星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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オーストラリアへ

 お母さんの要望もあるし、なにより直接お礼を言うために私はフェルと一緒にオーストラリアのシドニーへやって来た。

 美月さんと連絡を取ったら、朝霧さんは日本政府の特使として、息子さんを連れてオーストラリアへ行ってると教えてくれた。

 お仕事なのに息子さんを連れてる理由は分からなかったけど、ティルの件で有名になった誠くんの安全のために日本から離れているらしい。日本から出る方が危険な気がするのは私だけかな?

 まあ、美月さんにも考えがあるんだろうし私が口を挟むことじゃないけど。

 

 

 

 

「ティナ、とても不思議な建物がありますね」

 

 

 

「あれがオペラハウスかぁ……この街の象徴だよね」

 

 

 

 私達はシドニー近海に転移して、そのままゆっくりと海上を飛びながら街へ近付く。そして視界に入ってきたのは、前世でもテレビで見たことがあるオーストラリアでも有名な建物、オペラハウスだ。映像で見たけど、生で見るとその大きさに圧倒されてしまうね。こんなに大きかったんだ!?

 

 

 

『最大で五千人弱の収容が可能とのことです。またメインホールにある最大規模のパイプオルガンも有名なんだとか』

 

 

 

「パイプオルガン?」

 

 

 

「地球の楽器だよ。地球にはたくさんの楽器と音楽があるんだ」

 

 

 

 アードやリーフにもあるにはあるけど、はっきり言って地球に比べたら種類も少ないし、そもそも規模が小さい。

 ばっちゃんは地球の文化を取り入れてオリジナルの歌を披露してるけど、あの人は色々規格外だから例外として考えた方が早い。

 

 

 

 さて、今回は朝霧さん達に会うのが目的だけどもちろんオーストラリア政府にも事前に連絡を入れておいた。アポ無し訪問を繰り返していた頃が恥ずかしい。

 

 

 

 ちなみに事前連絡ではあるがエジプト同様昨日であったので、現地政府を大いに慌てさせてあちこちに胃痛旋風が吹き荒れたのは言うまでもない。

 尚、この時期地球では諸問題に対処するために現代に比べて地域の連合化が更に進んでおり、オーストラリアを中心にオセアニア諸国も連合してオセアニア共同体として纏まり、首都はオーストラリアのメルボルンとなっている。閑話休題。

 

 

 

 指定されたオペラハウスで私達は盛大な歓迎を受けた。政府首脳の皆さんと簡単な挨拶を交わして、予定どおりトランク三つと医療シート三百枚を手土産として進呈した。ばっちゃんが言うにはこの数がちょうど良いらしい。

 本当は首都であるメルボルンへ行くべきなんだけど、朝霧さん達が居るからね。それに、前世で聞いてたオペラハウスを見てみたかったんだよね。

 

 

 

「それでティナ大使、ご滞在予定を伺っても?必要ならばガイドをお付けしますが」

 

 

 

「お願いします。二日間くらい滞在して、色々見て回りたいと思います」

 

 

 

「それは良かった。是非とも我がオセアニアの誇る雄大な自然と名所の数々をご覧になってください」

 

 

 

「はい、楽しみにしています」

 

 

 

 首相さんと握手を交わした私達は、そのまま政府の手配したガイドさんや護衛の皆さんと一緒に、シドニーの近くにある大きな動物園に案内された。

 聞いたことがない名前だったけど、どうやら私が死んだあとに作られた比較的新しい動物園みたいだ。

 そこで色んな地球の動物を見学して私は懐かしさで胸が一杯になったし、フェルも地球の動物に興味津々だった。

 

 

 

「あの地球人はどうして檻の中に居るのですか?もしかして、犯罪を犯したとか?」

 

 

 

「アレはカンガルーだよ、フェル」

 

 

 

 フェルが直立したカンガルーを地球人の亜種と勘違いするハプニングはあったけど、概ね満足できる時間だった。立ち上がれる動物は珍しいから勘違いしても仕方ないね。周りの皆さんも微笑ましそうに見ていたし。

 

 

 

「あの生き物、あの葉っぱを食べても平気なのでしょうか?」

 

 

 

「どうしてそう思うの?」

 

 

 

「あの葉っぱは、地球の生き物にとって毒になる成分を含んでいますから」

 

 

 

 次にフェルが注目したのは、ユーカリの葉っぱを食べているカンガルーに並ぶオーストラリアの代表的な動物、コアラだ。可愛らしい見た目に癒されるね。

 

 

 

「毒があるって分かるの?」

 

 

 

「はい」

 

 

 

『リーフ人は感覚的に植物が害となるか否かを見分けるとデータにあります。地球側呼称コアラは、生存競争を生き延びるために敢えて毒性の植物を食べられるように進化したものと思われます。

 他の生物と競合しない植物を食用とする例は、銀河でも珍しくありません』

 

 

 

「へー」

 

 

 

 ユーカリって毒があったんだ。初めて知ったよ。

 

 

 

「他の動物が食べないなら、食べ物を独占できますから。ただ、問題もあると思います」

 

 

 

「問題?」

 

 

 

『マスターフェルの仰る通り、他の生物が口にしない=一般的には食用に適さないことを意味します。コアラも含まれている毒を中和するために長い睡眠時間が必要となります』

 

 

 

「あー……そっかー」

 

 

 賢い進化だとは思うけど、デメリットもある。そりゃ都合が良いことばっかりな訳ないか。

 ちなみにアリアが常に解説してくれるので、ガイドさんが寂しそうにしてて罪悪感が半端じゃなかったのは言うまでもないね。

 あんまりにも可哀想だけどアリアも解説を止めないし、途中からガイドさんにはお礼を言って別れたけどさ。

 そのままフェルと一緒に動物園を見学しつつ、現地の皆さんと交流した。

 

 

 

「はい、ピース!」

 

 

 

「「「ピース!!!」」」

 

 

 

 途中で子供の集団と遭遇したから、折角なので一緒に写真を撮った。学校行事だったみたいで、子供達よりも先生達が興奮してるのが印象的だ。

 

 

 

「あっ、珍しいのは分かるけど翼には触らないでね?痛くてお姉ちゃん泣いちゃうから」

 

 

 

「「「はーい!」」」

 

 

 

 うんうん、子供は癒されるなぁ。フェルもその溢れる優しさで人気者になってる。

 一通り動物園を満喫した私達は、政府が用意してくれた車に乗ってオペラハウスへ戻った。さっき来た時は外で歓迎の式典が開かれたけど、今度はメインホールでオーケストラを見学させて貰った。

 私は音楽に造詣がある訳じゃないし気の利いたコメントは出来なかったけど、大きなパイプオルガンから流れる壮大な音楽に心がときめいた。演奏が終わる度に精一杯の拍手で感動を伝えた。これでお開きかと思ったら、急にフェルが立ち上がった。

 

 

 

「地球の音楽はとても綺麗ですね。お礼になるか分かりませんが……リーフに伝わる歌を歌わせてくれませんか?」

 

 

 

 フェルの提案に会場はどよめいたし、私もビックリした。

 

 

 

「それは素晴らしい!是非ともお願いします!」

 

 

 

 首相さんが大喜びで、フェルは直ぐに舞台へ案内された。ああ見えて度胸があるからなぁ。

 ステージ場に立ったフェルをスポットライトが優しく照らし出した。そしてフェルは目を閉じてゆっくりと歌い始めた。

 古代リーフ語みたいで翻訳は出来ないから内容は分からないけど、優しい歌声は聞いていてとても落ち着く。

 

 

 

 余談だが、この歌は安らぎの歌と呼ばれるものでティナには心地よい歌として安らぎを与える。

 しかし周りで聞いている地球人達に対しては異なる効果を発揮し、体調を活性化させてあらゆる病を癒し、生物の本能を刺激してちょっとしたベビーブームを引き起こすがそれはまた別のお話である。

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