星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
フィオレと一緒に土星近海で配信した私は、そのまま地球の衛星軌道に留まっている母艦、銀河一美少女ティリスちゃん号へ着艦した。
格納庫を埋め尽くしていたゴーレムはクレアが頑張ってくれて、全て鉱石に戻ってる。ただ、どう見ても一千体のゴーレムを作れるだけの数は無い。まあ、サンプルとして積んであっただけだから、数も少ないんだ。質量保存の法則は何処に……?
いや、科学じゃ説明できない魔法の産物なんだ。考えるだけ無駄だよね。
「で、フィオレ。フィーレのおやつ禁止は止めてあげたの?」
「まだよ。全く、油断も隙もないんだから。もう少し反省させるわ」
格納庫からブリッジへ向かう通路を歩きながら親友へ問いかけると、フィオレはそっぽを向いた。ことの発端は、フィーレがフィオレのコレクションから世界樹の葉っぱを拝借して、ドクターさん達に渡してしまった事だ。
普段はフィーレに滅茶苦茶甘いフィオレだけど、流石に大事なコレクションを勝手に持ち出されたら怒るみたいで、おやつ禁止の罰を受けてる。
ただなぁ、おやつの時間に地球の色んなお菓子を物欲しそうに見てるフィーレの姿は、正直胸が痛くなるんだよねぇ。
「フィーレも充分反省してるし、そろそろ許してあげても良いんじゃないかな?」
私の精神衛生上宜しくないし。それにフィーレを哀れんだフェルがこっそりお菓子を融通するのも時間の問題だ。今は私が止めてるけど、優しいフェルはそろそろ我慢の限界だ。
姉妹の問題に首を突っ込みたくはないけど、仲間の不和を誘うような事態は避けたい。ああ見えてフェルも頑固だし。
「アンタはフィーレに甘過ぎるのよ」
「大丈夫?ブーメランになってるよ?」
「ブーメ……なに?」
「あっ、いや。気にしないで。日頃甘々なフィオレには言われたくないってこと」
危ない危ない、地球のネットミームが通じるわけ無いよね。今のアードにブーメランなんて存在しないし。
ただ、フィオレがフィーレを野放しにするから、私を含めて色んな人の胃が痛くなるようなロボットを大量に作り出しちゃうんだよねぇ。
「はぁ……分かったわよ、アンタがそこまで言うなら」
「本当は自分も辛かったくせに」
「うるさい」
フィオレは基本的にフィーレに甘々だ。罰とは言え、悲しげなフィーレを見て心を痛めていたはず。でも罰を与えた手前甘くは出来ない。
だから私が出した提案に乗っかったんだろうなぁ。全く、我が友人ながら素直じゃないんだから。
「ティナさん」
フィオレと分かれて通路を歩いていると、後ろから聞き覚えが無い声が聞こえた。
すぐに振り向くと、そこには相変わらずスチームパンク衣装を身に纏ったドワーフ美少女のクレアが居た。
って!そうじゃなくて!
「クレア、話せるようになったんだね!?」
「はい、時間が掛かってしまいましたが、ようやくです」
『完全に言語を解析できたわけではありませんが、99%以上の解析を終了し、音声翻訳も可能となりました』
「ありがとうアリア!やっとクレアとお話が出来るよ!」
筆談は出来たけど、やっぱり言葉を使ったコミュニケーションの方が楽なんだよね。これは生き物共通なのかもしれない。クレアも嬉しそうだ。
「嗚呼、ティナさんの言葉がノーム語で聞こえる……」
「私もちゃんと聞こえてるよ、クレア!本当に良かった!」
自分のことみたいに嬉しくなっちゃうね!
「改めてお礼を言わせてください。助けていただいて、その後の生活まで面倒を見ていただき、本当にありがとうございます」
「お礼なんてしなくて良いよ。クレアが元気ならそれで満足だから」
お礼が欲しくて助けた訳じゃないからね!
「……貴女は本当に不思議な方ですね」
そう言ってクレアは笑顔を浮かべた。うん、可愛らしい。
「まあ、周りと少し違う自覚はあるよ。それより、これからたくさんお話ししよう!」
「はい、ティナさん。私はまだスタートラインに立っただけです。これからたくさんのことを勉強しなければいけません。だから、色々教えてくださいね?」
「もちろん!分からないことがあったら遠慮無く聞いてね!」
一通りクレアとお喋りをして別れ、ブリッジへ辿り着いた。そこでばっちゃんが待ってた。フェルはフィーレと一緒に植物園に居るはず。
「お帰り~、ティナちゃん☆配信はどうだったかな?☆」
「ただいま、ばっちゃん。皆喜んでくれたよ。まあ、ばっちゃんの配信に比べたら熱狂は無かったけどさ」
「銀河一美少女ティリスちゃんだからね☆」
「銀河一美少女(藤原道長と同い年)」
「笑うな☆」
ばっちゃんもジャッキー=ニシムラ(性癖にやや難あり)さんが用意してくれた私のサブチャンネルで、親衛隊の皆さんのオタ芸を背景にノリノリで歌うカオスな動画を投稿してる。そっちも色んな意味で大人気だ。
「あっ、そうだった。収入は全額寄付してるけど問題ないよね?」
「無いよ☆」
一応広告収入が入るんだけど、再生数と登録者数が十数億単位だからとんでもない額になるんだよね……。
私は感覚的に通貨の価値が分かるけど、アードは地球と通貨の規定を結んでいないからなぁ。私が使うって手もあるけど、特に欲しいものもないし全額寄付してる。
それも怪しい団体じゃなくて、異星人対策室が新しく開設した慈善団体にだ。
使い途に困ってた私を見て、ジョンさんが新しく作ってくれたんだ。前世でも怪しい団体はあったし、確実に役立てて欲しかったから有り難かった。
「あっ、そうそう☆ティナちゃんにメッセージが届いてるよ☆」
「メッセージ?誰からだろう?」
『表示しますか?』
「お願い、アリア」
目の前に非実体モニターが現れてメッセージの内容が表示された。差出人はお母さんだね。
……うん。
「これ、ジョンさんに伝えたらどうなるかな?」
「吐血するんじゃないかな?☆」
「だよねぇ」
第二次使節団についてはまだまだ調整中らしくて、次回来訪時まで待って欲しいってハリソンさんから非公式にお願いされてる。お母さんの無茶振りをそのまま伝えたら大変なことになるだろうし、これは断ろう。お母さんには私から伝えるとして、ティルの件は相談だ。
「よし、日本へ行こう。話してみるよ」
実は今回来訪してから朝霧さんとはまだ会っていないんだよね。私達はずっと合衆国に居たし、日本へ行った時も皇居関係だけで会わなかった。朝霧さん自身が調整のために各国を飛び回っていたらしい。
だから、ティルの件のお礼が出来ていない。お姉ちゃんとして、妹を助けてくれた誠君にも会わなきゃいけないし、日本へ行こう。