星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
宇宙ステーション付近で待機している銀河一美少女ティリスちゃん号であるが、センサー類を弄っていたフィーレが血相を変えて振り向いて艦長席に座るティリスを見て叫ぶ。
「里長!センチネル反応だよ!急に現れた!」
「センチネル!?」
「落ち着いて、フィーレちゃん。急に現れたの?位置は?」
「宇宙ステーションの内部だよ!急に障壁が消えた!」
フィーレの言葉に続くように、フェルの座る管制席から警報が鳴り響く。
「そんな!センチネル信号を検知!宇宙ステーションからです!」
「罠だった!?ティナちゃん達を呼び戻して!直ちにこの星系から脱出する!」
「はい!ティナ!フィオレちゃん!聞こえますか!?センチネルです!直ぐに脱出を!」
『分かってるよ!ステーション内部でセンチネルバトルドロイドと遭遇!コイツら、バイオミュータントの群れに潜んでいた!だからアリアも探知できなかったんだ!』
通信機からはビームが飛び交う音とバイオミュータントのおぞましい叫び声、そして無機質な機械音声が響いていた。
それを聞きながら、ティリスが徐に端末を手に取る。
「ティナちゃん、残念だけどここまでだよ。直ぐに脱出して。難しいなら今の座標を教えて。フェルちゃんや私が迎えに行くから」
『それはダメ!』
「ティナちゃん?」
『ばっちゃん!救難信号の発信源は厳重に封鎖されているんだ!まだ生存者が居る可能性もあるし、それに直ぐ側なんだ!』
「……ティナちゃん。バイオミュータントの群れに、センチネルのバトルドロイドが居る。更に言えば、センチネルが信号を発した。
一時間もすれば、センチネルの大艦隊が押し寄せてくる。それを理解した上で言ってるのかな?」
ティリスの言葉はいつになく厳しい口調で問い掛けた。
『お願いばっちゃん!少し、ほんの少しで良いから時間を頂戴!諦めたくない!』
真っ直ぐに返された言葉に、ティリスは小さく息を吐いた。
「三十分だけだよ、ティナちゃん。三十分を過ぎたら問答無用で連れ帰る。良いかな?」
『ありがとう、ばっちゃん!』
宇宙ステーション内部、第八制御室へ通じる廊下では激闘が続いていた。
「あんまり射撃は得意じゃないのよ!」
残骸となっていた家具を急拵えのバリケードにしたフィオレが、身を隠しながらビームガンで応戦。センチネルバトルドロイドは生産性を最優先にしている関係から、性能は決して良くはない。装甲も脆弱で、地球の兵器でも十分に対応可能なレベルである。
センチネルの兵器全般に言えることだが、その強みは簡易構造を活かした絶望的な物量であり、今回はそれに加えてバイオミュータントの群れまで襲い掛かってくるのだ。
ティナとフィオレは浮かんでいては良い的になるだけと判断して、即席のバリケードを盾にとにかく数を減らすことに腐心していた。
「やぁあああっ!!!」
バイオミュータントを押し退けてビームソードを振り回しながら突撃して来たバトルドロイドを相手に、ティナは素早く踏み込んで愛用のビームランスを突き刺す。
更に翼を羽ばたかせて浮かび上がり、勢いを乗せて蹴飛ばすことで後続のバトルドロイドやバイオミュータントを巻き込みながら吹き飛ばし、そこへフィオレがビームを叩き込んで数を減らしていく。
「キリがないわよ!?本当にやるの!?」
「こんなところで諦めたくはないから!でも、時間がないし……フィオレ!なにか魔法で纏めて吹き飛ばせない!?隔壁に穴を空けない程度に!」
「無茶な要求を……あっ、いや試してみよっか。ちょっとだけ時間を稼いで!」
「任せて!さあ来い!」
身を引いたフィオレの代わりにティナがバリケードの前に躍り出る。既に彼女は装備していたビームガンを撃ち尽くしているのだ。しかし、本来ティナは射撃よりも槍と盾を使った接近戦を得意としているので問題にはならなかった。
バトルドロイドのビームはまるでスパルタの盾のような形をしたビームシールドで防ぎ、押し寄せるバイオミュータントは槍を振り回して薙ぎ払う。
幼い容姿ではあるが、地球人離れしたフィジカルを持つ彼女による渾身の一撃は、バイオミュータントの群れを吹き飛ばすには十分な力を発揮する。
「フィオレ!まだ!?」
「お待たせ!ティナ!頭を下げなさい!」
ティナは咄嗟に身を屈めた。そして振り向くと、そこには右手を真上に向けたフィオレが仁王立ちしていた。彼女の人差し指には電流が収束していき。
「いけーーーーっっ!!!」
そのまま右手を振り下ろして人差し指を前方へ向けた。すると凄まじい電流が放電されてバイオミュータントやバトルドロイドを薙ぎ倒していく。その技はロボットアニメの金字塔を彷彿とさせるものであり。
「サンダー◯レーク!?なんでそんな技を!?」
「フィーレが見ていた地球のアニメ?から拝借したのよ!魔法だって発想力が大事なんだから!」
フィーレへ熱心に薦めた豪徳寺所長も、まさか魔法に転用されるとは思わなかっただろう。胃痛案件である。
「色々突っ込みたいけど、それは後で!邪魔な奴らを片付けたし急ごう!」
直後、背後からなにかを無理矢理抉じ開けるような音が鳴り響く。
『ティナ!後方の隔壁が破壊されました!』
慌てて振り向くと、大型のバトルドロイドが重厚な隔壁を無理矢理抉じ開け、数えるのも嫌になるほどのバトルドロイドやバイオミュータントの群れが通路へ雪崩れ込んで来る様子が見えた。
「フィオレ!」
「ちょっ!?」
ティナは咄嗟にフィオレの手を取り、翼を広げて全速力で第八制御室へ向かって飛ぶ。飛行速度ではリーフ人よりアード人の方が遥かに速いのだ。
「アリア!隔壁を全部下ろして!ちょっとは時間が稼げる筈だから!」
『畏まりました!全ての隔壁を展開します!』
ティナの指示に従い、アリアはメインシステムにアクセスして通路上にある緊急時の隔壁を次々と下ろしていく。ティナは高速で飛びながら隔壁を掻い潜り、遂に目的地である第八制御室へ辿り着く。最後の隔壁が重厚な音を立てて下り、二人は揃ってその場に座り込み荒れた呼吸を整える。
「あっ、アンタ無茶しすぎ!腕が千切れるかと思ったわよ!」
「ごめん、フィオレ。急ぎすぎたかな?」
「まあ、助けてくれたのはちゃんと分かるし別に怒ってないわよ……ここ、よね?」
立ち上がりながらフィオレは第八制御室と記された扉を見る。
「うん、そうだよ。アリア、ロックを解除して」
『畏まりました。現在地の情報をマスターティリスへ送ります』
機械音と共に封鎖されていた扉がゆっくりと開いていく。
「命を張ったんだから、何らかの成果は欲しいわね」
「もし遅かったとしても、せめて身許だけは調べて持ち帰ろう」
完全に扉が開き、二人は互いに頷いて中へ駆け込と直ぐ様アリアが再び扉を閉めた。
室内は狭く照明も消えており、部屋の大半を占める端末の光が唯一の光源として室内を照らしていた。
「……えっ?」
「は?嘘……でしょ……?」
そして少女達は目を見開いて硬直する。その視線の先にあるのは。
先ず最初に目についた見たこともない衣類はボロボロになってほとんど意味を成さず、辛うじて局部のみを隠している。
次に身体を見ると背中には翼も羽も無く、ファンタジーのエルフのように長く尖った耳とエメラルドグリーンの髪を肩口で切り揃えたティナと変わらないくらいの少女が壁に背を預け、手足を投げ出して目を閉じている。
第八制御室で二人は、全く未知の異星人の少女と出会う。それは、運命がまた一つ動くことを意味していた。