星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
異星人の女の子を助けてマルス星系を脱出して一日が経った。女の子は変わらずに医療ポッドの中だ。別に重傷という訳じゃなくて、アリアが解析に時間を掛けていることが理由かな。
宇宙開発を進めると未知の物質や細菌等と接触する機会が多くなるから、アードの宇宙船は完全に無菌化されているし、それは持ち込まれた対象も同じだ。優れた検疫技術の賜物だよ。
『これまで解析できたデータから、対象がノーム人と仮称されている生命体である可能性が極めて高いと推測します』
「ノーム人?」
聞いたことがない名前に皆で首をかしげた。ただ、ばっちゃんだけは何だか知ってそうだけど。
「あー……接触したことはないよ。ただ、宇宙開発の最中に彼らの遺したと思われる遺物や遺跡が幾つか発見されたんだよね☆」
『マスターティリスの言う通りです。これらの遺物からリーフ人以外の、それも高度な文明を持つ知的生命体の存在を確信し、解析を行なっていました。
残念ながら全体的に回収できた遺物も少なく、更にセンチネルとの戦いが勃発したため解析も中途半端な状態です』
「じゃあ、言語とかは……?」
『全く解析できていません』
そりゃそうだよね。地球の言語はインターネットを通じて直ぐに解析できた。
だって、インターネットに文字や文法なんかが全て掲載されているからね。
ただ、遺跡や遺物の調査じゃ限界がある。となると、困ったなぁ。
「ティナ姉ぇ、ついでに伝えとくけど。あのおねーさんが身に付けてたデバイスだけど、ほとんどガラクタ状態だよ。色々調べてみるけど、あんまり期待しないで」
「そうなるかぁ……何とか出来ないかな?フィーレ」
「努力はしてみる」
つまり、完全に未知じゃないけどコミュニケーションが大変なことは理解できた。
『ただ、対象の体内にマナと思われる粒子の存在を確認しました。調査記録にもノーム人が魔法のような力を持つことが推測されていました』
「マナを持っているなら、魔法を使うことが出来るわね。完全に未知の体系だけど、何とかなるんじゃない?」
「未知の魔法ですか、ちょっと興味があります」
「フェルは魔法が大好きだもんね」
色々チートなフェルは、魔法に関してほとんど独学らしいから恐れ入るよ。魔法がほとんど使えない私からすれば完全に未知の世界だけどさ。
「取り敢えず、この娘が起きてからだね。アリア、食べられるものとかも最優先で調べて。目が覚めて食べるものが無いなんて可哀想だから」
『畏まりました』
翌日、一通り検査が終わって医療ポッド内を満たしていたナノマシン溶液が抜けていく。
「これ、喜んでくれるかなぁ?」
身に付けていた衣服はほとんど使い物に為らない状態だったから、取り敢えずアードの天使みたいな服を用意した。背中が大きく開いているデザインなんだけど、翼がない彼女には必要ないからどうしようかと思ってたらフェルが作り直してくれた。いつの間に裁縫技術を会得したんだろう?
「ふふっ、将来のためです」
……花嫁修業かな?まあ良いや。ちなみにアードの服を選んだ理由は、私と背格好が似ているからだ。
……何だか悔しい。
言語の問題もあるけど、宇宙ステーションで助けた時確かにアード語で助けてと言った。アード人がノーム人の痕跡を見つけたなら逆があっても不思議じゃない。
ナノマシン溶液が完全に排出されて、医療ポッドの蓋が開いていく。それと同時に女の子も目を覚まして身体をゆっくりと起こした。
解析した結果、推測される最適な大気構成はアードより地球に似ていた。地球よりちょっと酸素濃度が高い感じかな。
だから医務室内部は彼女に最適な大気構成に設定されているし、私達は環境適応魔法がある。私の場合は服に、だけど。
起き上がった女の子は特に問題なく呼吸しているみたいだし、解析結果に問題はなさそうだ。っと、それよりも。
「お、おはよう。先ずはこれを着てみて。分かる……かな?」
フェルが仕立て直してくれたアードの衣服を差し出してみる。いくら女の子同士だからって、いつまでも素っ裸なのは目のやり場に困る。相手も恥ずかしいだろうし。私の意図を察してくれたのか、服を受け取ってくれた。ちょっと困惑してるみたいだから、手伝ってあげた。
身長は私と変わらないくらいで、体型もスレンダーだ。お胸様は私よりあるけど……。ただ、手足は柔らかいんだけど筋肉質でもある。力が強そうだなぁ。
よし、完成。翼の無いエメラルドグリーンの髪を持ったアードの女の子……無理があるだろうなぁ。ジョンさん達にどう説明しようか。
「あ……アー……ド?」
ゆっくり、そして辿々しく女の子はアード語を口にした。アード語は発音が滅茶苦茶難しいみたいで、アード人以外には不可能と言われてるけど。
『マナを検知。何らかの魔法の補助があるものと推定されます』
なるほど。ちなみに医務室には私しか居ない。いきなり大勢だとビックリさせちゃうからね。もちろんフェル達も外で待機してる。
「そう!私はアード人だよ!」
翼を大きく広げてパタパタしてみる。
「……色……」
ん?色?
彼女の視線は……私の頭に向かってる。あー……髪の色かぁ。確かにアード人はブロンドだ。私はシルバー、不思議に思われるのも無理はない。
んー、どう説明しようかな。多分彼女はアード語を少しだけ理解している。だけど、少しだけだ。難しい単語は理解できないかもしれない。
私の様子を見ていた女の子は、辿々しくまた口を開いた。
「き……綺麗……」
「あっ、ありがとう」
なんか恥ずかしいな……。
よし、ここは慎重に。前世でも外国人さんの同僚が居たんだ。彼と話す時のように、ゆっくりと、一つ一つ、身振り手振りを加えながら確実に単語を並べていく。様子を見ながらね。
「私の名前は、ティナ」
「て……ティ……ナ……?」
「そう、ティナだよ!私の名前はティナ!その……貴女の、お名前は?」
焦らず慎重に。
「な……まえ……」
「うん、貴女のお名前。分かる、かな?」
相手は少しだけ考えてるみたいだ。そして……。
「名前……名前……は……くっ……クレ……ア……」
確かに聞き取れた!
「クレア、クレアで間違いないかな?」
もう一度確認してみると、女の子……クレアは頷いてくれた。
「クレア、会えて嬉しいよ。これから宜しく!」
嬉しくなって早口になっちゃったから、クレアが困ったように首をかしげた。うん、失敗した。ゆっくりといこう。