星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
なんだろう、近々とんでもなく胃が痛くなるような案件が飛び込んでくるような気がする。私だけじゃなくて目の前のジョンさんにも振り掛かりそうな予感がする。気のせいだと良いな……無理だろうな、最近なんか予感が的中するようになってきたし。
今まさに目の前に居るジョンさんが困ったような笑顔を浮かべているけど、私だって学習くらいはする!
「安心してください、ジョンさん。これまで飲ませてしまったのは栄養ドリンクなんですけど、これは純粋な医薬品なんです!」
ラーナフラワーも万能薬の材料として貴重なものだけど、この世界樹の葉はそれ以上に貴重な薬草なんだよね。
先ず世界樹そのものがリーフ人の信仰の対象だから、無闇に葉っぱを採取する事は出来ないんだ。
だから、葉っぱが生え変わる際に出る希少な落ち葉を長時間専用の設備で乾燥させたものが薬草として使える。
当然滅茶苦茶貴重なんだけど、これを調合したら欠損した身体部位、つまり手足だとか目とか耳とか。そんな大ケガをたちまち回復させてしまう、とんでもない薬……“メガポーション”が出来るんだよね。
今回持ち込んだ世界樹の葉は、粉末状にしたものだよ。メガポーションみたいな効果はないけど、それでも医療シートや万能薬以上の効果を発揮する。
最近ジョンさんは胃が痛いって言ってるし、私のやらかしで髪の毛が大変なことになってしまった。これを飲めば回復するはず。
アリアに確認して、妙な変化が起きる可能性は限りなく少ないって結論が出た。
これまでだって、医療シートや治癒魔法を使った地球人に大きな変化は無かった。つまり、医薬品なら大丈夫なはず!
ティナは知らないが、これまで治癒魔法や医療シートで手当てを受けた地球人は、明らかに自然治癒力が向上したことが追跡調査で判明している。
つまり、大きな変化はあるのだ。閑話休題。
「医薬品を私に?」
「はい、ジョンさんは最近胃を痛めていると聞きました。それに、私のせいで髪の毛が……これを飲めば、その問題を解決できるかもしれません!」
全て君が原因なんだが!
周りに居る一同による心からの叫びである。
「でも、いつ使うかはジョンさんにお任せします」
「良いのかい?」
「はい、貴重なものですから」
例えばジョンさんやその家族が大怪我をするかもしれないし、重い病気になってしまうかもしれない。その為に使ってもらった方が良い。
だから、これはあくまでもプレゼントだ。今この瞬間飲む必要はない。
「分かった、有り難く使わせてもらうよ」
ドクターさん達が残念そうにしているのは気のせいじゃない。多分アリアも。
私だって少しは学習するのだ。
「それで、合衆国にはしばらく滞在するのかい?」
「そのつもりです。私に出来ることがあるか分かりませんが、少しでもハリソンさんを応援したいし」
ただし、ばっちゃんが言うには私がハリソンさんを支持していると公言しちゃダメらしい。無用な反発や疑いを持たれるからだって。政治についてはよく分からないから、素直に言う通りにするつもりだ。
対抗馬のジョンソンって人の演説も動画で見てみた。主張も分からないことはないんだよね。合衆国は私が生きていた頃も、そして今も地球の覇者だ。
アードに対して弱腰なんじゃないかってお話も、理解できないこともない。
でもなぁ、私は良いけど他のアード人がそれをどう受け取るか分からないから不安になる。私は親善大使だから、政治的な発言力なんて無いしね。
だから、このまま柔軟で友好的なハリソンさんが率いてくれた方が助かる。
なにより、公約にあった異星人対策室の一新は個人的にもお断りだ。
ジョンさん以上に親しくなれる自信はないし、あの公約通りなら友好的な感じにはならない気がする。
私は……まあ高圧的に来られても、一線を越えないならこれが外交かなって笑っていられるけど、フェルやばっちゃんがどう動くか全く分からないし。
「それを聞いたら大統領も喜ぶよ。選挙については、あまり深く考えなくて良い。君のやりたいように過ごして、行動してくれれば良いんだ。それが一番の援護になるはずだからね」
「もちろんです!」
変に意識しても絶対に失敗するだろうし、そこは気にしないことにする。大西洋で人助けをしたのだって偶然なんだから。
「まあ、取り敢えず今日はゆっくり休むと良い。カレンは試験場に居るし、メリルも夕方には戻る。久しぶりの地球を満喫してほしい」
「ありがとうございます、ジョンさん!」
っと、忘れるところだった。
「ただ、明日一日合衆国を離れて良いですか?」
「それはもちろん君の自由だが、何かあったのかな?」
「はい、日本とエジプトへ行こうと思いまして。どちらも大切な用事があるんです」
「分かった。どちらにも我々から連絡をしてもらうように大統領へ要請しておくよ」
「ありがとうございます、ジョンさん」
「助かります、ジョンさん」
フェルと一緒にお礼を伝えて本部にある私達の部屋へ移動する。そう、明日は大事な用事があるんだ。
先ず日本だけど、皇室からの贈り物に対する返礼品をお渡ししなきゃいけない。この返礼品はもちろんセレスティナ女王陛下が直々に用意されたものだ。畏れ多すぎて、航海中の管理をばっちゃんに丸投げにした。
もちろん地球に来た段階で美月さんと連絡を取り合ってる。そして調整された日が明日なんだよね。緊張するけど、大切なお仕事だ。精一杯頑張ろう。
エジプトについては、お土産に貰ったコットンのお礼を渡さなきゃいけないからね。
「あれ?フィーレちゃん?」
「は?フィーレ!?」
廊下からそとの景色を見ていたフェルの言葉を聞いて慌てて外へ飛び出した。広い運動場のような広場にはたくさんの職員さんが集まってて、その中心にはフィーレが居た。なんで!?クレアと留守番してたはずなのに!?
「あっ、ティナ姉ぇ、フェル姉ぇ。お疲れ」
「お疲れじゃないよ!いつからここに!?」
「昨日から。見てよ、ティナ姉ぇ。ネットの人たちに教えてもらったから、作ってみた。海洋開発に役立つんだって」
「ぁ……」
フィーレの指差した方向を見て、ティナはその場に力無くペタンと座り込んだ。そこには。
「あっ、ティナー!フェルーーーっっ!!」
十八メートルに巨大化して手を振るカレンと、彼女よりちょっと小さいモビ◯スーツ、アッ◯イが体育座りでその存在感を示していた……。