星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
日本で天皇陛下と謁見して、精神的に疲れ果てた私は軌道上の銀河一美少女ティリスちゃん号へ戻ることにした。
本当ならこの後会食とかあっても不思議じゃないんだけど、その辺りは美月さんが上手く調整してくれたみたいだ。
事情をお話ししてくれて、天皇陛下ご自身が会食を執り行わないように仰ってくれたんだって。有り難いけど、畏れ多すぎて胃が痛くなったのは内緒だ。
「たっ、ただいまぁ……」
銀河一美少女ティリスちゃん号……母艦のブリッジへフェルと一緒に転移したら、フィオレが待っていてくれた。
「お帰り、二人とも」
「ただいまです、フィオレちゃん」
「ただいま……フィオレ、フィーレを見ててよ。また地球でロボット作ったんだから!」
「仕方無いでしょ、こっちはそれどころじゃなかったんだから!」
「え?何かあったの?」
フィオレがフィーレから目を離すなんて、只事じゃない!
「まあ、口で説明するより実際に見てもらった方が早いわね。格納庫へ行きましょ。そこで話をするから」
なんだろう、物凄く嫌な予感がする。フィオレと一緒に私達は銀河一美少女ティリスちゃん号の格納庫へ降りたんだけど。
……わぁ……ぁ……。
「これ、全部ゴーレムですか?」
「そうよ。フェル、一応聞くけどアンタの規格外のマナなら何とかなる?」
「えっと、材料があれば……作るだけで良いならなんとか。でもこれを全部動かすのは難しいです」
「宇宙は綺麗だなぁ……」
「まあ作れるだけでアンタが規格外なんだけど。ほらティナ、現実逃避しない」
「はっ!?」
宇宙を見ていたらフィオレに小突かれたので、現実を見ることにします。
まあ……格納庫の中には所狭しと並んでいるゴーレムの群れが鎮座してた。なにこれ?
『総数は一千体です』
「ありがと、アリア。で、フィオレ。これどうしたの?」
こんな例え方はしたくないけど、地球の小国ならこれだけで簡単に制圧出来ちゃいそうだ。
『極めて高い強度を誇ります。鉱物を多く含む地球の大地ならば自己修復並びに増殖が容易ですので、合衆国相手でも問題ないかと』
「さらっと心を読むのは止めよっか、アリア。これは誰が?」
まさかフィオレ?
「私がやるわけ無いじゃない。と言うか出来ないわ。これをやったのはクレアよ」
「クレア!?」
話を聞いてみると、クレアは銀河一美少女ティリスちゃん号に保管されている地球やアードの鉱石のサンプルに興味を示したみたいで、フィーレがサンプルを全部出して見せてみたらしい。
そしたらクレアが笑顔になって、気が付いたらゴーレムが大量に生成されたみたいだ。うん、意味がわからない。
フィーレめ、フィオレに押し付けて逃げたな?
「目を離したのはほんの数分だけよ」
「ちょっと待って。私は魔法をあんまり使えないから分からないけど、この数のゴーレムを数分で作れたりするのかな?」
私の質問に、フィオレは首を横に振った。そしてフェルは。
「私も無理です。数だけで良いなら、時間を貰えたら作れますけど」
おー、チートのフェルでも無理なんだ。
「で、これをやったクレアは?」
「あそこよ」
フィオレが指差した先では、クレアがゴーレムに囲まれてあたふたしてる姿が見えた。可愛い。
じゃなくて!
「ちょっとクレア」
『ティナさん、フェルさん。お帰りなさい』
筆談も完璧だ。アリアの話だと、アードへ帰るまでに解析も完了する予定だから実際に言葉を交わす日も近い。色々お喋りしたいし。
いや、そうじゃなくて。
「これはクレアがやっちゃった感じ?」
『申し訳ありません。未知の鉱物に触れて、嬉しさのあまり精霊達の呼び掛けに応え過ぎてしまいました』
「精霊かぁ」
これまでの交流と解析で、ノーム人は私達やリーフ人とも違う系統の魔法を使うことがわかってる。まあ、日本のアニメ風に言えば精霊術かな。
特に大地の精霊と相性が良いみたいで、ゴーレム生成も簡単にやれるのは知ってた。この数を数分で生成できるとは思わなかったけど。
「これ、鉱石に戻せたりする?」
『理論上は出来ます。でも、私もこんなことになるなんて思わなくて……少し時間をください』
「ああ、良いよ良いよ。今は特に使う予定もないし」
艦載機のスターファイター十機は警戒のために艦隊の周りを飛び回っているし、いざとなれば甲板に直接着艦させる露天係留で何とかなる。つまり、実害はないんだ。嬉しくてついやっちゃったなら、次に備えて学べば良い。
まあ、私は失敗ばっかりだけどさ。
それから数日、ティナ達は合衆国に滞在して選挙を陰ながら応援した。時に意識すること無く、ティナの気持ちの赴くままに行動し、偶然遭遇した事故や事件に介入して人助けを行なった。そしてたまに胃痛をばらまく。まさにいつものように振る舞い、それがハリソン大統領への大きな援護となる。
そして、ティリスも。
「合衆国の政財界にはそれなりに友人が居てね。ハリソン君を支持するようにお願いしておいたよ」
「ありがとー、オジ様☆でもそれって大丈夫なのかな?☆」
「当然それなりにリスクを伴う行為だが、君達はハリソン君が続投することを望んでいるのだろう?ならば、ワシが手を貸さない理由はないな」
「で、見返りは?オジ様相手に便宜を図れば良いかな?それともブリテンに?」
ティリスの問いにはすぐに答えず、老宰相は静かに紅茶の香りを楽しむ。そして、ゆっくりと口を開いた。
「ああ、是非とも便宜を図ってくれたまえ。
「ありゃ、意外な答えだね」
「ワシも長く政治の世界に身を置いてきた。公言できないようなこともやって来たし、それなりに私腹も肥やした。まさに国家に潜む寄生虫だ。自覚もある。
しかしだな、ティリス嬢。寄生虫とは宿主あっての存在だ。宿主から美味い汁を吸わせてもらった分を、しっかり還元せねばならん。でなければ、宿主が死んでしまう。宿主を死なせてしまう寄生虫は、存在する意味もない。
だからこそワシは、良い想いをした分だけ国家に還元してきた。そしてワシはこの人生の集大成として、地球人類の存続を望んだ」
「オジ様……」
「その為ならば、助力は惜しまん。我々はアードに比べれば成熟していない幼い種族だ。どうか、君達がより良い未来へ導いてほしい。それがワシの願いだ」
「ふふっ……重いなぁ。うん、スッゴく重い。こんなものティナちゃんに背負わせるわけにはいかない。ティリスちゃんにお任せだよ☆」
老宰相の願いを受け止めたティリスは、人知れずまた一つの重荷を背負った。笑顔を浮かべながら、未来のために。