星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
素足を滑らかなシーツが擦る気持ちの良い感覚と、じんわりとした温かさに包まれたベッドの中で私はゆっくりと意識を覚醒させていく。アードへ向けてハイパーレーンへ飛び込んで四日目の朝を迎えた。
今は窓から外を見ても極彩色の空間しかないし、目に悪いから基本的にはハイパーレーンを航行してる最中は全ての窓は隔壁で塞がれているけどさ。
それは置いておくとして、シーツをスリスリすると気持ちいいのは前世と同じだ。つまり、そこに種族の違いはない。
うん、ベッドそのものもフカフカしていて寝心地が良かった。
今回私が使ったベッドは、アードのものじゃなくて地球で作られた特注品だ。
大西洋で助けた人の中に合衆国の大手家具メーカーの会長さんのお孫さんが居たみたいで、助けてくれたお礼がしたいと合衆国政府を通じて連絡してきたんだよね。
助けるのは当然だしお礼が欲しい訳じゃないけど、こんな時は素直に受け取るのがお互いに納得できるからね。
で、調べてみたら相手は世界的に有名な寝具の会社だったみたいで高級ホテル御用達らしい。せっかくだから人数分のベッドをお願いしてみたんだ。
メーカーさんは合衆国政府を通して異星人対策室からアード人やリーフ人の寝具に関するデータを提供されて、特注品としてベッドを作ってくれた。マットレスはビックリするくらいフカフカで、シーツとかも信じられないくらい触り心地が良い。
ただ、アードの特殊なマットレスは再現できなかったみたいで仰向けに眠ることは出来なかったけど問題はない。それ以外はアード製のベッドを軽く越える寝心地を与えてくれた。あくまでも私個人の感想だけどさ。
ゆっくりと目を開けると、フェルが穏やかな寝顔が見えた。そう言えば特注ベッドに興味を持ったフェルと一緒に眠ったんだっけ。シングルベッドだけど私達二人が一緒に寝る余裕はある。
翼や羽が痛いから仰向けに眠れなかったから向かい合って眠ったんだよね。寝相は……まあ、お互いに悪くない。
と言うか地球で寝泊まりする間に改善したんだ。下手に寝返りなんかしたら痛みで目が覚めちゃう……いや、飛び起きてしまうしね。経験者は語るってやつだよ。
最近は色々あって、フェルと一緒にゆっくり過ごせてないなぁ。今回の帰路も、マコくんのお世話をフェルとフィオレに丸投げしちゃってるんだよね。
もちろん朝霧さんや瑠美さんも居るんだけど、やっぱり慣れない宇宙艦艇の生活は大変みたいであんまり余裕がない。
出来るだけ快適に過ごして貰えるように色々整えているんだけど、やっぱり限界がある。地球人に合わせて改装するかなぁ。でもこの艦は軍艦だ。センチネルの脅威がある以上武装を弱体化させるわけにはいかない。
アードの軍艦はAI管理もあって乗員が少なくて済むけど、センチネルに対抗するために重武装化してるから居住性は低いんだよね。
この銀河一美少女ティリスちゃん号だって五百メートルの巨体なのに、収容人数は五十人以下なんだ。ハリソンさんの依頼もあるし、交流のことを考えると大勢を運べる船が必要になる。
ぼんやりと考えながらフェルの寝顔を堪能していると、彼女もゆっくりと目を開けて笑顔を浮かべてくれた。
「おはようございます、ティナ」
「おはよー、フェル。特製のベッドはどうだった?」
「マットレスが少しだけ固かったですけど、他はとても気持ち良かったです」
「それは良かった。ぐっすり眠れるのが一番だよね」
ふむ、固さ以外に不満はなさそうだね。あとはばっちゃん達からも使い心地を聞いて、結果を伝えなきゃいけないからね。
ベッドでのんびりお喋りをして、そろそろ起きようかと二人で身支度をして部屋を出たらばっちゃんが待ち構えていた。
「昨晩はお楽しみでしたね☆」
「だからどこで覚えたのさ、ばっちゃん」
「電脳世界の守護者から☆」
「それ自称だからね?本気にしないでよ?」
またネットの紳士淑女の皆さんだなぁ?ほら、フェルも首を傾げてるし。可愛い。
「ティナちゃん達をもっと知って貰うために、同人誌?とか言う本を出したいって要望が届いたから許可しておいたよ☆ティナフェルは尊い、尊死するって発狂してたよ。人気者だね☆」
「なにしてんの?」
「R18?も良いかって聞かれたから、良く分からないけどティナちゃん達の不利益にならないなら良いよって応えておいたよ☆」
「本当になにしてんの!?」
私とフェルの同人誌だけでも恥ずかしいのに、R18とか拷問ですか!?
……いやまあ、需要はあるんだろうなぁ。
「ティナ、同人誌?とはなんですか?それに、R18とは何らかの記号でしょうか?」
「うーん……説明が難しいな。自分で作った本かなぁ」
はぁ……本当のことを教えるわけにはいかないし、これで誤魔化しておこう。
日本に居る間何気なく調べてみたんだけど、今は新聞でさえ大半が電子書籍だ。紙媒体はほとんど残っていなかった。
まあ、私が生きていた時代からペーパーレスが叫ばれていたし、現代は更にネットワーク化が進んだサイバーパンク一歩手前みたいな社会だ。紙媒体はこのまま無くなるのかな。
……現実逃避はこれくらいにしよう。美月さんが目を光らせてくれているだろうし、過激なのは規制してくれるはずだ。
ちょっと恥ずかしいけど、私達の容姿を考えればその手の活動が活発になるのは避けられない。むしろ美月さんがコントロールしてくれた方が安全だ。
「ばっちゃん、地球には色んな文化があるんだから気をつけてね。私は美月さんにこの件を送るから。フェル、先に談話室へ行ってて。ちょっとブリッジでメッセージを送信してくるから」
「めんご☆」
「分かりました。朝食の時間に遅れないようにしてくださいね」
「瑠美さんが悲しむからね、分かってるよ」
私は手早くブリッジでばっちゃんから聞いた話をメッセージとして美月さんへ送信した。ただ、文化に疎いからってばっちゃんがこんなミスをするかな……?
……まあいっか、考えても分からないことは考えないようにする。ばっちゃんの事だから、必要なことなんだろうし。
私はその日植物園でフェルと二人きりの時間を過ごした。自然に包まれて、お喋りしてお昼寝して……穏やかな一日だったよ。
何かマコくんがフィーレと何かしてたけど……地球じゃないし、いっか。現実逃避とも言うけど。