星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ただ、先々色々ヤバそうなので数日間更新できない可能性があります。
……ファッキン人手不足。
この日、世界中の注目を集めた合衆国大統領選挙の投票が全州で同時に執り行われた。
長きに渡るハリソン大統領とジョンソン上院議長による選挙戦の結果が示される日であり、双方の主張の是非を国民が下す日でもある。
「やるべきことは全てやった。どんな結果になろうと、悔いはない。国内に混乱が起きないように、各方面へ再度徹底してくれ」
「畏まりました」
投票率は驚異の九割を超えるものとなった。この異常に高い投票率は、それだけ合衆国有権者達が選挙に関心を示していることを現している。
直前の世論調査ではハリソン大統領側がやや優勢となっていたが、予断は許されなかった。
銀河一美少女ティリスちゃん号にて、モニターに映し出される速報ニュースを眺めるティナとティリスも言葉を交わす。
「出来る限りの事はしたと思う。後は、ハリソンさんや国民の皆さんを信じるだけだよ」
「本当に非合理的な政治システムだよねぇ☆ジョンソン君が当選したら、これまで積み上げてきたアードとの関係をご破算にしてしまうのに☆」
「国民が政治に参画する。それが民主主義なんだよ。これまでは為政者が好き勝手してきた歴史がたくさんあるから、悪いことじゃないよね?」
「その民が政治を正しく理解しているなら、理想的な社会になるよね。現実は、政治を理解している民は一割にも満たない。ほとんど無知な民が、メディアの実権を握ってる有力者に扇動されて政治を決めるシステムだ」
「ばっちゃんは厳しいなぁ。自分なりに情報を集めてちゃんと決める人も居るよ。多分少数派だろうけどさ」
「ティナちゃんは、地球を新しいアードのパートナーにしたいんでしょ?☆
アードとしては、民主主義なんて不安定な政治体制を維持されちゃ困るんだけどなぁ。
首長が変わる度に政策が切り替わるなんて悪夢だよ☆」
「まあ、そうだけどさ……」
「まっ、ティナちゃんは頑張ったよ。私も出来るだけ手を回してみた。後は女王陛下のご加護を信じよう☆」
「うん」
事実、開票作業が始まると双方はまさに接戦となった。各州の結果はほとんど僅差となっており、最後の最後まで目を離せない選挙となった。そして。
「室長!結果が出ましたぞ!ハリソン大統領の再選が確実となりました!」
異星人対策室本部の大会議室に職員全員が集まり固唾を飲んで結果を待っていると、ジャッキー=ニシムラ(ガッ◯ャマンコス)が駆け込んで叫び、次の瞬間会議室が揺れる程の大歓声に包まれた。
「やったわね、兄さん」
「ああ……一先ずは安心できたな」
妹のメリルに笑顔で答え、ジョンも静かに椅子へ座り込んだ。
「おめでとうございます、大統領」
「ありがとう、マイケル。しかし、慢心は出来ないな。ほとんど僅差、まさに辛勝と言える結果だ。より一層気を引き締めていかないとな」
再選が確実となったハリソン大統領はさっそく大勢の支持者やメディアが集まる集会場へ姿を現し、感謝を捧げて決意表明を行なった。合衆国内部にある様々な問題への取り組みを熱く語り、そして最後に地球の未来へ言及した。
「エネルギー資源の枯渇が危惧されている昨今、様々な資源が高騰して皆様の生活を圧迫しています。
また、地球全体で発生している異常気象や環境汚染、気候変動によって人の住めない土地が各地に出現し、混乱を招いています。
我々人類を育んできた母なる地球にも、限界が来ているのは間違いありません。
我々に残された道は、無限に広がる宇宙の開発しかありません。そして新たな友人であるアードは、我々に手を差しのべてくれました。
この宇宙で共存するための支援を惜しまないと約束してくれて、既に我々では到底実現できなかった数々の技術を無償で提供してくれたのです。
揺り篭で育まれてきた赤子は、いつの日か巣立たねばなりません。これまで地球という惑星の中しか目を向けなかった我々地球人類も、外へ目を向ける時が来たのです。
地球の資源を食い潰すのではなく、宇宙に進出して資源を獲得し、母なる地球に安らぎを以て恩返しをする時が来たのです。
その為には、我々地球人類が一丸となってこの問題へ向き合わねばなりません。
人種、文化、宗教。解決しなければならない様々な問題が私達の前に立ち塞がっています。意志統一など不可能だと断じる論調もあります。
しかしながらこれを理想主義の戯言であると諦めていては、希望のある未来を、今を生きる、そしてこれから生まれてくる子供達に遺せないのです!
私は政治家として、そして大人として!そのようなことは断じて許してはならないと考えています!子供達により良い未来を遺すのが、我々大人の役目なのではないでしょうか!?
地球人とアード人の子供達が共に笑顔で過ごせる未来を作るために、人類文明が始まって以来の悲願を、今こそ成し遂げようではありませんか!
私はここに、国際連合の大規模な改編、それに伴う地球統一連合設立を国際社会に提言します!」
この演説に会場は大歓声に包まれた。もちろんハリソン大統領の発言に賛否両論はある。先ずは国内政治を優先すべきであるとの主張も間違いではないからだ。
だが、ハリソン大統領はその批判を承知の上で、それでも未来を見据えた提言を止めなかった。
アードとの交流が、宇宙進出に現実味を持たせていることも彼の背を押した。
この演説は様々な波紋を引き起こしたが、後世この日こそ人類躍進の始まりであると主張する歴史家も少なくない。
同日夜、合衆国某刑務所。
「見付かったか!?」
「総力を挙げて探していますが、既に周辺には居ないものと思われます!」
「なんと言うことだ!どうやって抜け出したのだ!?ここのセキュリティは完璧のはずだぞ!」
「現在原因を調査中です!」
「とにかく脱獄者を探し出せ!」
刑務所の刑務官達が大騒ぎしている頃、遥かに離れた荒野を数台のバンが疾走していた。その一台の後部座席に、囚人服を脱ぎ捨てて愛用の赤いチェック柄のシャツを着た男が座っていた。
「思ったより元気そうで何よりだ、サイモン!」
「臭い飯を食わされたが規則正しい生活で、逆に健康体になれたよ。それだけはあの間抜け達に感謝だな」
「ははっ!そいつは良かった!今の俺達にはサイモンが必要なんだ!期待してるぜ!」
「おうよ、お前らの頑張りを無駄にはしねぇ。
……見てろよ、薄汚い宇宙人共。てめえらの思い通りにはさせねぇ!地球を守るのは、この俺だ!」
クサーイモン=ニフーターの脱走。それは合衆国内部に新たな火種が蒔かれたことを意味していた。そして、偶然にも同じ刑務所に収監されていたもう一人も混乱に乗じて複数人と一緒に脱獄していた。
誰も居ない森の中の洞窟にて下着姿となった男は、壁に掲げられたティナの巨大な写真の前に跪く。
「主よ、我が言葉に耳を傾けつぶやきを聞き分けたまえ! 我が王、我が神よ、救いを求め叫ぶ声を聞きたまえ! 我はあなたに向けて祈る……主よ、朝ごとに我が声を聞きたまえ! 朝ごとに、我は御前に訴え出てあなたを仰ぎ臨みます……ティナ様っっ! 嗚呼、慈悲深き我が神よ…!この身は大罪を犯し、業火によって塵芥とならねばならぬ存在っ!しかしながら、私はこうしてまだ生きている!これは、生きて贖罪をせよとの御意志なのですね!
ならば我らの全てを捧げましょう!我らはあなたの民、あなたに養われる羊の群れ。永久にあなたに感謝をささげ、代々に、あなたの栄誉を語り伝えましょう!」
狂信者ケイン=ラッセルは刑務所内で得た信者達と共に祈りを捧げる。
新たな、そして乗り越えねばならない困難がティナ達に襲い掛かろうとしていた。
最後に不穏を残していくのはいつものことです(真顔)