星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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パトラウス奔走記(いつもの)

 ティナが地球で人命救助とやらかしを平行して行うと言う荒業を発揮している頃、天の川銀河の反対側に位置する惑星アードのパトラウス政務局長の下へティリスが送った極秘メッセージが届く。

 セレスティナ女王の裁可を得るまではアナスタシアにも見せるなと念押しされたメッセージにはマルス星系での出来事と、これまで痕跡は発見されていたが邂逅することが無かったノーム人の少女クレアを保護した件が、克明に記されていた。

 当然このような案件をいきなり投げ込まれたパトラウスは凄まじい胃痛を覚えたが、事は急を要すると判断して直ぐ様近衛にセレスティナ女王への謁見を願い出た。

 

 

 

「ちょうど良かった。今朝から王妹殿下がお越しでしたが、つい先ほどお帰りになりまして。直ぐにお取り次ぎします」

 

 

 

「うむ、よろしく頼む」

 

 

 

 直ぐ様謁見の許しが出たが場所は謁見の間ではなく、セレスティナ女王のプライベート空間であった。

 パトラウスとしては女王が普段過ごす空間に足を踏み入れるなど畏れ多すぎて胃痛が増すのだが、招かれた以上応じない選択肢など存在しない。

 恐縮しつつ彩り豊かな花畑に作られた道を進むと、珍しくセレスティナ女王は茶会の席ではなく豊かな水が涌き出る噴水の淵に腰かけてパトラウスを迎えた。

 パトラウスは直ぐ様膝をつき、最敬礼にて最上の敬意を示す。

 

 

 

「臣パトラウス、ただいま御前に参りました。この度は急な願いにも関わらずご尊顔を拝謁賜る栄誉を頂き、心からの感謝を申し上げます」

 

 

 

「構いません。何かありましたか?」

 

 

 

 ティアンナや姪であるティルと過ごしたためか、セレスティナ女王の表情に普段以上の柔らかさがあった。

 当初は地球で発生した事件について心を痛めたが、今は可愛い姪を守り抜いた地球の少年に関心が向いており、来訪を楽しみにしているのだ。もちろん関係各所の胃痛は言うまでもないが。

 

 

 

「はっ、今しがた姉より緊急のメッセージが届きました。その内容は急を有することであり、女王陛下の叡智を頂き御聖断を仰ぐため参りました。こちらにございます」

 

 

 

 パトラウスは端末を捧げ持ちながらメッセージを再生。セレスティナ女王は、目の前に投影された非実体モニターに映し出された内容に目を通す。

 

 

 

「ノーム人?」

 

 

 

「はっ、開拓時代に幾つか痕跡を発見した未知の知的生命体です。この度ティナ殿下はマルス星系にてノーム人の少女を保護し、地球へ同行させているとの事でございます」

 

 

 

「新たなる隣人となり得るでしょうか。その少女は?」

 

 

 

「はっ、こちらに。コミュニケーションの問題もございますが、そちらは時が解決しましょう」

 

 

 

 新たにクレアの映像を映して説明を続けるパトラウスであるが、ふと気になってセレスティナ女王へ視線を向ける。女王は映し出されたクレアの映像を見て、目を僅かに大きく開いていた。

 

 

 

「女王陛下?」

 

 

 

「……これも運命なのでしょうか。来るべき時が来たのですね……」

 

 

 

「はっ……」

 

 

 

 パトラウスも静かに控えて言葉の続きを待つ。

 

 

 

「パトラウス政務局長」

 

 

 

「御前に、女王陛下」

 

 

 

「この少女を受け入れて、決して災いが彼女に降り掛からぬよう対処することを望みます」

 

 

 

「御意のままに、女王陛下。この件を信頼できる者に共有しても宜しいでしょうか?」

 

 

 

「あなたの良心に従った行為に口を挟むつもりはありません」

 

 

 

「御信任頂き、恐悦至極に存じます。委細お任せください」

 

 

 

 勅命が降された。直ちにパトラウスはハロン神殿内にあるアード永久統治機構政務局へ戻り、特に信頼を寄せる局員達を局内の会議室へ集め、ティリスのメッセージを共有した。

 

 

 

「ノーム人、開発時代の資料に幾度か名が記されていますね。その少女を保護したと」

 

 

 

「そうだ。大使殿が帰還する際に連れ帰るだろうが、これをリーフ側に知られること無く万難を排して秘密裏に保護せねばならん」

 

 

 

「何故ですか?新たな隣人の存在を大々的に公表して、一族を挙げて歓迎すべきでは?」

 

 

 

 局員の疑問も無理はない。性善説が前提のアード社会では当然の流れと言えた。

 

 

 

「諸君らの疑問も当然であるが、この件に関しては疑問を抱くこと無く職務を遂行せねばならぬ」

 

 

 

「それは、何故ですか?」

 

 

 

「決してこの少女に災いが降り掛からぬようにと女王陛下がお望みだ」

 

 

 

 パトラウスの言葉を聞いた瞬間、局員達が背筋を伸ばして直立不動となる。

 

 

 

「畏れ多くもこれは勅命である。各員、万難を排して職務に当たれ」

 

 

 

「「「はっ!」」」

 

 

 

 次にパトラウスは協力を得るために宇宙ステーションへ上がり、宇宙開発局のザッカル局長と面会した。

 

 

 

「これまで謎が多かったノーム人の実態を知ることが出来るまたとない機会であり、我々に否やはあるはずもない。ましてティナが助けたのだから、全力で支援させていただく」

 

 

 

「感謝する、ザッカル卿」

 

 

 

「礼には及ばん。それに、パトラウス卿の懸念も理解できる。フェラルーシアを保護して以降、リーフ人の動きは怪しい。

 彼等がノーム人に対してどの様な反応を示すか分からないからな」

 

 

 

「貴公ならばご理解頂けると確信していた」

 

 

 

「万難を排するためにも、宇宙ステーションで過ごして貰うことにしよう。寛げるような環境を整えねばな」

 

 

 

 両者の意見は一致し、クレアには宇宙ステーションで過ごして貰えるように政務局と宇宙開発局で調整を行い、更にパトラウスは関係各所の長に根回しをして万全の受け入れ態勢を準備するために奔走していたのだが。

 ……三日後。

 

 

 

『クレアちゃんには色んなものを見て貰いたいから、里に連れていくね☆』

 

 

 

 先ず姉からのメッセージに頭を抱え、それでも説得すべくメッセージを準備している最中。

 

 

 

「パトラウス、女王陛下がお呼びだ。直ぐに参上するように」

 

 

 

「承知した」

 

 

 

 アナスタシアの導きに従い謁見の間へ、足を運ぶ。そこにはセレスティナ女王だけではなく、妹のティアンナも居た。

 

 

 

「姉様から聞いたわ。ティナがノームの女の子を助けたみたいね。お部屋も準備したし、うちに泊めるからそのつもりで。それと、姉様も興味があるみたいだから会うわよ。準備しておいて」

 

 

 

「ぎょ、御意のままに!」

 

 

 

 パトラウスが関係各所を奔走して整えた計画の破綻と、クレアがドルワの里に泊まる+女王との謁見が決定した瞬間である。

 だが、女王の意思は何よりも優先されるのがアード社会である。残念ながら、彼の胃は犠牲となったのだ。

 

 

 

 直ぐ様各方面との再調整に奔走する羽目となったパトラウスは、夜遅くに疲れを癒すべく帰宅。

 

 

 

「遅かったな、パトラウス」

 

 

 

「アナスタシア?珍しい事もあるな」

 

 

 

 近衛兵長として、基本的にハロン神殿で過ごすことが多い妻のアナスタシアが珍しく帰宅しており、パトラウスも驚いた。

 

 

 

「畏れ多くも、女王陛下よりたまには家族で過ごすようにと仰せつかってな」

 

 

 

「そうか……パルミナは?」

 

 

 

「既に休んでいる。最近は訓練に励んでいるみたいだな」

 

 

 

「それは何よりだ。とは言え、流石に今日は疲れた。悪いが、早めに休ませて貰うよ」

 

 

 

「何を言っている?寝室はこっちだ」

 

 

 

 右腕を捕まれたパトラウスが目にしたのは、テーブルにある開封済みの缶詰であった。

 

 

 

「まさか、地球の食物を!?」

 

 

 

「相変わらず大変美味であった。色々と昂る味だ」

 

 

 

「待てアナスタシア!流石に今日は無理だ!……待て!服を脱ぐな!服を脱がせるな!おい!頼む、少しは安らぎを……あっ……あっ……

 

 

 

 アーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!」

 

 

 

「弟か妹が出来そう」

 

 

 

 父の悲鳴を耳にしつつ、パルミナは静かに夢の世界へ旅立った。

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