星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ブリテンへもう一度やってきた私達を、現地の皆さんは熱烈に歓迎してくれた。早速チャブル首相はばっちゃんと怪しい話し合いをしていたけど、気にしないことにする。
政治外交を丸投げにしてるんだ。邪魔をするわけにはいかないからね。
本当はクレアも一緒に連れていきたかったけど、新しい異星人の登場はインパクトが大きすぎるし、何よりもコミュニケーションの問題が解決していないからね。
ブリテンの様々なお土産で我慢して貰うことにしたんだけど、クレアは私達が不在の間に独自にブリテンの事を分かる範囲で調べていたみたいで、片言で一生懸命フィーレと相談してクラフト装置を起動。地球の服を作り出していたんだけど。
「落ち……着く」
「そっか……うん、まあクレアがそれで良いなら言うことはないよ」
クレアの着ている服は、少なくとも地球で一般的なものじゃない。茶色を基調としたロングスカートに、真っ白なブラウスの上から茶色いジャケットを羽織ってる。
そしてまるで作業員みたいに頑丈そうな手袋、分厚いブーツに帽子、そしてゴーグル。腰にはベルトに下げられた懐中時計や工具。まるでスチームパンクで出てくるような衣装だ。
何処で見つけたんだろう?
「クレア姉ぇと一緒に服を見てたら、これに凄く興味があるみたいだったから、クラフトしてみた」
「フィーレが服に興味を持つなんて珍しいね」
「あんまり興味はないけど、たまには見ないとおねーちゃんがうるさいから」
なるほど、理解した。
で、手が空いてるクレアを誘って一緒に色々調べていたんだね。
「その通り。作ったら不味かった感じ?」
「いや、そんなことはないよ。でも、地球で一般的なものじゃないから勘違いしないように」
「あーい」
これでスチームパンク風ドワーフ美少女の完成だ。地球の皆さんに受けそうだから、いつかお披露目したいな。
それにクラフト装置を使っているから、素材もアード製のものだ。だから、魔法障壁も展開されているし、見た目より遥かに頑丈だ。
「ち……きゅうは……ふっ……ふし……ぎ、ですね」
「統一した服が無いからかな?」
前世が地球人だった私からすれば普通なんだけど、アードもリーフも服装は統一されている。装飾品に違いがあるくらいだからね。もしかしたら、ノームも似たような文化なのかもしれない。
まるで違う惑星で誕生した生命なのに、文化的には似ている部分がある。まさに宇宙の神秘だね。
「ティナちゃんたちはゆっくりしてて。ちょっとお出掛けしてくるから☆」
「分かった、気をつけてね」
ティナ達が身体を休めている頃、ティリスは合衆国首都のワシントンD.C.、政治の中心であるホワイトハウスを訪れていた。
ティナには内密にと連絡を受けた結果だ。そこで彼女は、ハリソン大統領とジョン=ケラーの二人と極秘会談に臨んだ。
「大統領選挙だっけ?首長を決めるための投票らしいけど、勝算はあるんだろうね?☆」
「それについてですが、些か劣勢であることは否定できません。かの国への攻撃を機に、アード脅威論は現実のものとなったと煽る人々が活動を活発化させているのです」
「んー、ティナちゃんのせいとか言わないよね?ハリソン君」
笑顔を浮かべながらも笑っていない瞳に見つめられて、ハリソンは背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「まさか、あの対応について否やはありません。むしろ人的被害を全く出さない報復であり、寛大で慈悲に満ちたものであると考えています。
しかし、そうは考えない人間も国内には少なくないのです」
「地球人はひねくれ者が多かったりする?☆」
あまりにもストレートな言い方に二人も苦笑いを浮かべる。
「まあ、否定は出来ませんな。そんな情勢下で、先日あなた方が起こしてくれた奇跡は最高の掩護射撃になりました」
「ティナちゃんが決断したことだよ。そこに政治的な意図は無い」
「承知しております。しかし偶然にも例の船には、我が国の政財界の重鎮の何人かが関わっています。
本人だったり家族だったりと理由は様々ですが、アードに対する好感度を急増させる結果となりました」
「命を救われたんだから感謝するのは当たり前だよね?何故かその当たり前が出来ない地球人も少なくないみたいだけど」
「ええ、まさにその通りです。ですが、いつまでも地球の政治にアードの皆さんを巻き込むわけにはいきません」
「ふーん、じゃあどうするの?」
ティリスの問いに、ハリソンは真っ直ぐ視線を合わせて宣言した。
「大統領再選後、地球の統一政体樹立を各国へ提言し、我が国を中心に取り組みを加速させます。
当然ながら反対勢力も現れるでしょうが、先ずは賛同する国家で共同体を設立し徐々に数を増やしていく予定です」
「それはまた……反発も大きいだろうね」
「覚悟の上です。このままではパトラウス政務局長が提言された百年の期間内に統一政体を作ることは不可能。強引な手法に成りますが、それしかないのです。そして鍵を握るのは、間違いなくティナ嬢となります」
「それ、ティナちゃんを政治的に利用するって言ってるようなものだよね?」
目を細めるティリスに怯むこと無く、ハリソンも胸を張る。
「はい、ティリス殿。その通りです」
「ふーん……ジョンさん、あなたはどう考えているのかな?」
沈黙を保っていたジョンはティリスの問いかけにゆっくりと口を開いた。
「私個人としては、ティナを政治のいざこざに巻き込みたくはありません。これまでのように天真爛漫に地球で過ごして貰いたい。
ですが未来を見据えた場合、彼女の立場を借りるしか方法がないのです。
数多の人々を危険を省みずに救ったティナだからこそ、その影響力は本人が考えている以上に大きいのも事実です」
もちろんティナの隠された身分を知るジョンとしては特大の胃痛案件である。
後に地球の統一にはアード王家、それも恐らく次期女王が深く関与したと言う事実が発覚した際、間違いなく地球とアードの格付けは確定してしまうのだから。
「ジョンさんがそこまで言うなんて……統一政体を作るためには、ティナちゃんが必要なんだね?」
「はい。もちろん、ティリス殿の助力も必要不可欠です」
「……これも必要な経験になるかぁ……あの娘を利用するなら、ちゃんと成果を出すように。じゃないと、許さないぞ☆」
「承知しておりますよ、ティリス殿。全ては地球とアードのより良い未来のためです」
「ティナが不快な思いをせずに地球を満喫できるようにより一層努力することを誓います」
二人の決意を耳にして、ティリスは深々とため息を吐いた。まだまだこの老人を休ませてはくれないらしいと内心苦笑いを浮かべながら、行く末に想いを馳せるのだった。