星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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フィーレ、国会でお喋りする

 国会議場には困惑の空気が流れていた。富士山麓に造られた様々なアニメのロボットや戦艦の説明責任を追求するために、野党勢力が製作者の証人喚問を突き付けていたら、まさかフィーレ本人がやって来るとは思いもしなかったのだ。しかも本人は緊張することもなく気安い雰囲気であり、まして幼子なのだ。

 ここで下手に追及などをすれば大問題に発展し、引いては支持率の低下と選挙の不利となる。そう判断した最大野党の共栄党は直ぐさま静観の姿勢を決めた。

 

 

 

「突然の事ではありますが、これより質疑応答を行います。事前の審議もありませんが、ここは特例としてこのまま続行します」

 

 

 

「おじーちゃん、私はここに居ればいーの?」

 

 

 

「ええ、そこに居てください。これから色々な質問がありますので、自由に答えてください。貴女には言えないこと、言えば不利になることは黙秘する権利があります」

 

 

 

「よく分かんないけど、いーよ」

 

 

 

 議長とフィーレが簡単に言葉を交わして内容を確認。フィーレとしては、質問されたら答えれば良いと言われたので気楽なものである。

 対する議長は緊張感を増した。質問者を募ると議員達が次々と挙手するのだが、目をギラつかせた世界融和党の面々を当てるべきか悩んだのだ。

 彼等も国会議員であり質問する権利は当然あるのだが、先程から見てどう考えても問題になりそうな質問を仕掛けそうなのは明白である。果たして原則に従うことで国益を損なう可能性があるならば、それでも原則を守るべきなのか迷いが生じた。

 思い悩む彼の下へ秘書が忍び寄り、密かに言伝てを行なった。それは椎崎首相からの伝言であり、世界融和党の議員を指名しても構わないという内容だった。

 確認のため議長が椎崎首相へ視線を向ければ、彼女が力強く頷くのが見えたので少しだけ気楽になった。

 

 

 

 とは言うものの、いきなり見えている地雷を踏み抜く程酔狂ではない。そこで挙手している国会議員達の中から、先ずは穏便な質問をするであろう人物を見付けた。

 

 

 

「では、革新党の新垣君」

 

 

 

 指名されたのは四十代前半の議員新垣信二。少数政党ながら与党寄りで知られる革新党の党首である。

 

 

 

「革新党の新垣です。フィーレさんにご質問したいのですが、富士山麓で造られたロボットや戦艦等ですが、今後も更に造る予定はありますか?」

 

 

 

「ん、インスピレーションが湧いたら造る。センター長のおじさんにも許可貰ってるし」

 

 

 

 センター長とは地球外技術研究センターの豪徳寺センター長の事である。まあ、彼が断る理由など無いのだが。

 

 

 

「なるほど、つまり不定期に造る可能性があるとの事ですね。そちらについても所有権を頂けるので?」

 

 

 

「ん、ほしいならあげるよ」

 

 

 

「それはありがたい。いや、実はあれらの作品は観光資源として有効でしてね。既に相当な利益を叩き出しているのですよ。今後も期待したいところです」

 

 

 

 豪徳寺センター長の音頭によって、フィーレが作った作品群は周辺をドームのような建造物で覆い、周辺環境からの保護と一般入場を許可した観光地として整備したのだ。

 もちろんドームはフィーレが一日でクラフトし、更にセキュリティもアリア管轄である。流石にヤ◯トについては野晒しになってしまったが。

 当然ながらアニメに登場したハリボテではない本物(?)のロボット群は世界中の注目を浴び、連日大勢の観光客が押し寄せて周辺地域は未曾有の好景気に沸いている。無論工作員の類いも含まれていたが、全てアリアが探知。日本の警察機関に情報を流して対処している。

 

 

 

「日本って里が儲かれば、美月姉ぇが喜ぶ。そしたらティナ姉ぇも喜ぶ。気が向いたらまた造るよ」

 

 

 

 国会議員とパタパタと浮かぶ異星人の幼子の対談は、国会にある種の和やかな空気を生み出していた。

 その後も何人かが質問を飛ばしたが概ね好意的であり、なにより日本に莫大な利益を生み出しているのだ。

 あれらの作品群が生み出す経済効果は、日本にとっても大きな利益となる。存在を否定する要素はほとんど無かった。一部以外は。

 

 

 

「世界融和党迫水君」

 

 

 

 遂に来てしまった。少なくとも議場に居る議員の大半はそう思った。出来れば質問の時間を与えたくなかったが、公平性を守るためにはそれも出来ない。出来れば穏やかに、そう願ったが。

 

 

 

「あっ、里長を泣かせたおばちゃん」

 

 

 

 フィーレの先制パンチが炸裂したのである。

 迫水議員(63歳)は頬をひきつらせながらも努めて笑みを浮かべ。

 

 

 

「こほんっ!先ず、地球人には年長者を敬うという素晴らしい文化があります」

 

 

 

「そっか、私はリーフ人だよ。それで?」

 

 

 

 いきなり一刀両断である。

 

 

 

「郷に入っては郷に従えという言葉を御存知ではない?」

 

 

 

「地球の文化はすごいし、みんな喜んでくれた。なにが問題なの?」

 

 

 

「重要なのは、貴女が許可無く作った兵器に対して、不安を抱いている人々が居るという事実なのです!

 あの兵器の存在を危険視する声もありますし、周辺諸国と無用な緊張を生み出しているのも事実!どう責任を取るおつもりですか!」

 

 

 

 それは普段与党側へ行っているものと同じ、まさに糾弾であった。

 強い言葉に最大野党の共栄党党首は青ざめた。

 だが、対するフィーレは気にすること無く淡々と口を開いた。

 

 

 

「なんで不安になるの?あれが兵器だから?」

 

 

 

「そうです!戦争のために使う兵器を持つなんて、信じられない暴挙です!」

 

 

 

「武器は護るためにあるんだよ、おばちゃん」

 

 

 

 アード人とミドリムシ以外のリーフ人にとって、武器とは護るための道具に過ぎない。地球にある非武装の議論はそもそも存在しない社会である。

 なによりセンチネルの脅威があるのだ。一部の武器アレルギー、或いは戦争アレルギーと揶揄される思想が生まれる余地もない。

 

 

 

「なにが護るためですか!武器を持てば戦争になります!武器があるから戦いが起きるんです!なんでそれが分からないの!?」

 

 

 

「じゃあさ、誰かが攻めてきたらどうやって護るの?黙って殺されるの?」

 

 

 

「私達には理性があるのよ!対話よ!話し合いで解決することが出来る!暴力に訴える必要なんて無いのよ!武器があるから悪いの!武器なんか無ければ争いは起きないのよ!」

 

 

 

 対話など不可能であり、問答無用で皆殺しにしていくセンチネルを知るフィーレからすれば意味不明な論理である。

 フィーレは迫水議員の言葉を聴きながら、徐にブレスレット型の端末を弄る。

 

 

 

「~……~……?」

 

 

 

「は?なんと?」

 

 

 

 フィーレの口から発せられたのは、リーフ語である。アード語以上に難解で、そもそも地球人が認識できない波長が含まれているので、地球の言語学者達は翻訳や習得は不可能であると早々に匙を投げた言語である。

 再び端末を弄ったフィーレは首をかしげて。

 

 

 

「対話、出来た?」

 

 

 

 不思議そうに訪ねた。

 

 

 

「貴女が翻訳を切ったからでしょう!?大人をバカにするのも大概にしなさい!」

 

 

 

 迫水議員は激昂するが、椎崎首相を含めた一部の者達は直ぐにフィーレの真意を見抜いた。

 彼女は幼い故に難解な言葉を使わず、相手にその気がなければそもそも対話は成り立たないという、単純な真理を実践してみせたのだから。

 

 

 

「それじゃあ、私達が翻訳しなきゃお話は出来ないよ?おばちゃんの言ってる対話は、相手が無視したら無理じゃない?」

 

 

 

「ーーーー!!!」

 

 

 

 迫水議員が声にならぬ奇声をあげた瞬間、椎崎首相が立ち上がり、フィーレと手を繋ぐ。

 

 

 

「議長、フィーレちゃんも疲れていますから質問はここまでにしたいと思います」

 

 

 

 返事を待たずにフィーレを連れてさっさと議場を後にしたのだった。

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