星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
「さあ、こちらへ。どうか緊張しないでください」
セレスティナ女王陛下は持っていた天秤のような杖で地面を優しく叩くと、テーブルと椅子が現れました。マナの流れを感じましたから魔法だと思いますが、こんなに優しいマナは初めてです。
私は女王陛下の勧めで向かい側に座らせていただき、頭を下げました。
「ありがとうございます、女王陛下。そして大変なご無礼を……ごめんなさい」
正規の手続きを一切無視して、護衛のお姉さん達を困らせたのは事実です。アードでは極刑に当たる重罪なのに、女王陛下は優しく受け入れてくださいました。
今も私を見つめる瞳には優しさを感じます。いや、懐かしそうにされている……?
「思い立ったら直ぐに行動をしてしまう所は、フェルトに似てしまったのでしょうか。先の謁見では大人しい印象を受けましたが、貴女も中々やんちゃですね」
やっぱり女王陛下はお母さんを知ってる!
「やっぱり女王陛下はお母さんの事を御存知なのですね……」
「ええ、よく知っていますよ。シア……貴女の祖母に当たる方の次に知っている自信があります」
「おばあちゃん、ですか?」
ということは、お母さん達はリーフでも重職に就いていたのかな?で、おばちゃんが女王陛下と親しかった。
開拓団じゃ他の皆から特別扱いとかはされませんでしたけど……。
それならあの石碑の内容も分かります。
「ふふっ、貴女が聞きたいことはまさにこの事なのでしょうね」
「はい。実はティナとケレステス島を散策した時に石碑を見付けまして。アリアが言うには古代リーフ語で書かれていたみたいですけど、私は読めてしまいまして」
ちなみに古代リーフ語なんて習った覚えはありません。ただ、文字を見ると読めてしまうんですよね。
「あの石碑は貴女の言う通り、古代リーフ語で記されています。亡き我が友人の言葉を借りるならば、あの文字は習得できない特殊な言語との事。
あの文字を読めるのは、リーフ王家の系統を継ぐ者のみです。なぜ私が刻むことが出来たか、それについては秘密ですが」
「……えっ……?」
今、女王陛下はなんと仰った……?
唖然とした私を見て女王陛下は不思議そうにされていましたが、直ぐに優しげな笑みを浮かべられました。
「フェルトは貴女に何も教えなかったのですね。或いは、貴女には柵に囚われず普通の女の子として生きてほしかったのかもしれません。あの娘は優しい娘でしたから……」
「私……何も聞いていません……。あの石碑の内容も、お母さん達がリーフの重職にあったんだと……」
いや、違う。何処か確信があった。お母さんと私は他の同胞達とは明らかに違う容姿を持っている。
それにずっと小さい頃に一度だけ、開拓団長がお母さんに平伏しているのを見たことがあります。直ぐに笑い合っていましたから、てっきりおふざけかと思ってしましたが……。
「あの娘の願いを尊重してあげたいのですが、貴女はティナと出会ってしまった。運命なのでしょうね……」
混乱している私を見つめながら、女王陛下は何処か憂いを帯びた瞳を向けてきました。
「ティナと……?」
「ふふっ、それはまた後で。貴女の祖母は先代リーフ女王のフェルシア。そしてフェルトはフェルシアの末娘。フェラルーシア、貴女は先代女王の孫娘であり、そしておそらくリーフ王家最後の生き残りとなります」
「私が……王族……!?」
「ええ、アード女王セレスティナの名に於いて貴女の身分は私が保障しましょう。こんな形で名付け娘と会えるとは思いませんでした」
「なっ、名付け……」
つまり私は先代女王の孫娘で、セレスティナ女王陛下は私の名付け親!?
……想定していた幾つかの中で、一番あり得ないと考えていたものが的中してしまいました。
「突然こんなことを言われても、混乱してしまいますよね」
「はい……ビックリしています。間違いは……無いんですね」
「ありませんよ、フェラルーシア。貴女は紛れもなくフェルトの娘です。貴女の身体を流れるマナがそれを証明しています」
断言されちゃいました。
……正直混乱していますが、それはあとでゆっくりティナの寝顔でも堪能しながら考えるとして、同時に浮かんだ疑問について聞かなきゃ。
「女王陛下のお言葉です、信じます。ただ、尚更分からなくなりました。私が王族なら、どうして異端扱いをされるのでしょう?」
それだけじゃない、命も狙われた。里長達が陰ながら護ってくれましたし、ティナのお父さんも……フィオレもそうです。どうして?
「……分かりません。この三百年で、いつの間にかリーフ社会に定着していました。王族の特徴を知る者は、大半がリーフ会戦で命を落としていることも理由の一つでしょう」
女王陛下は未来を見通すお力を持っていると聞きますが、制約があるのは間違いありません。
こんなにも優しい方が、センチネルの存在を予見して無視するとは思えません。おそらく私の事も……。
「貴女が望むなら、今すぐにでも正しい布告を出しましょう」
「いえ、今はまだ出さないでください」
私は立場的に次期女王となります。そうなったら、ティナと一緒に旅をすることが出来なくなります。
そんな個人的な想いもありますが、同時に背筋が凍るような、寒気に似た感覚がするんです。
私が異端者扱いをされている真相を突き止めないと、今の段階で公表してもロクな事にならないような気がする。
「女王陛下、改めて数々の非礼をお許しください。そして、私の知りたかったことを教えてくださり、ありがとうございます。自分の事、両親の事を知ることが出来ました」
お父さんがお母さんに遠慮がちだったのは、これが理由なのかもしれません。
「良いのですか?私の名で貴女を保護することも出来ます」
「女王陛下は私への手出しを禁じるとのお言葉をくださったのです。それだけで充分ですし、私の居場所はティナの隣ですから」
それに……女王陛下の容姿を見て確信しました。ティナもアードの王族に連なる身分です。本人は自覚していませんが、私と同じように隠されているのは理由があるはず。
「ティナは果報者ですね。こんなにも良い娘が側で支えてくれるのですから。アードとリーフの未来は、幸福に包まれているでしょう」
「未来の事は分かりませんが、これからもティナと一緒に生きていきたいと思っています。お時間をいただき、本当にありがとうございました」
これは我が儘だ。このまま保護された方が安全なのは分かります。でもそれだと、隠された真相も闇の中です。
最後の一人として、一族を率いる立場になる前に、全てを明らかにしよう。帰ったらこっそり里長と相談します。
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