星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
フェルに頑張ってもらって朝霧さんを日本へ送り、そのままマコくんを母艦へ送ってもらった。結構な長距離転移になるんだけど、フェルは顔色を変えずに済ませてしまった。相変わらずチートだよ。
私はそのまま現地に留まって、オセアニア政府の皆さんと会談したんだけど、彼らはアードと地球の交流促進に前向きな姿勢を見せてくれた。もちろん相手は百戦錬磨の政治家さんだから、私みたいな小娘を相手にするのは簡単なことだろうし、この約束が何処まで有効か分からないけど。
『ティナはセレスティナ女王陛下が任命した親善大使であり、ティナとの約束を反故にすることはすなわちセレスティナ女王陛下の権威に傷を付けたことを意味します。現地の為政者がその意味を正しく認識できなければ、先日の攻撃が繰り返されるだけの事です』
「あれは頭に血が上っちゃったからで、二度とやらないからね?アリア」
『残念です。圧倒的な力を背景とした恫喝も立派な外交手段なのですが』
「それでもだよ。それを繰り返したら、友好的な関係を作ることなんて出来ないから」
反発が強くなるだけだよ。そしてそこに友好関係は生まれない。いやまあ、元地球人として完全に対話だけで成り立つとは思わない。
センチネルさえ居なければ私も長い寿命があるし、五百年くらいかけてゆっくり意思統一をなんて考えたこともある。ただ、センチネル以前に地球の状態が思っていた以上に深刻だった。
私も前世で色々と地球の寿命とかエネルギーが何年持つかの予測を見たことはあるけど、どうやら地球人の予測は随分と甘かったみたいだ。
『原因としては地球の貧困地域、つまり発展途上国が急激な経済成長を遂げて人口が爆発。それに伴うエネルギー消費の急増が、人類の予測を遥かに上回ってしまったためと推測できます』
「怖いから心を読むのを止めよっか、アリア」
私って考えが顔に出易いんだろうなぁ。気を付け……いやまあ良いか、私の欠点もばっちゃんやアリアなら上手く利用して交流に役立ててくれるだろうし。あっ、でも。
「核融合炉は?」
核分裂に比べて核融合は桁違いのエネルギーを産み出す……らしい。前世でそんな内容の記事を読んだ気がする。
『そちらは十数年前に人類側呼称核兵器が使用されたため、地球全土で反核運動が加熱。結果、主要国では民意に圧される形で核分裂を含む核関連の技術開発が凍結ないし中止されています』
「……そっか」
やっぱり使われたか、核兵器。地球の歴史や私が生きていた頃からキナ臭かった情勢を考えれば……使われるのは当然かもしれないね。
悲しいけど、便利なものが手元にあって、しかも追い詰められた時まで我慢できるような人は少数だ。
ちょっと暗い気持ちになっちゃったけど、その日はオセアニアの人達と交流することに時間を使った。
安全のために厳重な警備体制が敷かれている中で、私は集まった大勢の人達にアードとの交流を訴えて、宇宙の楽しさを伝えられたと思う。
もちろん宇宙にはセンチネル以外にもたくさんの危険があるけど、それでも無限に広がる宇宙には可能性が溢れてる。地球人とアード人が手を携えて宇宙へ繰り出す。そんな未来のために、頑張らないと!
『マスターフェルに連絡しますか?』
「いや、フェルは休んでもらおう。月に寄るつもりだし、ギャラクシー号を呼んで」
『畏まりました』
翌日、改めてオセアニアの皆さんにお礼を伝えてギャラクシー号を呼び寄せ、そのまま私は宇宙へ飛び出して月にある居留地へ向かった。
今回の航海は色々あって、まだセシルさん達に会えていないからね。現状を知りたいし、足りないものがあったらアードから持ち込む必要があるからね。
何事もなく月面にある居留地へ辿り着いた。いや、凄いよ。ドーム状の建物が更に増えて、しかもたくさんの作業ドローンやドロイドが建設作業を続けてる。
『最優先事項であった居住区の拡張工事が一段落し、現在は農場区画と研究区画の建設が行われています』
「この短期間で?クラフト装置があると言っても、早いなぁ」
月面に広がるたくさんのドーム状の建物と、それを繋ぐ通路。うん、まさにSFの醍醐味だね。
居住区の側に建設されたハンガーへ着陸した私は、そのまま通路の中を飛んで居住区へ入る。通路は金属の無機質な作りなんだけど、居住区に入った瞬間景色が一変する。
百メートルはある高い天井があるんだけど、そこからは広大な星の海と大きな地球が見える。それだけでもテンションが上がるけど、ドームの中はアード由来の植物で形成された豊かな森が広がっている。
翼を広げて飛び上がり、森の中にある地球では滅多に見られないくらいの大木がたくさん集まった場所へ向かう。
太い大木の幹を利用して作られたたくさんのツリーハウスと、木々の間に張り巡らされた蔓と木材を使った吊り橋が見えてきた。まさに森の隠れ家。建物は凄くSFなのに、中身はアード人が好む樹上生活をそのまま再現してる。
元地球人の私はそうでもないけど、一般的なアード人は地面から高い場所じゃないと落ち着いて眠れないらしい。
それを説明してるからか、私達のために用意される地球のホテルも高層のものばかりだ。いや、旅館やすらぎは例外だけどさ。
ここにはラーナ星系で助けたセシルさん達二百名が暮らしている。内容は百七十人の大人と三十人の子供だ。大人は全員女性だ。セシルさんみたいな未亡人も居るけど、未婚の人も少なくない。
ばっちゃんは情勢が落ち着いたら、同じく未婚の若い男性を反応を見つつ少しずつ居住させるつもりらしい。出会いは必要だからね。
里の端にある木製の広場へ降りると、そこには意外な人が居た。
「え?ジョンさん!?」
「やあ、ティナ。久しぶりだね。変わらずに元気そうで何よりだよ」
そこには笑顔で私を迎えてくれたジョンさんが居た。どうやら異星人対策室本部に作った転送ポートを使って定期的に居留地へやって来て、セシルさん達と交流しているみたいだ。優しいジョンさんは子供達の人気者だ。
「オセアニアはどうだったかな?」
「はい、不思議な動物や初めて見る建物が一杯でとても楽しかったです!」
「それは何よりだよ。オセアニアに限らず、地球は多様性に富んだ場所だからね。もちろん安全が第一だが、色んな場所を見て回ると良い。君にとっても損にはならないだろうからね」
「はい!」
和やかに言葉を交わし、セシル達と交流するティナは知らない。銀河一美少女ティリスちゃん号では、クレアのゴーレム魔法、同年代(外見的に)である朝霧少年との交流、そしてネット掲示板の守護者たる紳士淑女によって余計なことを吹き込まれ、インスピレーションを爆発させたフィーレが張り切っていることを。