星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
宇宙、それは無限に広がるフロンティア。人間ならば誰しも一度は夜空を見上げ、そこに煌めく星々に想いを馳せたこともあるだろう。マコこと朝霧少年もそんな宇宙に魅了された一人である。
数奇な運命によって、ティナの妹であるティルを助けて一躍有名人となってしまった彼であるが、それでも彼の本質は変わらない。
「わぁぁあっ……!」
父を送り届けたフェルと一緒に軌道上にある母艦銀河一美少女ティリスちゃん号へ転移した朝霧少年は、眼前に広がる青く雄大な地球と視界を埋め尽くす星の海に感嘆を漏らした。
フェルは朝霧少年が宇宙に強い関心を寄せていることを知っていたので、敢えて転移先を展望室にしたのだ。同じく宇宙に魅了されているティナが好きな場所であり、彼女は母艦に居る時暇になるとこの場所で飽きること無く宇宙を眺めているのだ。
ティナと同じように目を輝かせている少年を微笑ましそうに見つめるフェル。しばらく宇宙の壮大な光景を眺めていると、室内にフィオレが入ってきた。
「お帰り、フェル。ティナは?」
「ただいま戻りました、フィオレちゃん。ティナは明日戻る予定ですよ」
「フェルが地球でティナの隣から離れるなんて珍しいわね?」
「何かあれば直ぐに転移しますし、アリアが居ますから。それに、この子を託されまして」
ここでようやくフィオレはフェルの背に隠れるように佇む少年に気付いた。朝霧少年は目の前の景色に夢中でまだ気付いていない。
「地球人の男の子……?
なによフェル、摘まみ食いでもするつもり?」
「なっ!?私はティナ一筋ですっっ!」
顔を真っ赤にして叫ぶ彼女を見て、フィオレも笑みを浮かべる。
「冗談よ。フェルがティナ以外に興味がないのは、誰でも知ってるわ。それで?」
「もう……この子は朝霧誠君ですよ。ほら、ティルちゃんを助けてくれた地球人の男の子です」
フェルに言われて、フィオレも最近話題となっていた少年であると想い至る。
「あー!ティナが言ってたあの子ね!へー、思ったよりも小さいじゃない。幼年学校くらいかしら?」
「まあそれくらいです。地球人の基準でも、まだまだ小さな子供ですから」
「へー……小さいのに度胸があるじゃない。感心ね」
ここでようやく朝霧少年もフィオレに気付き、慌てて挨拶をするために前へ出た。
「あっ、ごめんなさいお姉さん!僕は朝霧誠と申します!お世話になります!」
律儀に一礼する少年を見て、フィオレも笑顔になる。
「あら、礼儀正しいじゃない。私はフィオレ、見ての通りフェルと一緒のリーフ人よ。ティナの妹を命懸けで助けてくれたんだって?」
「あの時は必死で……」
「咄嗟の判断ってわけね。誰にでも出来るような事じゃないわ。これからしばらく宜しくね。ティナは色々抜けてるし、何かあったらいつでも言いなさいね」
「はいっ!」
元気良く挨拶をする朝霧少年の頭を優しく撫でて、フィオレはフェルへ視線を移す。
「で、この子の部屋とかは準備してるの?食べ物は地球のものがあるけど」
「以前ジョンさん達が使っていた部屋を利用しようかと。朝霧さんも来ますし、その辺りはお任せしようかなって」
「フェルにしては行き当たりばったりね。まあ、空き部屋はいくらでもあるし地球がよく見える部屋を用意しておくわ」
「ありがとう、フィオレちゃん」
「別に構わないわ。で、マコくん。ここで宇宙を見てるのも良いけど、折角だから艦内を見て回らない?」
宇宙船の艦内を探検する。誰もが夢見る提案に朝霧少年も目を輝かせた。
「その様子だと、興味があるみたいね。フェル、お願いして良い?」
「わかりました。さあ、マコくん。一緒に探検しましょう」
「はい!宜しくお願いします!」
この時、提案者であるフェルも失念していた。銀河一美少女ティリスちゃん号の艦内には、ティナがネット上でうっかり公開してしまったが、まだ正式に地球側に紹介していないクレアが居ることを。
もちろん朝霧少年は喜ぶだけだが、父親である朝霧が頭を抱える未来が訪れるとは思いもしなかった。
「この辺りが居住区になります。皆のお部屋と、リビングがありますね。休んでいる時以外は、リビングに居ることが大半なので何かあればいつでも声をかけてください」
最初に案内されたのは、生活するための設備が集まる居住区である。大きなリビングルームはSFチックな内装だけではなく、あちこちに地球由来の家具が配置されている。特に床全体には、地球からの贈り物である高級絨毯が敷かれていた。
人間は未知の場所で見知ったものを見付けると安心感を抱くものであり、朝霧少年もそれは変わらなかった。
「ここは……?」
次に案内されたのは、リーフ人達の憩いの場である植物園である。広いエリアに様々なアードやリーフ、更に最近では地球由来の植物が植えられており、室内全体の床には薄く水が張られている。
「ここは植物園です。アードやリーフ、それに地球由来の植物もたくさん植えられているんです。私達リーフ人は自然に囲まれた場所が好きですから、誰かが居ると思いますよ。ほら、フィーレちゃんが居ます」
フェルが示した先では、木々の間に架けられたハンモックの上で眠るフィーレが居た。
「僕と同じくらい……?」
「うん、年齢的にはマコくんと同じくらいでしょうか。先ほど紹介したフィオレちゃんの妹で、メカニックなんです」
「あっ!じゃあ、ニュースになってたロボットを作った人!?」
「そうなりますね……うーん、気持ち良さそうに眠っていますし紹介はあとにしましょうか」
「はい!」
その後もフェルに連れられて朝霧少年は艦内の様々な設備を見学した。先ず感じたのは、通路を含めて天井が高いことである。空を飛ぶことを前提としているためか、どこも十メートル前後の高さがある。
あちこちにある様々なドロイドやドローン、機材にSFの魅力を感じ、そして無重力区画で人生初めての無重力を体験。父の心配とは裏腹に、存分に宇宙船ライフを楽しんでいた。
「これ凄いです!浮いてる!わわっ!」
「姿勢制御にはコツが必要ですけど、直ぐに慣れますよ。今日紹介した場所は自由に出入りして良いですからね」
「はっ、はい……」
バランスを崩してグルグル回転してしまいフェルが優しく抱き留めたが、必然的に彼女の色々と柔らかい部位に密着することになって顔を赤くする初々しさを見せた。
「あれ?フェラルーシアさん、その男の子は?」
新たに聞こえた覚えがない声。他の乗員だと判断し、挨拶をするため朝霧少年が顔を向けて、そして固まった。
そこにはサイバーパンク風ドワーフ美少女が居た。だが、重要なのは父から見せてもらった資料に彼女の姿はなかったこと。
そして何より目を惹いたのは、彼女を肩に乗せた五メートルを超える巨大な人型ゴーレムであった。