさしく軍国主義への回帰に他なりません!椎崎首相はアードの軍事力を利用して平和の国日本を侵略国家に変えようとしているのです!アジア諸国も懸念しています!

 このような暴挙を許せる筈はありません!我々は、我が国とアジアの平和を護るために立ち上がらなければならないのです!」

 

 

 

 世界融和党党首は声高に宣言し、所謂極左勢力もこれに加担。更に本来ならば相容れない一部の極右勢力までも賛同を表明したのである。

 

 

 

「侵略国家云々は語るに及ばないが、昨今のアードに対する弱腰な外交姿勢に苦言を呈する!我が国は地球有数の大国である!政府にはもっと強気の、対等な立場としての交渉を要求するものである!」

 

 

 

 もちろん右派左派勢力の中でも、地球とアードの実力差を正しく認識している者達も少なくはない。むしろ、椎崎首相が大使であるティナと良好な関係を築けていることを評価する者も多い。

 だが、右派にしても左派にしても極まった思想の持ち主は近視眼的になる。それは人類の歴史が証明しているのだ。

 そして、近視眼的になった思想の持ち主は過激な方向へ暴走する。これもまた人類の歴史が証明している悲しい性である。

 

 

 

 その日の夜には日本各地で小規模なデモが頻発することとなる。だが、日本政府は敢えて取り締まりを強化しなかった。

 主義主張の自由はあるし、何より暴動に発展していないのだ。ある種のガス抜きとしての抗議デモを容認したのである。

 

 

 

 夜、旅館やすらぎで本格的な和食を食べてティアンナ、ティル母娘はご満悦であった。ティナが持ち帰る食物は保存食が大半であり、新鮮な食材を使い一流の料理人が調理した食事の味に舌鼓を打ったのである。

 

 

 

「まさか地球の料理がこんなに美味しいなんて」

 

 

 

「ご満悦してくれたかしら?ティアンナ」

 

 

 

「もちろんよ、美月。こんなおもてなしを受けたんだから、相応のお礼をしなきゃアード人の名折れだわ。期待してちょうだい」

 

 

「良いのよ、客人をもてなすのは日本の流儀なんだから。それに、まだ温泉があるのよ」

 

 

 

「お湯に浸かるんだったかしら?不思議な文化ね」

 

 

 

「水浴びも悪くはないと思うけれど、温泉も良いものよ。ティナちゃん達も満足してくれているわ」

 

 

 

「それは楽しみね。もちろんエスコートは任せるわよ?」

 

 

 

「当然ね、任せて」

 

 

 

 

 ティアンナと椎崎首相は景色の良い縁側で向かい合って椅子に座り、穏やかに言葉を交わしながら食後の一時を楽しんでいた。ティルはテレビから流れる日本の番組を興味深そうに眺めている。

 ティアンナとティルの来日を聞き慌てて駆け付けたティドルであったが、椎崎首相自らが歓待して更に妻と良好な関係を築いていると知り、一先ず妻子の事を任せて日本政府と接触するために霞ヶ関へ赴いていた。

 幸い知己がある朝霧が日本へ戻っていたので、彼に案内を頼み妻子の急な来訪について謝罪。可能ならばこのまま滞在したい旨を伝えていた。

 

 

 

 ただ、彼もまたアード人である。集まってくれた閣僚達に疲れや病を感じて、自身の良心に従い全員に治癒魔法を掛けたのである。

 疲労回復はもちろん、加齢による膝や腰の痛みが劇的に改善し、中には長年苦しめられてきた持病すら癒えた。

 まさに奇跡であったが、閣僚達は感謝を述べつつ魔法の行使を控えるようにお願いした。世間に知れ渡れば、確実にパニックが起きるからである。

 せっかく体調が万全となったのに、それを考えた閣僚達は喜びながらも新たな胃痛の洗礼を浴びることとなる。

 

 

 

 夫のやらかしで閣僚達が新しい胃痛に苦しめられているとは露知らず、ティアンナは愛娘と一緒に穏やかな時間を過ごしていた。椎崎首相の勧める温泉なるものを堪能しようか。そう思った矢先である。

 

 

 

『マナ粒子反応を検知!』

 

 

 

 アリアの警告で慌てて振り向いたティアンナが見たのは、テレビを見ながら笑顔を浮かべるティルとその足元に広がる魔法陣であった。

 

 

 

「ティル!ダメよ!止めなさい!」

 

 

 

 ティアンナが声をかけたが、時既に遅く転移魔法が発動。ティルは光と共に消えてしまう。

 

 

 

「アリア!ティルを探して!今すぐに!」

 

 

 

『高濃度のマナ粒子反応を検知、マナ探知実行不能。今すぐに所在を確認することが出来ません。地球のネットワークを介して捜索を開始します』

 

 

 

「なんですって!?」

 

 

 

「ティアンナ、落ち着いて!今のは転移魔法よね?手がかりはある?」

 

 

 

 椎崎首相は敢えて冷静に問い掛ける。新しい友人の言葉に、ティアンナは少しだけ落ち着きを取り戻す。

 

 

 

「多分無意識よ。転移魔法は目的地を強くイメージする必要があるわ」

 

 

 

 ティアンナの言葉を聞いた椎崎首相は直ぐにテレビを見る。そこには日本国内の観光名所を紹介する番組が放送されていた。

 それを確認した椎崎首相は、直ぐに携帯端末を取り出す。

 

 

 

「柳田さん!直ぐに閣僚を召集して!それと、日本放送に今流している番組で紹介している場所を全てリストアップさせて!X案件よ!私も直ぐに官邸へ戻る!警察を総動員する必要もあるわ!」

 

 

 

『承知しました、お待ちしております』

 

 

 

「ティアンナ!ティルちゃんは必ず見つけ出してみせる!先ずは一緒に官邸へ行きましょう!」

 

 

 

「えっ、ええ……」

 

 

 

 半ばパニックになっているティアンナを促して椎崎首相は首相官邸へ急ぐ。

 後に“日本の一番長い夜”と称される事件が始まりを告げた。

 

 

 

 

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