星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

346 / 468
ジョンさん、胃痛と戦う

 異星人対策室長のジョン=ケラーだ。先日日本で発生した事件は世界に衝撃を与えた。表向きはただの迷子なのだが、その後ティドルさんを通じて事の真相が共有されて強い衝撃を受けた。あの国はまだ諦めていないらしい。

 いや、内容を見ればまさに最悪の事態を招くところだった。ミスター朝霧の息子さんは地球の運命を救ったと言えるだろう。

 直接会ってみたが、利発そうで立派な男の子だ。初対面の、それも異星人の女の子を命懸けで護ろうとしたんだ。

 誰が何を言おうと、彼こそヒーローと呼ぶに相応しいだろう。

 

 

 

 事の重大性を重く見たハリソン大統領も早速動き始めたが、大統領選挙を控えているのでどうしても初動が遅れてしまった。野党勢力の攻勢は無視できないからね。その間に中華が動いた。

 CIAから極秘情報として共有された内容は、事件に関与したと思われる例の国の後継者候補である次男の消息が、ここ数日完全に途絶えたらしいということだった。

 結構派手に豪遊するタイプだったらしく、所在や動向を把握するのは楽だったみたいだが……。

 

 

 

「父祖の国には蜥蜴の尻尾切りという言葉があります。おそらく、事が露見する前に中華が何らかの行動を起こしたのでしょうな。

 消されたか、ほとぼりが冷めるまで隠されたか。どちらにせよ、この件で中華を攻撃するのは難しくなりますな」

 

 

 

 一緒に情報を聞いたジャッキー=ニシムラ(ヒャッハースタイル)はそう考察した。確かに証拠隠滅に動いた可能性は高い。

 アリアが調べてくれているが、今現在中華の関与を示す証拠は見付かっていない。

 アードとの交流開始から間もなく一年、各国はアリアによる探知を逃れる術を会得しつつある。

 まあ、このネットワーク社会で完全に逃れるのは無理だろうが。

 それに隠れるように動けば逆にアード側に不信感を抱かせる。だから合衆国政府は秘密会合の場にも必ずインターネット環境を用意している。一切の隠し事をしないというアピールだ。

 そこまでする必要があるのかと思うが、仕方ない。ティナは知らなくて良い事だな。

 

 

 

 話題を変えよう。先ほどティナから地球へ向かっているとのメッセージが届いた。どうやらカレンが大統領選挙が近いことを教えてしまったらしい。

 出来れば彼女達を利用するような真似をしたくなかったのだが、カレンにそれを伝えていなかった私の落ち度だな。

 ハリソン大統領にも直ぐに伝えたが、彼女達を政争に巻き込まないよう各位に通達を出してくれた。ティナには私から話しておこう。ただでさえ大統領選挙となれば荒れるのだ。そんなことにあの子達を巻き込みたくはない。

 

 

 

「しかし、我が同志ティリス殿は間違いなく動かれるでしょうな!確信が持てます」

 

 

 

「やはり動くか?」

 

 

 

「無論です、室長。アードからすれば、地球最大の大国のトップが親アードのままでいてくれた方が好都合です。

 そしてそれは、我々とて同じではありませんかな?ジョンソン氏が大統領になった場合、我々異星人対策室は今後も自由に動けるか、疑問です。

 なにより、統合宇宙開発局には貴方を引き摺り降ろそうと画策している愚者が少なからず存在するのですよ」

 

 

 

「私ごとき、代わりはいくらでもいるさ。私より優秀な人などたくさんね」

 

 

 

「そしてその代わりとやらが、室長ほどティナ嬢と信頼関係を構築できますか?

 断言しますが、室長が今のポストを追われたらティナ嬢は強い不信感を抱きますぞ。

 敢えて申し上げれば、彼女には政治的な駆け引きやその結果を察する能力はありませんし、察する必要もない。

 彼女は、いやアード人の大使は貴方が異星人対策室の室長であることを望んでいる。上位存在であるアード人が望んでいる。それが全てです。

 それを否定したり傲慢と言いたいなら、我々地球人類は有史以来引き起こした数々の惨劇を清算せねばなりませんぞ。そんなこと出来るはずもありませんがな」

 

 

 

 普段の陽気さとは裏腹に、ジャッキーは政治や外交、人間の行いについてかなりドライだ。

 ……そう言えば、初めて会った時は常に無表情で冷めきっていたな。自分を含めて、人間に期待すること以上に愚かなことはないと吐き捨てられた覚えがある。

 まるで傷だらけの犬がそれでも健気に威嚇しているような、そんな痛々しい彼を放っておけなかった。

 時間が許す限り彼とコミュニケーションを取り、共に過ごすことで凍り付いた心を少しでも溶かそうと自分なりに努力した。幸い窓際族の私には時間が山ほどあったからね。

 

 

 

「ティナを含めて、アード人に上位者であると驕る人は居ないよ」

 

 

 

「無論です。だからこそ、我々地球人はその幸福に感謝しなければなりません。こんなにも簡単な真理を理解しない人間が多くて困りましたよ」

 

 

 

「君はなにかと苛烈だなぁ」

 

 

 

「以前申し上げましたぞ。私は、私を含めて人間に期待していないだけですよ。無論!ケラー室長や異星人対策室の仲間達は別ですぞ!」

 

 

 

「ありがとう。君の信頼に応えられるように頑張るさ」

 

 

 

「全身全霊を以て支える所存!とは言え、ティナ嬢達が戻るのは有り難いことです。カレンお嬢様を含め、皆が喜びましょう」

 

 

 

「ああ、皆も喜ぶだろう。残念ながら入れ違いになってしまったが」

 

 

 

 例の調査船オリンポス号は昨日未明に太陽系を去った。ティルは随分とミスター朝霧の息子さんに懐いていて、帰還に際して随分とぐずってしまって皆で頭を抱えたものだ。

 私は彼女達の隠された身分を知っているから、安全とは言えない地球に長居することに反対した。

 ティアンナ女史は面白がっていたが、また彼女の逆鱗に触れる危険性を考えればアードへ戻るのが最善だ。同じような事件が起きない保証など無いのだから。

 幸いティドルさんも同じ想いだったらしく、二人でなんとか説得して帰還してもらった。

 ただし、近い内にミスター朝霧の息子さんをアードへ送ることが確定してしまったが。ミスター朝霧には特注の胃薬を進呈しておいたよ。

 

 

 

「次回はいよいよ外交団ですな、室長」

 

 

 

「何故か私の参加は確定事項だがね」

 

 

 

 何故か私も外交使節団への参加が確定している。ミスター朝霧も当然参加して、しかも息子さんと奥さんを連れていくことになった。ティアンナ女史の強い希望だ。断れる筈もない。

 また、まだ調整中だが外交団には我が国や日本以外の複数の国から人員が参加する予定だ。

 人選には細心の注意を払っているが、新たな波乱を呼びそうで胃が痛いよ……。

 

 

 

「外交団とは言え、先ずは簡単なルールの確認や策定が目的です。友好条約まで進めたら大手柄ですな。もちろん粉骨砕身励みますぞ!」

 

 

 

「頼むよ、ジャッキー」

 

 

 

 人選の一部は異星人対策室に任されている。不安はあるが、少しずつ地球も変わりつつあると示せれば良いのだが。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。