星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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 月の居留地でまさかジョンさんと会うとは思わなかった。ちょっとお喋りをして、折角だから一緒にセシルさんと会うことにした。

 

 

 

「ティナちゃん、ジョンさん。ようこそ居留地へ」

 

 

 

 里の中心にある石造りの集会所で私達はセシルさんと会った。うん、前会った時より元気そうだ。

 

 

 

「お久しぶりです、セシルさん。お元気そうでよかった」

 

 

 

「ジョンさんのお陰ですよ。まだなにもお返しを出来ていないのに、色々と手配してくださいまして」

 

 

 

「必要なことをしているだけだよ、セシルさん。貴女方が快適に過ごして貰えるように支援するのは、私達地球人の義務だからね」

 

 

 

 まあジョンさんは、義務以前に手を差しのべているんだろうなぁ。地球側としても、居留地に居るセシルさん達との交流はとても大切なことだから支援を惜しまないはず。

 将来的な交流拡大に向けた大切な試金石だ。実際ジョンさんが持ち帰るデータを検証して、アードの文化や生活様式なんかを研究しているみたいだし。

 もちろんその逆もあって、セシルさん達もジョンさんが持ち込む地球の情報を解析して、地球の文化や情勢把握に努めている。ばっちゃんの話だと、居留地から本星へ定期的に地球のデータが送られているらしい。

 

 

 

「セシルさん、なにか足りないものはありませんか?」

 

 

 

「必要なものは潤沢にアナスタシア様から頂きましたので、当分は問題ありませんよ。問題があるとするなら、ラーナフラワーの生育に時間が掛かっていて、十分な数を御用意出来ないことです。良くしていただいているのに、これではお返しが出来ません」

 

 

 

「仕方無いですよ。ラーナフラワーは特殊な植物なんですから」

 

 

 

 ラーナ星系にしか存在しない植物だからね。当然特殊な環境が必要になる。だから、生育が難しいのは分かる。

 むしろ人工的な生育に成功したセシルさん達の高い技術力に脱帽だよ。量産化出来れば、地球はもちろんアードにとっても大きな利益になる。

 当然危険な特性を持っているから取り扱いには要注意だ。下手に扱って無秩序に繁殖なんてさせたら、地球はあっという間に氷河期になっちゃうから。

 

 

 

 その後、ジョンさんを交えて少しだけ話し合いをした。地球は引き続きセシルさん達を支援して、セシルさん達はラーナフラワーの量産化に努めつつ地球との交流を深める事が決まった。

 私は大使として両者の間に立って、交流の促進を図る。まあ、今まで通りだね。

 話し合いが終わってセシルさんと別れ私達は、そのまま転送ポートへ向かう。ジョンさんもこのまま異星人対策室の本部へ戻るらしい。だから、ちょっとした提案をしてみた。

 

 

 

 

 異星人対策室のジョン=ケラーだ。いつものように月の居留地を訪ねてセシルさん達と交流していたら、偶然にもティナがやって来たのでついでとばかりに会談のようなものを開いた。

 とは言えこれは地球の為政者達へ向けたアピールに過ぎず、内容はただ世間話をして地球のお菓子や情報紙を差し入れただけだ。

 無事に話し合いを終えて本部へ戻ろうとした時、ティナは大使となっても変わらない可愛らしい笑顔を浮かべて話し掛けてきた。

 

 

 

「そうだ、ジョンさん!」

 

 

 

「どうしたんだい?ティナ」

 

 

 

「折角の機会ですから、宇宙を飛んでみませんか?」

 

 

 

「宇宙を?」

 

 

 

 ティナはスターファイターに乗って一緒に地球へ戻ることを提案してきた。

 確かアードの主力スターファイターは、ティナが愛用しているギャラクシー号と同じX型スターファイターだったはず。そしてX型は1人乗りだ。

 

 

 

「私が乗ると狭くなるんじゃないかな?」

 

 

 

「あっ、一緒じゃないから大丈夫ですよ?居留地には十機のスターファイターがありますから、一機を借ります」

 

 

 

 確かに居留地には、万が一に備えてスターファイターが配備されているらしいが。

 

 

 

「お誘いは嬉しいが、私は操縦出来ないよ?」

 

 

 

「オートパイロットだから大丈夫です!」

 

 

 

 この誘いは善意によるものだ。私が宇宙に魅了された人間であることを、この娘はよく知っている。ならば、断る理由はない。なにより、この娘の純粋な笑顔を曇らせたくはない。

 

 

 

「分かった、よろしく頼むよ」

 

 

 

 私達はそのままハンガーへ向かう。無機質な金属製の空間にスターファイターが並ぶ光景は、まさにSF映画そのものだ。年甲斐もなく気分が高揚するのを感じる。

 私は万が一に備えてパイロットスーツに着替えた。

 いや、正確にはハンガーに居たアード女性によって、瞬時に服装が変わった。これがドレスチェンジかな?

 用意されたスターファイターのコクピットへ座ると、機器の明かりが点り興奮を覚えた。

 

 

 

『ジョンさん、いきましょう!ティナ、いきまーす!』

 

 

 

 ティナの声と共にギャラクシー号が打ち出されたのが見えた。私は高揚する気分に身を任せて。

 

 

 

「ジョン=ケラー、いきます!」

 

 

 

 ティナにならって声を上げると、軽い振動と共に機体は宇宙へ飛び出した。

 

 

 

「……はははっ!」

 

 

 

 感無量とは、この事を指す言葉なのだろうな。眼下に広がる月面の大地、正面にある青く美しい地球、そして何処までも広がる無数の恒星の煌めきに満ちた星の海。

 自然と笑ってしまったよ。ついでに少しばかり目頭が熱くなった。歳を取ると涙脆くなるものだ。

 

 

 

『ジョンさん、どうですか?』

 

 

 

 目の前を飛ぶスターファイターから通信が入った。

 

 

 

「ああ……この気持ちを表現する詩的な言葉が思い付かないよ。ただ……最高の気分だ」

 

 

 

 幼い頃からの夢。そのために努力を重ね、現実に打ちのめされて、いつしか枯れてしまった情熱が再び湧き出すのを感じた。

 

 

 

『良かった。ジョンさんと宇宙を一緒に飛ぶのが夢だったんです』

 

 

 

「そうなのかい?」

 

 

 

『はい。もちろん大きな夢はありますけど、小さな夢はたくさんあるんです。私は欲張りだから』

 

 

 

 小さな夢をたくさん、か。

 

 

 

「じゃあ、一つ夢が叶ったか。私も嬉しいよ」

 

 

 

『はい!まだまだたくさん夢があるし、ジョンさんと一緒にやりたいことだってたくさんあるんです。全部叶えるつもりなので、ジョンさんも付き合ってくださいね?』

 

 

 

「ああ、もちろんだよ。私に出来ることなら協力を惜しまないさ」

 

 

 

 この娘の夢が叶った世界か。きっと誰もが笑顔で過ごせる世界なのだろうな。

 この娘は、おそらく次期アード女王となる。自由な時間は限られているに違いない。

 だが、この経験はきっと地球、アードの未来にとって大きな意味があるはずだ。

 その日が来るまで、この娘と一緒に頑張ろう。カレン達、まだ見ぬ孫世代、そして更に後の世代が、ティナ達と笑顔で過ごせる世界を作るために。

 

 

 

 尚、ジョンを乗せたスターファイターは何事もなく地球へ降下して異星人対策室本部へ着陸した。

 ただ、その際にサポートしていたアリアが“うっかり”ステルスモードを起動しないままモスクワ、北京上空を通過してしまい色んな騒ぎに発展する事になるが、ティリスは笑顔のまま静観した。地球人の動きを観察するためである。

 結果、短期的な影響として胃薬の消費量の桁が増えて各国の製薬会社の売り上げが伸びた。それだけである。

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