星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ただし次回からはセンチネル関連の根幹に触れていくのでちょっと難航しています……
合衆国で行われる大統領選挙の報を受けたティナ達は、その日の内に準備を整えて地球へ向けて出発していた。
潤沢な予算を背景とした交易品の数々は既に用意されて銀河一美少女ティリスちゃん号へ積み込まれており、宇宙開発局の全面的な協力によって出発の準備を粗方終えていたことも要因である。
いつものように慌ただしい出発となってしまったが、ティナ達はなれた様子で極彩色のハイパーレーンへ飛び込んだ。
そして二日後、アリアから合衆国で行われる大統領選挙についての情報を読み込んである程度制度の知識を得たティリスは、早速会議室へ少女達を集めた。
大きな円形のテーブルと観葉植物が置かれた部屋に集まった少女達を前にして、協力する際に必要なことを伝達する為である。
「まだ完全に制度を理解した訳じゃないけど、アードとしてはティナちゃん達と友好的な関係を構築しているハリソンくんが首長のままの方が好都合なんだよね☆
それはティナちゃん達も共通した想いだと確信してる。その上で、どんな形の支援が効果的な考えてみたんだけど☆」
「何をすれば良いの?ばっちゃん」
首を傾げる幼い大使に向けて、老練なティリス(幼女)は笑みを向ける。
「先ず何よりもやっちゃいけないのは、露骨な応援だよ。例えばティナちゃん達がハリソンくんを支持してるなんて明言してしまえば、間違いなく反発する勢力を勢い付かせることになる。
それに、内政干渉になるし選挙はアードからの外圧によって為された。間接的な侵略だとか言う地球人も少なからず現れることになるよ」
「ティリス様、何か問題があるのですか?ティナが地球へ赴いてしばらく経ちますけど、地球人は全く纏まれていません。外圧が必要なんじゃないですか?」
異を唱えたのはフィオレだ。彼女はゆっくりと進む交流に若干の苛立ちを覚えていた。ティナの意思を尊重しているが、地球側が応えようとしていないように見えたからだ。
「それはダメだよ、フィオレちゃん。ティナちゃんはもちろん、女王陛下も地球との融和を望まれている。
私達は侵略者じゃないし、可能な限り地球の内政問題には関与しない。あくまでも、地球人が自主的に私達との関係を深めることが求められているんだよ☆」
もちろん、可能な限りである。ティリスは大国である連邦に釘を刺して、ブリテンの首相を介して色々手を入れているのが現状だ。ただし、これらは決して公にはならない裏工作だが。
「じゃあ、どうすれば?」
「なにもしなくて良いよ。ティナちゃん達はいつも通り交流を深めて人助けをすれば良い。それがハリソン君への有効な援護になるから。まっ、難しいことはこの銀河一美少女ティリスちゃんにお任せだよ☆」
ティリスは変わらず裏方に徹して、地球の政治に関与していく方針である。圧倒的な武力や技術差を誇示して新アード政権を樹立、更にアードの力を背景とした統一政権の誕生を促す。
確かにこれも真理の一つであり、数々の面倒な問題をまとめて片付けることが出来る。しかし、それは同時に地球内部に根深い反アード思想を植えつけることを意味している。後々に深すぎる禍根を残すことになるのは明白である。
何より交流の主役であるティナはそのような事態を望まず、そしてそれはセレスティナ女王も望まない。もとより善性の種族であるアード人には、高圧的な外交は不可能な手法とも言える。
故にパトラウス政務局長も地球の複雑怪奇な情勢を正しく認識しているわけではないが、百年の猶予を提示したのである。
セレスティナ女王が交流を推進する発言をした時点で地球とアードの交流は決定事項であり、女王が発言を覆さない以上アード人は交流促進に邁進する事になる。だからこそ、本格的な交流のための準備期間として百年だ。
地球人からすればまさに甘過ぎる外交姿勢であり、同じ地球の国家ならばパイのように食い荒らされるだろう。相手がアードだからこそ成り立つ関係である。それを理解していない地球人も少なくないが。
「うん、私は政治や外交に関しては素人だよ。もちろん勉強しているけど、付け焼き刃じゃ場を滅茶苦茶にするだけだって分かる。だから、ばっちゃんに任せる。信用してるから」
「その信用に応えられるよう頑張るよ☆」
ティナは大使である。故に本来ならば外交の主役になる存在である。
が、彼女相手に外交や政治的な思惑を仕掛ければどうなるかはブリテンが証明した。
尤も、ブリテンはその痛手の代わりとしてチャブル首相がティリスと深い関係を構築することに成功したが。
このちょっと変わった交流の状況に、地球の大半の為政者は困惑している。何せティリスは対外的にはティナの妹扱いのままだ。
ティナの近くに居る幼女が、アード有数の長老であり外交の主役であると見抜くのは困難である。
そしてティリスも素性を明かす相手を選んでいるのだから。
「つまり、ティナはこのままで良いのですね?」
「そうだよ、フェルちゃん。もちろん、フェルちゃん達にも頑張って貰わなきゃいけない。何でか分かるね?☆」
「私達がリーフ人だから?」
「その通りだよ、フィーレちゃん。君達はリーフの若い世代の代表なんだから☆」
ティナがフェルを連れ帰り、リーフ側が怪しい動きを始めた時点でティリスはリーフ首脳陣、彼女曰くミドリムシと若い世代の切り離しに動いている。リーフ姉妹はその一環でもあるのだ。
ティリスによる講義はまだまだ続くかに思えたが。
『ティナ、講義中に失礼します』
「どうしたの?アリア」
それはアリアからの一報であった。
『ただいま救難信号をキャッチしました。どうなさいますか?』
皆の視線がティナに集まる。彼女はそれに頷き。
「アリア、救難信号の場所でゲートを出るよ!放置は出来ない!」
彼女は交流の大使であるが、同時に銀河に残された同胞の捜索任務も継続して課せられている。優先順位は存在しない。
地球との交流と同胞の捜索はどちらも重要なものであるからだ。なにより、彼女自身が見捨てるような選択をしない。
「それでこそティナです」
親友の笑みを見てティナも力強く頷く。
『畏まりました。ゲートアウト開始、目的地マルス星系へ向かいます』
ティナにとって四度目となる救難信号の調査任務。マルス星系で彼女達を待ち受ける運命は、アード、リーフ、そして地球にとって極めて重要な足掛かりとなる。彼女達はそれを知るよしもない。