星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
朝霧少年が父やティナと別れて一日が経過した。軌道上にある銀河一美少女ティリスちゃん号で一日を過ごした彼は、普段の大人びた姿勢は鳴りを潜め、年相応の純粋な少年として宇宙を満喫していた。何処までも広がる星の海に感激し、母なる青い星地球に感動し、自分が知っている太陽系内の様々な惑星を間近で鑑賞して興奮した。
これは、序列的には二位に当たるフェルの計らいで、太陽系にあるすべての惑星の直ぐ側を航海したためだ。
生命を育む太陽の輝きに目を細め、巨大な木星の威容に圧倒され、美しい土星のリングに魅了され、外縁を回る海王星の幻想的な姿に目を輝かせた。
すっかり興奮してしまった朝霧少年は子供特有の無尽蔵と思われる体力をフルに発揮して、写真を撮ったりレポートを書いたり銀河一美少女ティリスちゃん号の艦内を探検したりと縦横無尽に駆け回る。
そして最後はまるで電池が切れたかのように眠り、用意された部屋ではなくリビングにあるソファーでフェル達と一緒に朝まで眠ったのである。
朝目覚めると、昨日の興奮した自分に恥ずかしくなったが、その好奇心には堪えられず色んなものに興味を示す。そして。
「フィーレお姉さんは、色んなロボットを作ったんだよね?凄いなぁ。僕もプラモデルくらいなら作れるけど、ロボットなんてとても作れないよ」
肉体年齢的にはフィーレと朝霧少年はそこまで変わらないが、若干フィーレの身長が勝っていたので自然とフィーレお姉さん呼びが定着した。
普段は機械以外の事にまるで関心を示さないフィーレであるが、彼女とて女の子。所謂お姉さんぶりたいお年頃でもあるのだ。
そして自分の作品を称賛してくれて目を輝かせる年下の少年を見てどう思うか。
「あれくらい簡単だよ。マコのためになにか作ってあげる」
「本当!?やった!」
地球人の少年による何気無い純粋な言葉が、フィーレのやる気に火をつけた。止めるべきフィオレはそんな妹を微笑ましく思い見守るだけ。フェルはクレアとリーフ、ノームの魔法体系について話し合いをしていて不在。結果、朝霧少年に姉ぶりたいフィーレを丸一日放置することになる。
フィーレは地球の様々なアニメを視聴して膨大なインスピレーションを受けていたが、そろそろ模範ではなくこれらの作品から手に入れた知見を形にしようと考えた。いよいよアード初の人型機動兵器の開発である。
試作する際にフィーレが考慮したのは実用性である。彼女の兵器開発を陰ながら応援しているティリスは、開発するに当たり幾つかの条件を提示した。
それは場所を選ばない汎用性、低コスト、そして高火力である。この三つは相反する要素であり、実現は極めて難しい。だが、ティリスはフィーレの技術力の才覚を信じた。
「クレア姉ぇ、そのゴーレムと同じのを貸して」
「良いですよ」
先ずフィーレが目を付けたのは、クレアが実用性を考えて製作した五メートルのゴーレムである。
アードの艦艇は乗組員が飛ぶことを考慮して、極めて天井が高い傾向がある。
それは格納庫であろうと変わらず、最低でも十メートル以上。大型艦艇ならば五十メートルの高さがある。
トランクを用いた収容は、兵器に適さない。取り出すのに手間が掛かるし、迅速な対応を求められる場面では足枷となる。
だからアードの艦艇は物資類はトランクを利用するが、兵器類は全て格納庫で保管されている。
この条件を考慮する場合、五メートル前後の体高は最適と言えた。広大な格納庫に多数保持することが出来るし、その気になれば通路を利用して艦内を移動できるのだ。
それに、人型故に物資などの運搬作業や補修作業も行える。それぞれに特化した作業ドローンも存在するが、この機体があればほとんどの作業が行える。もちろん特化したドローンに比べれば性能は劣るが、汎用性の高さを示すには充分である。
次に参考にし易いモビ◯スーツだが、どれも大きい。ならばと小さなロボットアニメを探したら確かにあるが、戦闘に特化した機体ばかりだ。
もちろんフィーレが望むような汎用性に長けたものもあったので、それらを参考にした。
つまり、フィーレが目指したのは所謂リアル系とスーパー系の融合である。
地球では人型兵器は非合理的であるとの論調もある。この議論そのものは決して誤りではない。二足歩行そのものが技術的に難しく、巨体は良い的になるだけであるのは否定できない。故にロボット作品では様々な設定を付けて合理性を主張することが多々ある。
さて、この問題に対してフィーレの答えは。
「カッコいいから」
実に素直である。これには理由があり、アード社会にある加工物は家屋を含めて合理性を追求しているのだが、これを使節団に参加したジャッキー=ニシムラ(金メダリスト)は「アードの人工物は総じて極めて合理的だが、同時に面白味がない」と評価している。
地球では機能の追求は当然ながら、建造物や兵器なども性能以外にも見映えが重視される傾向がある。
アード社会は合理性を追求することを優先し、そこにロマンは無かったのだ。故に、その造型美はフィーレを魅了した。
そしてフィーレは同じく五メートルのゴーレムを土台として、得られたインスピレーションを存分に盛り込むことにした。
全体的に角ばった印象を受ける外見となっており、頭部にはメインカメラとしてゴーグルアイを装備している。
フィーレとしては全体的に丸みを帯びた形状にしたかったが、あくまでも試作品ということで妥協することにした。
関節部以外には、スターファイターに使用されている軽量強固なアード結晶を用いた装甲が張られた。
機体各所には姿勢制御スラスターを装備。またこれらは水中での運用も想定して、スクリューに切り換えることが可能となっている。
とはいえ流線型ではない機体での水中活動はやや難があるが、それはアードの海洋技術の少なさゆえである。この問題は、今後の交流によって知見を得られると判断して無視した。
メインスラスターはスターファイターのものを小型化。性能低下は免れないが、最高速度は星間航行速度から僅かに下がる程度で、地球上に存在する最高速度を軽く上回る。
腕部のマニピュレーターには対応した様々な兵器や機材を運用可能とした。
そして本機最大の特徴は、背部にあるフライトユニットであろう。大きな翼を持ち、まるで天使を彷彿とさせる姿は見るものに大きな印象を与えるだろう。
これらを盛り込んだ試作機を、銀河一美少女ティリスちゃん号へ戻ったティナが見て一言。
「ウィ◯グガン◯ム?いや、パト◯イバーに見えなくもない。なにしてんの?」