星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
異星人対策室のジョン=ケラーだ。フィーレと話をしていたドクターが戻ったのだが、彼から知らされた情報に強い衝撃を受けた。軌道エレベーターは長らくSFの産物と言われていたが、2000年代初頭にカーボンナノチューブ等の素材となり得る技術が確立され、実用化が現実味を帯びてきた。
事実統合宇宙開発局では、具体的な建設計画立案に向けた研究が進められていたからね。
だが実現には様々な壁が立ち塞がっていて、具体的な実現時期は未定のままだった。
そこにフィーレの提案だ。地球人が自分の手で実用化するわけではないから悔しい気持ちもあるが、宇宙開発は急務だ。
ティナ達の調べだと、火星と木星の間に広がる小惑星帯には地球が必要としている資源が文字通り豊富にあることがわかっている。これらを地球へ運び込めば、大量の資源が手に入る。
さすがに石油は無いみたいだが、代用は可能だ。軌道エレベーターがあれば、宇宙開発は一気に加速するだろう。
「ドクター、フィーレには何と?」
「即答しておいたよ。私はこれから学会に手を回して説得する。君も政府に手を回してくれないか?」
「もちろんです。統合宇宙開発局については、ジャッキーに任せましょう」
私は冷遇されていたし、今の立場にあるのも裏切りによるものだと考えている人も少なくない。悲しいが、これが現実だ。
だが、ジャッキーならば今でも顔が利く。いや、顔が利くように彼が立ち回っていると言うべきか。こんな時に備えているのだろう。事実彼は異星人対策室と統合宇宙開発局の架け橋のような存在だ。
だが、軌道エレベーターを造るとして場所を選定しなければいけない。赤道直下が理想だが、軌道エレベーターを造るとなれば莫大な富を生む。間違いなく荒れるな。
かといって合衆国領内では難しいし、富を独占していると批判に晒される。ハリソン大統領が進める地球統一連合の足枷にしかならない。さて、難しいものだ。
「ケラー室長、我が父祖の国で動きがありました。ちょっと不味いですよ」
駆け寄ってきたジャッキー=ニシムラ(ノーパン)の差し出した端末に映し出された文章を読んで、ジョン=ケラーは青ざめた。
「しょっ、証人喚問だと!?」
同じ頃、日本で開かれている国会では世界融和党が中心となり、幾つかの野党勢力が共同で富士山麓で造られたヤ◯トやガン◯ムなどのロボットシリーズについての重要参考人の証人喚問を要請したのである。
対象は当然ながらティナ達であり、それを国会の場へ呼び出せとの要望である。参考人招致と違い、証人喚問には法的な拘束力もあり罰則もある。当然ながら与野党を含めて大激論となった。
国会へ招待するならば分かるが、証人喚問として呼び出すのだ。双方の文明レベルの差を見れば無謀以外の何ものでもないが、審議の対象となった理由は最大野党である共栄党が要請に同意したからである。
もちろん共栄党としては呼び出すなどあり得ないし、出来ないと判断しており、与党を攻撃する材料として便乗したに過ぎない。
「国内で何の許可もなく無断であのような兵器群を勝手に製造し、周辺諸国へ不安をばら蒔き東アジア全体に無用な緊張を生じさせたのです!
相手が誰であろうと、説明責任を果たすべきと考えるのは法治国家として間違っているでしょうか!?」
世界融和党の迫水議員は国会でそのように吠えた。理屈は分からないでもないが、相手はそもそも地球外生命体である。
地球の法に従わせる根拠など現時点では存在しない。まして侵略者ではなく恐ろしく友好的な異星人なのだから。
この対処に与党側も頭を悩ませていたが、突如秘書が現れて椎崎首相に何かを囁いた。それを聞いた彼女は目を見開き。
「議長!休憩を!休憩をお願いします!」
「総理!逃げるのですか!?」
「そうではありません!議長!お願いします!」
「分かりました。では十分間の小休止を許可します」
議長の言葉を受けた瞬間、椎崎首相は野党の追及を無視して慌ただしく議場を後にして控え室へ駆け込んだ。そこには。
「はろろ~ん☆ティリスちゃんだよ☆美月ちゃん元気だった?☆」
「おつかれー」
ティリスとフィーレの二人であった。
「ティリスさんにフィーレちゃん!?」
事態を察した椎崎首相は直ぐ様人払いを済ませた。アリア経由でリアルタイム中継を見ていたティリスは、わざわざフィーレを連れてきたのだ。
「フィーレちゃんを国会の場に!?でも、それは……」
「向こうが呼び出したんだから、出てあげるだけだよ☆大丈夫、フィーレちゃんは人見知りなところはあるけど、意外とこういう場では物怖じしないから☆」
「ん、発表会に比べたら簡単。それにあれを造ったのは私だもん」
「それは有り難いけれど」
椎崎首相の脳裏に過るのは、フィオレの存在である。妹であるフィーレを溺愛しているのをよく知っているからこそ、パリの二の舞にならないか心配になったのだ。
「だいじょーぶ、おねーちゃんにも遠慮無くやれって言われてるし」
「私も裏で控えているから任せてよ☆美月ちゃんは、この状況を最大限利用することを考えれば良いからさ☆」
「……分かりました。でも、本当に良いの?多分相手はフィーレちゃん相手に強い言葉を使うわよ?」
「……?何が怖いの?声が大きな動物を相手にするようなものだよね?」
フィーレの意外な言葉に椎崎首相も優しげな笑みを浮かべる。確かに考えてみればそうなのだ。日本の野党議員を恐れる理由がフィーレには一切存在しない。
「分かったわ。私も一緒に居るから、どんどん質問に答えていって。大丈夫、何を聞かれても素直に答えてくれて良いから」
「分かった」
小休止を挟み、審議が再開されようとしていたがその時議場にどよめきが走った。何故ならば、椎崎首相と一緒に議場へ現れたのはリーフ人のフィーレなのだ。
まさか呼べるとは思いもしなかった最大野党の共栄党が、ここで尻込みするのも無理はない。彼等とて馬鹿ではないのだ。
双方の差は正しく理解しているし、要請を出しても呼べないだろうからと考えた故である。
「皆様のご要望にお応えして、フィーレちゃんがわざわざ来てくれました。日本国首相として来日を心から歓迎すると共に、用件を証人喚問から参考人招致に切り替えたく思いますが、宜しいですね?」
反対する声は世界融和党のみであった。そしてフィーレは椎崎首相に促されて発言台へ……高さが足りないから羽根をパタパタと羽ばたかせて浮き上がり、目をギラギラと光らせている世界融和党の議員達を前にして。
「フィーレだよ、よろしく。で、なに?」
真正面から喧嘩を受けて立つのであった。