星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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質疑応答の影響

 議場を慌ただしく後にした椎崎首相は、そのままフィーレの手を引いて国会議事堂にある政府の控え室へ駆け込んだ。周辺は厳重な警備によって護られ、一切の人払いを済ませた室内でティリスが笑顔で二人を出迎えた。

 

 

 

「フィーレちゃん、美月ちゃん。お疲れ様~☆」

 

 

 

「おつかれー、里長」

 

 

 

「ヒヤヒヤしたわよ、全く。あのままだったら迫水議員が手を出していた可能性があったわ」

 

 

 

「出させても良かったのに」

 

 

 

「駄目ですよ、ティリスさん。それはティナちゃんの頑張りを台無しにしてしまう可能性があるし、国会の場で血を流すわけにはいかないわ」

 

 

 

 ヒステリックの気質がある迫水議員が激昂したのだ。あのまま激情に任せて、フィーレに手を出していた可能性が非常に高かった。

 その場合フィーレの障壁に防がれていただろうが、軌道上にある銀河一美少女ティリスちゃん号で中継を見守っていたフィオレが静観する筈もない。

 その意味でも、椎崎首相は迫水議員を含む世界融和党の議員達を護ったことにもなるのだ。

 

 

 

「難儀だねぇ、美月ちゃんからしても邪魔なアオムシだろうに☆」

 

 

 

「我が国は法治国家ですし、掃除を大切なお客様であるティリスさん達に任せるわけにはいきませんからね。

 それに、我が国でもあのような主張は少数派に過ぎません。確かに彼等の声は大きなものがありますが、世論に与える影響はありませんよ。

 ただ、メディアがどう報じるか」

 

 

 

 メディアは伝統的に左側へ傾いているし、なにより政府を批判するのがメディアの仕事であると誤った認識を持つ人間も少なくない。

 

 

 

「あはは、それは心配しなくて大丈夫だよ☆」

 

 

 

 その日、フィーレの飛び入り参加もあって久しぶりに日本も沸いた。野党よりの主要メディアは巧妙に編集し、迫水議員の失態や消極的にしか動かなかった共栄党などの野党を庇う内容を放送しようとしたが。

 

 

 

「おい!なに間違えてるんだ!?直ぐに止めろ!」

「駄目です!どの器具も、操作を一切受け付けないんです!」

 

 

 

 想定外だったのは、流す筈だった編集した映像ではなくフィーレと迫水議員のやり取りをありのまま流してしまったことである。

 更に全ての機材が一時的に一切の操作を受け付けなくなり、結果主要メディアのニュースを主な情報源としている層にも真実をありのまま暴露してしまったのだ。世論が沸くのも無理はない。

 何故ならば、中身は異星人の幼子に言い負かされて発狂する初老の女性という構図なのだ。これで沸かない方が不思議だ。

 トドメとばかりに、今回の証人喚問についても共栄党が協力したため実現してしまった事実も暴露されてしまった。

 

 

 

『あいつらやりやがった!』

『あいつらふざけてんのか!?』

『国どころか地球を滅ぼすつもりかよ!?』

『あれで騒いでる連中なんかスルーで良いだろ!』

『パリの二の舞をやるつもりか!?』

『思想は自由だけど、大多数の無関係な国民を巻き込むんじゃねぇよ!』

 

 

 

 ネット上は大荒れとなり、共栄党は火消しに躍起となって政権を攻撃する余裕など無くなった。

 だが世界融和党だけは迫水議員を称賛し、フィーレを無礼と非難する声明を発表して強硬姿勢を貫いた。

 この声明に支持者達は異星人にも屈しない気高さと称賛したが、大多数の国民からすればそもそも相手は地球人ではなく、まして幼子なのだ。そこに常識を求める方がどうかしているとの論調が占めた。

 

 

 

「ごめんなさい、ティリスさん。恥ずかしいものを見せちゃったわね」

 

 

 

 謝罪する椎崎首相だが、ティリスは優しげな笑みを浮かべていた。

 

 

 

「良いんだよ、美月ちゃん。むしろ安心したかな☆」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「ああいった主張が出来るのは、ここが平和な証なんだよ。それはとても貴重で大切なものだからね☆」

 

 

 

 戦いで大切なものをたくさん失ったからこそ、例え仮初めとしても自由が保証されている平和な日本を尊く想うティリスの言葉には不思議な重みがあり、椎崎首相はただ頷くしかなかった。

 ちょっとしんみりした空気を解消したのは、フィーレの腹の虫であった。

 

 

 

「里長ー、お腹空いた」

 

 

 

「ありゃりゃ、フィーレちゃんまた御飯食べてないな~?☆」

 

 

 

「それなら直ぐに手配するわ。近くのレストラン、空いてるかしら?」

 

 

 

 直ぐに端末を取り出す椎崎首相を見て、ティリスは笑顔のまま口を開いた。

 

 

 

「あー、良いよ良いよ☆たまには普通の食べ物を食べてみたいから☆」

 

 

 

「普通の食べ物?つまり、一般市民が食べるようなものね?」

 

 

 

 接待される立場であるティリス達は高級料理の数々を口にしてきたが、だからこそ所謂庶民の味に関心を持ったのだ。

 普段食べている合衆国の料理はボリュームもあるが味も濃い傾向があり、そもそも無味無臭の栄養スティックが主食であるアード人やリーフ人の味覚には刺激が強すぎた。その点日本の料理は合衆国に比べて味が薄い傾向があり、旅館やすらぎの料理も好ましく思えたのだ。

 

 

 

「そうだよ☆ティナちゃんが詳しいだろうし、呼んでくるね☆」

 

 

 

「あっ、待って!」

 

 

 

 止める間も無くティリスはフィーレを連れて転移してしまった。椎崎首相は猛烈に嫌な予感がして、ハリソン大統領から融通してもらったジョン=ケラー愛用の特製胃薬を取り出すのだった。

 

 

 

 そして、都内の某所。平日のお昼時であり、大勢の企業戦士達が午後からの活力を得るために飲食店に集っていたが、ある場所だけは別の意味でごった返していた。何故ならば。

 

 

 

「なにこれ美味しい!?☆」

 

 

 

「お肉だから濃いのかなと思いましたけど、優しい味付けですね」

 

 

 

「美味美味。おねーちゃんやクレア姉ぇにも持って帰ろーよ」

 

 

 

「いいね、持ち帰りも頼もう!やっぱり庶民の味方は牛丼だよね!安くて美味しくて早い!」

 

 

 

 目をキラキラとさせながら彼女達が食べているのは、庶民の味方牛丼である。ティリスによって呼ばれたティナはフェルと一緒に来日。

 庶民的な食べ物を食べたいとの要望を受けて、前世でも食べていた牛丼を勧めたのである。

 肉料理でもあるのだが、甘く優しい味付けは薄味を好む彼女達の口に合った様子。ティナ個人としても前世の懐かしい味が堪能できて感動していた。彼女達は存分に食事を楽しんで胃を満たした。

 

 

 

 いきなり話題の異星人達が来店した店は半ばパニックになって更に大勢の群衆が集まり、混乱を避けるために急遽動員された警官達や関係各所の長、そして椎崎首相の胃を痛みで満たすことになったが、いつものことなので省略する。

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