星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ティナは広大な宇宙を愛機であるギャラクシー号で駆け抜けながら、遂に初めての動画配信を開始させた。その光景を眺める視聴者達も大騒ぎである。
『何度見てもXウィ◯グに似てるよなぁ』
『あちこち違いはあるけどな。大雑把に言えば似てる……かなってレベルだが』
『ある意味見慣れてる感じだから良いけどな。著作権とか関係無いだろうし』
『大丈夫なのか?あの会社はシルエットでも訴えるような会社なんだぞ?』
『宇宙人相手に訴えるのか?』
『新手のジョークになるかもな』
『ジョークに地球の運命を賭けないで欲しいな』
『まあ、偶然だろ。銀河の反対側だし、開示されたデータを見る限り数百年前から運用されているみたいだし』
先ずギャラクシー号の外見で一部の映画ファンが議論を初めた。
『なあ、もう一機飛んでないか?』
『ん、隣を飛んでるな。編隊を組むのは星が違っても変わらないんだな』
『ちょっと待て!ティナちゃんだけじゃないぞ!』
『なんだ?』
『コクピットを見てみろ!』
『あれは……フィオレちゃんじゃないか!?』
「そうです、フィオレですよ。ほらフィオレ」
隣を飛ぶフィオレがコクピットの中から手を振り、コメント欄が更に騒がしさを増した。
『おおおっ!』
『フィオレちゃんもパイロットかよ!』
「宇宙に出る人は、万が一に備えて一通りスターファイターの操縦を学ぶんです。だから、フェルやフィーレも一応飛ばすことは出来ますよ。
私やフィオレみたいに、専門でパイロットをやってるのは今じゃ珍しいですけどね」
『へー』
『俺もパイロットになりたいなぁ!』
『いやいや、流石に無理だろ』
「無理じゃないですよ?スターファイターそのものは魔法の産物では無いので、動かすだけなら地球の皆さんでも出来ますよ」
『マジか!?』
『それは嬉しい知らせ!俺、パイロットになりたい!』
『私も!』
『いや待て、動かすだけならって言わなかったか?』
「まあ、AIの補助もあるので動かすのは簡単ですよ。ただ私達の身体は皆さんに比べて頑丈だし、動体視力や反射も比べものにならないくらい高いので……」
『それを前提に設計されているんだろうなぁ』
『つまり、なんだ?』
『俺達が乗ってティナちゃん達が見せてくれてるみたいな高機動をやったら、身体がGで潰れるか何かにぶつかって終わりだろうな』
『マジかぁ……』
「その辺りは調整すれば何とか……あっ、ISSが見えてきましたよ。ちょっと周りを飛んでみますね」
『おおおっ!ISSだ!』
『こんなに間近で見られるなんて夢みたいだ!』
『本当に宇宙の旅なんだなぁ』
特に連絡もしていないので、いきなり周囲を二機のスターファイターが回り始めたのを見たISSスタッフ達は激しい胃痛に苛まれた。閑話休題。
「さて、最近は色々ありすぎて地球の皆さんと満足に交流できませんでした。だからこのサイトを利用することにしたんです。
ここなら、色んな柵から解放されて自由にお話しすることが出来ますから」
『イベントが盛りだくさんだったよなぁ』
『俺は何があってもティナちゃんを支持するぞ!俺達家族はグレートブリテン号に乗ってたんだからな!』
『おー、大西洋の奇跡の当事者がここにも!』
「お元気そうでよかったです!頑張った甲斐がありました!」
尚、ティナは気付いていないが当然ながら視聴者には彼女に対して否定的な者も少なからず含まれている。だが、そのような類いのコメントは入力した段階で削除され、更に記入した人物の情報はその場で全てアリアによって引き抜かれている。
そしてあまりにも悪質であった場合には、その人物に関するデータを居住している地域の政府へ送り付けるのだ。
まさに言論統制であるが、不満は出なかった。一人の自由と数十億の命、それは最早比べる必要性すらないのだ。
何より各国が先日某国に向けて行われた報復に対して恐怖していると言って良い。閑話休題。
ティナは地球の人々と言葉を交わしながらゆっくりと宇宙を飛ぶ。今は月の周囲を回りながら、新たに建設された居留地や地球人が建設した月面基地上空を飛んでいる。
「皆さんにも色んな事情があることは理解していますし、解決しなきゃいけない問題もたくさんあることも分かります」
『まあなぁ』
『正直未来を考えると絶望しかない』
『年々色んなものが値上がりしてるしな』
『ガソリンなんてリッター三百円越えて久しいよなぁ』
「私は、私達はその問題解決のお手伝いをしたいんです。そして、このどこまでも広がる宇宙へ地球の皆さんと一緒に旅立ちたい。私は、そんな夢を持っています。
地球は綺麗な星ですし、皆さんも素敵な人達です。だからこそ、地球で終わってしまうのは勿体ないと思ってしまうんです。
余計なお世話だって怒られちゃうかもしれませんが、それでも私はお手伝いがしたい。
地球とアードの子供達が一緒に遊んで、学んで、大人になっていく。そんな未来を素敵だと思うのは、私だけでしょうか?」
『私もそう思う!』
『でもなぁ、そんな未来が本当に来るのか?』
『柵ばっかりだもんなぁ』
「きっと来ますよ。だって私達が望んで、皆さんが望む。同じ未来を見ているなら、きっと叶います。そのためのお手伝いもしますし、必要な技術もどんどん教えます。
例え生まれた星が違っても、銀河を跨ぐくらい距離が離れていても、私達は同じ夢を見ることが出来るんです。そしてこの夢は、私達が手を取り合えば叶うんです」
『同じ夢を、か。ティナちゃんは詩人だ』
『改めてみるとスケールの大きな話だよなぁ』
『いい加減俺達も、肌の色とか何を信仰しているだとかで揉めるのをやめる時が来たのかもな』
『地球でチマチマやってるのがなんか恥ずかしくなってきた』
『解決しなきゃいけない問題は山積みだけどな』
『けど、一歩一歩進めていけば良い。ティナちゃんがブースターになってくれるからな』
『よし、早速政府へ嘆願書を出してみるかな』
『急には無理だろうが、俺達が少しずつ変えていこう!』
ブリテン某所。画面に流れる無数のコメントを眺めながら老紳士は静かに愛用の葉巻を外して紫煙を吐き出し。
「大衆とは無責任で無知な存在であるが、熱狂した大衆は為政者を動かし独裁者ですら無視は出来ない……か。
これがティリス嬢の入れ知恵ではなく無自覚ならば……末恐ろしいな。実に将来が楽しみだ」
チャブル首相は笑みを深め、山ほど寄せられる要望書の群れに為政者や役人達は胃を痛めた。