星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
朝霧さんご一家を乗せて太陽系を後にして二日後。ハイパーレーンを航行する銀河一美少女ティリスちゃん号では、大きな変化が起きていた。それは。
「朝食の献立は鮭の塩焼き、漬け物、焼き海苔、お味噌汁、ご飯となります。
それと、こちらはちょっと洋風ですがウインナーとサラダもあります。質素な内容ですが、問題ないでしょうか?」
「ありがとうございます!朝はこんな感じで大丈夫ですよ!」
「美味しそうですね」
「おー……美味しそう」
「あら、彩りが良いじゃない」
「御馳走だね☆」
「これが地球の料理……ありがとうございます!」
テーブルに並べられた和朝食に皆目を輝かせている。もちろん作ってくれたのは朝霧さんの奥さんで旅館やすらぎの女将さんである瑠美さんだ。
初日からただお客さんとして過ごすのは抵抗があると言って、母艦のキッチンで悪戦苦闘してたんだよね。僅か一日でものにしちゃったのは驚いたけど。
もちろんもしかしたら使うかもしれないと思って、地球の一般的な厨房を再現してたんだけどさ。専用のドローンにテキパキと指示を飛ばして、たくさん食べる私達にも充分な量の料理を作っちゃうんだから。
「お掃除などは文化的な違いがありますし、たくさんのロボットさん達が詰めていますから。せめてお食事で皆さんをおもてなしできればと」
「本当に有り難いです!」
どうやら瑠美さんは、このためにたくさんの食材をトランクに詰め込んで来たらしい。
今回の船旅とアード滞在中も充分に足りる量みたいで、手配するのが大変だったと朝霧さんが笑ってた。
私達としても瑠美さんの手料理をいつも食べられるから大歓迎だ。
「フェルさん達リーフの方々は肉類を余り好まない様子でしたので、新鮮な野菜を使ったサラダも毎食用意致しますね」
「本当にありがとうございます。とても美味しいです」
フェル達もサラダを美味しそうに食べてる。
「お姉さん達、たくさん食べるんですねぇ……」
あっ、マコくんがビックリしてる。
「マコ、アンタもたくさん食べないと大きくなれないわよ。お母さんが美味しい料理を作ってくれるんだから、しっかりと食べなさいよ」
「はい、フィオレお姉さん」
うーん、流石フィオレ。子供の相手に慣れてるなぁ。
「いや、ティナさん達は予想していましたが、まさか新しい方がいらっしゃるとは思いませんでした」
困ったような笑顔を浮かべている朝霧さんが見ているのは、クレアだ。彼女のことは正式に発表していないし、凄く驚いていた。
ただ、昨日は艦内の案内とかでバタバタしていたから、さっき初めて紹介したんだよね。
「ごめんなさい、クレアのことは私達も完全に理解した訳じゃなくて、地球の皆さんを混乱させないように紹介していなかったんです」
「事情は理解していますよ、ティナさん。改めて彼女を紹介してくださっただけでも有り難いことです」
日本国外務省所属の外交官で、異星人対策室の外務顧問、日本国地球外技術研究センター特派員の朝霧 武雄だ。我ながら肩書きが増えたものだ。やることは変わらないし、その分給料も増えたから文句はないがね。
さて、現在私達一家はティナさんの母親であるティアンナ女史の招待を受けて銀河一美少女ティリスちゃん号へ招かれ、惑星アードを目指して航行中だ。
私は二度目になるので、ある程度慣れているが妻や息子がどんな反応を示すか心配していたのだが……どうやら杞憂に終わったみたいだ。
いつの間にかトイレが四ヶ所に増設されていたのは驚いた。前回は一ヶ所しかなくて少し不便だったが、ティナさんの配慮だろう。彼女達には必要ない設備を、わざわざ用意してくれる厚意は有り難い。
妻である瑠美は楽しげに皆さんの食事を造り、お世話をしている。誠は日々ティナさん達と一緒に様々なものに触れて楽しんでいる。我が妻子ながら適応力の高さに驚かされる。
今回の旅路で一番驚かされたのは、ノーム人であるクレアさんの存在だ。
以前インターネット上に投稿されて大騒ぎとなった未知の異星人。彼女について出来る限りの情報を集めるようにと、外務省から密命を受けている。
まあ、椎崎首相がティナさんにクレアさんについて出来るだけ教えてほしいとお願いしているので、密命の意味はない。
外務省内部には異星人外交の主役が自分達じゃなくて、窓際族だった私や首相である現状を面白く思わない勢力が存在するのだろう。異星人外交にまで派閥争いを持ち込まないでもらいたいものだよ。
色々な思惑はさておき、私はクレアさんの負担にならない範囲を慎重に見極めながら彼女と交流して情報収集を行なっている。
もちろん本人は当然として、ティナさん達の了解を得た上でだ。
その際に問題となったのが、コミュニケーションだな。ティナさん達同様デバイスを通じて日本語に翻訳されているのだが、時折聞き取り難い言葉が混じることがある。
『現在ノーム語について解析中であり、今もまだ翻訳できない部分が存在します』
「そうなのですか……いや、それなら仕方ないですね」
ノーム人はアード人やリーフ人にとっても未知の存在だ。それに彼女を保護して一ヶ月も経過していないらしい。
その短期間で日常会話にほとんど支障がないレベルで言語の翻訳を済ませてしまったアードの技術力に畏怖を覚えたが、完全な異星人であるリーフ人と共存している故にノウハウがあるのだろうな。
しかし、何度見ても不思議だな。アニメ等の創作物には差程関心が無かったが、ティナさん達やフェルさん達の容姿が天使や妖精に似ていることもあって、神話やファンタジーものについて少し勉強したが……クレアさんの容姿も共通点が多い。
ファンタジーの世界に存在するエルフかと思ったが、背が低い事もありネット上ではドワーフと認定する者が大勢を占めている。
神話やファンタジー世界の住民と容姿が似ている……いや、そっくりだとは。何らかの運命を感じるな。ご都合主義と取るべきか、或いはこれこそが宇宙の神秘と思うべきか。
まあその辺りは個人の感性に任せるとして、服装は何故かサイバーパンク風だがドワーフと想定するならば。
「クレアさん、こちら地球で生産されたお酒になります。どうでしょうか?」
リーフは分からないが、少なくともアード人に飲酒の習慣はない。ただアルコールを分解する力はあるらしく、或いは飲酒文化は廃れてしまったのかもしれない。
それは置いておくとして、今回はあくまでも招待された身ではあるが、新たな交易品を探るために様々な品物を用意してある。その中には、酒蔵業界から提供された酒類も含まれている。
特に熱心なのがドイツだ。ヨーロッパ方面の対アード交流を主導しているのはブリテンだから、対抗心もあるのだろう。
取り敢えず政府の許可も得ているしドイツ産のビールを差し出してみたが……さあ、どう反応する?
「お酒……酒精ですか!?」
うぉっ!?予想以上の反応だ。目を輝かせたクレアさんは私の手からビール瓶を受け取ると、そのままラッパ飲みで一気に飲み干してしまった。
更に期待したような目を向ける彼女に抗えず、あっという間に持ち込んだ酒類の一部が消えた。地球人ならば致死量を軽く超えているのだが……ノーム人恐るべし。酒も重要な交易品になりそうだな。