星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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胃痛を振り撒く血筋(白目)

 ティナ達が地球で派手な騒ぎを起こしている頃、銀河の反対側にある惑星アードでは。

 最大の島であり政治の中枢であるケレステス島の中心、ハロン神殿。アード永久管理機構政務局長室では何時ものようにパトラウス政務局長が政務に励んでいた。

 交流を更に加速させるため地球へ特使を派遣することが決定しており、その人選について各部と調整を重ね、宇宙開発局長でありティナの上司でもあるザッカルを特使に任命する事が決まっている。

 派遣時期については新たな艦艇を使用するのではなく、ティナたちの旅に同行する形をとる方向で調整が進んでいた。

 ティナ達が戻る=ノーム人であるクレアの滞在とセレスティナ女王との謁見という特大イベントが付属してくるのであるが、そちらについては妻であるアナスタシアに丸投げすることで精神の安定を図った。

 人これを現実逃避と言うのだが、彼の胃痛を少しでも和らげるためには仕方の無い事である。

 

 

 

 

「ザッカル卿、特使を引き受けてくれたこと、感謝に堪えない」

 

 

 

「再稼働したとは言え、今の宇宙開発局に大きな仕事はない。それに、ティナを宇宙へ送り出したのは私だ。私自身も地球に興味があるし、断る理由もあるまい。

 逆に、この話を私達に任せてくれたことに感謝申し上げたい」

 

 

 

「ザッカル卿以上の適任は居ないと判断したに過ぎない。本星へ引きこもっている現状へ一石を投じたのだ」

 

 

 

「それは間違いなくティナの功績だ。彼女の努力を台無しにしないように微力を尽くすことを誓う。それで、パトラウス卿はどの辺りまでを望まれているのか」

 

 

 

「可能ならば、双方の交流を促進するための友好条約を結びたい。貴公には交流の促進を行いつつ現地の情勢を詳細に調査し、報告していただきたい」

 

 

 

「承った」

 

 

 

「それと、畏れ多いことであるが任命式で女王陛下より直接任命していただくつもりだ」

 

 

 

「なんと、女王陛下が!?」

 

 

 

 セレスティナ女王に直接任命された特使は、あらゆる外交権限を付与される。本国の許可無しで、現地勢力と独自に条約締結まで出来る。

 地球では先ず有り得ない制度だが、アード人の気質がこの制度を正常に機能させているのだ。

 

 

 

「大命を拝するとは……畏れ多いことだ。ご期待に背くわけにはいかんな」

 

 

 

「貴公ならば問題あるまいよ」

 

 

 

 

 二人が和やかに言葉を交わしている最中、突如として入り口の扉が開いた。室内に待機している衛兵達が緊張するが、入ってきた人物を見て警戒を解く。

 

 

 

「パトラウス政務局長……あら、ザッカル局長も居たのね」

 

 

 

 ティナの母、ティアンナである。

 

 

 

「ティアンナ女史?どうなされたのだ?」

 

 

 

 ティアンナはパトラウスの言葉に反応せず、ただ笑みを浮かべた。彼女の要求を察したパトラウスは右手を小さく振り、それを見た衛兵達が一礼して部屋を後にする。

 その様子を見ていたザッカルも退室しようと一歩踏み出したが。

 

 

 

「ああ、ザッカル局長もそのままでお願い」

 

 

 

「私が居ても良いのかな?」

 

 

 

「構わないわ。大切なお話をするし、あなたも無関係じゃないから」

 

 

 

「なんだろうか?」

 

 

 

 ザッカルは首をかしげたが、パトラウスは友人にこれから訪れる衝撃について心から同情した。

 二人だけが室内に残ったのを確認したティアンナは、そのまま誰も部屋へ入らないように異空間魔法の応用で空間そのものを切り抜いた。

 この時点でザッカルは嫌な予感がしていたが、次の瞬間ティアンナがいつも羽織っている白衣を脱ぎ、美しい二対の翼を大きく広げたことで予感は最高潮に達した。

 気付けば椅子に座っていた筈のパトラウスが、自分の隣で最敬礼をしているのだ。ザッカルも慌てて最敬礼をする。

 

 

 

「まあ、つまりそういうことよ」

 

 

 

「こっ、これまでの数々の非礼!なんとお詫びすれば良いか!」

 

 

 

 滝のように冷や汗を流すザッカルを見て、ティアンナも苦笑いを浮かべる。

 

 

 

「極秘事項だもの、知らないのが当然だし咎めるつもりも無いわよ。堅苦しいのは苦手だし」

 

 

 

「有り難き幸せ……っ!?でっ、では……ティナは……!?」

 

 

 

「私が産んだ正真正銘の娘よ。ただ、姉様の意思で本人にも秘密なの。それを忘れないように。

 で、貴方は次の地球行きであの娘達に同行する……分かっているわね?」

 

 

 

 この瞬間、ザッカルの胃に超新星爆発並みの胃痛が走ったのは言うまでもない。

 ちなみに推挙したパトラウスも連動して胃痛を感じていた。

 

 

 

「はっ、ははっ!」

 

 

 

「それとパトラウス、地球からの外交団の受け入れだけど」

 

 

 

「はっ、ザッカル卿を派遣した帰りに同行を願うつもりですが」

 

 

 

 パトラウスとしては、特使を派遣して外交の下地を整え、その上で地球の新たな外交団を受け入れるように調整していたのだが。

 

 

 

「それなんだけど、ティルがマコに会いたいって泣いちゃったのよ」

 

 

 

「例の地球人の少年ですか……」

 

 

 

「ええ、随分と気に入ってるみたいよ。姉様も泣いてるあの娘を見て悲しそうにしていたし、何より親として見過ごせないわ。

 だからついさっき姉様と話して、ティナ達が戻る時に連れてくるようジョンさんへメッセージを送ったの。

 二度手間になるし、外交団も一緒に来るでしょうから受け入れをお願いね」

 

 

 

 なんと胃痛が銀河を横断した記念すべき瞬間である。

 当然、アードの特使受け入れ後に派遣を検討していた地球の為政者達。こんな爆弾案件を、個人的なメッセージ感覚で送られたジョン。

 地球側との交渉を担当しているティリス、そして調整のため奔走していたパトラウス、ザッカルの胃に中性子星並みに重い胃痛がのし掛かった。

 

 

 

「既に、メッセージを送ったのですか……」

 

 

 

「もちろん姉様の許可を得ているわよ」

 

 

 

 セレスティナ女王としては、可愛い姪っ子の泣いている姿を見たくないし妹が個人的にお願いする程度と認識した上での許可である。だがティアンナを間に挟むことで、見事に政治外交案件にジョブチェンジを果たしたのだ。

 

 

 

「まあ、流石にずっとアードに居てもらうなんて我が儘は言えないわ。朝霧さん達にも悪いしね。数日間ドルワの里で面倒を見るわよ。あっ、もちろん姉様も会いたがっているから会わせるわよ。直接ね」

 

 

 

「ぎょ、御意の……ままに……」

 

 

 

 朝霧少年、地球人二人目の女王と直接対面する栄誉を強制付与された瞬間である。

 ついでに知らない内にこんな大役を任されたティナにも胃痛が襲い掛かるが、普段振り撒いているので省略させていただく。

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