星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
えっと、朝霧外交官の息子で偶然ティルちゃんを助けたただの地球人朝霧 誠です。ティナさん達と一緒に太陽系を出発して一週間、無事に惑星アードへ辿り着くことが出来ました。
大きな環があるアード、大きな宇宙ステーションに起動エレベーター、巨大な世界樹と不思議な転送ポート、そして自然豊かなドルワの里。建て続けにワクワクするものを見ることが出来て、ちょっとはしゃぎ過ぎてしまったのは良い思い出。
今回は招待された立場だけど、父さんと母さんが一緒に居るから、招待してくれた皆さんや二人の顔を潰さないように気を付けなきゃ。
そう改めて覚悟を決めたのに、直ぐにティルちゃんから体当たりされて木の下へ落ちた時は生きた心地がしなかった。柔らかいクモの巣みたいな光のクッションは気持ち良かったけど、出来れば二度と体験したくないかな。ティルちゃんは大喜びだったけど。
「マコー、ちゃんと来てくれて嬉しい!」
「あはは、僕も嬉しいよ」
何だろう、地球で会った時より成長してるような気がする。背だってもっと低かったはずだけど、今は僕の首くらいまでは背が高くなってるし、翼もちょっぴり大きくなったような気がする。
……いや、気のせいじゃない。咄嗟に地球で撮った写真を見てみたけど、明らかにティルちゃんは成長してる。あれから一ヶ月も経っていないんだけど……いや、もしかしたらアード人は子供の成長が早いのかもしれない。父さんに聞いてみよう。
「マコ!里を案内してあげるね!」
「それは嬉しいけど、僕は飛べないから行けない場所があると思うよ」
アード人は樹上生活だと聞いていたけど、本当に木の上に家を作ってる。地球じゃ見られないようなとっても大きな木がたくさん集まっていて、そこに集落を作ってる感じかな。もっと小さい頃に見た屋久杉が小さく感じるんだもん。
「だいじょーぶ!みんなで準備したんだから!見て!」
ティルちゃんが指差した先を見たら、確かに木と木の間にたくさんの吊り橋が掛けられてる。ほとんどは真新しい感じで、僕達が来ても大丈夫な様に準備してくれたんだろうなぁ。
結構な高さがあるからちょっと怖いけど、里全体にあのクッションが用意されているから落ちても大丈夫だってティナさんが言ってた。それに、怖い想いはあるけどそれ以上にワクワクしている自分が居る。
「分かった、一緒に行こう。でもティルちゃん、無茶はだめだよ。ちゃんと大人の言うことを聞かないと」
「はーい」
うん、素直だ。僕達は両親や大人達に許可を貰って、ドルワの里を冒険することにした。僕は歩きながら隣を飛ぶティルちゃんとお喋りしながら吊り橋を渡って色んな場所を見て回った。
外見はファンタジーとかで良く見る森の隠れ里みたいで、歩いているだけでワクワクしてくる。
ただそれだけじゃなくて、あちこちでドローンやドロイドみたいなSFに出てきそうなロボットを何度も見かけてびっくりした。魔法と科学が融合した超文明だと改めて実感できたなぁ。
「マコ、ここがリーフのみんなが住んでる場所だよ!」
「わぁ!カラフルだ!」
で、しばらくして僕達はドルワの里で暮らしてるリーフ人さん達が居る区画、リーフ居住区へやって来たんだけど……巨大な切り株……切り株で良いんだよね?
その上に大きな花やつるを組み合わせて作られた家がたくさんあってびっくりした!
アード人みたいに木の上で暮らしているから、同じようにツリーハウスかなって思ってたんだけど、とってもファンシーで可愛らしい家が並んでるんだから!
「あれ?マコとティルじゃない。どうしたの?」
「あっ、フィオレお姉さん!」
「フィオレおねーちゃん!」
その内の一件、黄緑色の……なんだろう、花弁かな?十メートルくらいありそうな花弁や黄色い花で作られた、とっても可愛らしい家からフィオレお姉さんが出てきた。
「迷子……なわけないか。ティルがマコを案内してる感じね?」
「そーだよ!」
「はい、ティルと一緒にドルワの里を見て回っているんです。リーフの皆さんのお家がこんなにファンシーだとは思いませんでした」
「あー、地球人の感覚からしたらそうなるのかしらね?私達からすればこれが当たり前なんだけど」
「地球で作ったら大人気になりますよ!」
目をキラキラさせている誠を見て、フィオレも悪い気はしなかった。
「そんなに興味があるなら、種を持っていこうかしらね」
「たねー?」
「そうよ、ティル、マコ。リーフの家は元になる種を植えれば完成するの。地球の土壌を調べてみたけど、植えても問題はなさそうだし試してみようかしらね」
地球人の少年とリーフ人の少女の何気無い会話で、地球にファンシーなフラワーハウスの爆誕が確定した瞬間である。
当然ここに政治的な合意などがなされている筈もなく、何の前置きも無しに現れたフラワーハウスに為政者達が頭を抱えることになるが、最近では珍しくもないので割愛させていただく。閑話休題。
「そうだ、綺麗な砂浜があったから泳いだら楽しそうだよね。ティルちゃんは泳げるかな?」
「およぐー?」
アードにはそもそも海で泳ぐなど発想すら無いので、当然ながらティルは不思議そうに首をかしげた。それを見て誠少年は泳げないのだろうと判断した。
「じゃあ、僕が泳ぎ方を教えてあげるよ。海は冷たくて気持ちが良いんだから!」
「およぐー!」
尚、余談ながらこの二人の微笑ましいやり取りを聞いていた周囲のアード人達は。
「海で泳ぐだって!?正気の沙汰じゃないぞ!」
「それをあんな小さな少年が何でもないように言うなんて」
「あの幼さでその豪胆さ、衝撃的ね」
「もしかしたら地球人は武門の誉れ高い種族なのではないかしら?」
「なるほど、それならあの勇敢さも納得できる!」
「幼少期から武芸に触れて恐れを抱かない鋼の精神力を鍛えているに違いないわね」
「頼もしい盟友が増えてくれて有り難い限りだ。そんな種族と交流の架け橋になるなんて、流石は提督……いや、里長が見出だした娘だ」
「我々も負けていられないな」
アード人にとって、海は恐ろしい場所である。その海で泳ぐ事を当たり前のように語る地球人の少年。
故に周囲の大人達は誠少年の言葉をそのまま受け入れて、地球人に対する誤った認識を加速させることになる。何せドルワの里はティリスの部下や家族、遺族の集まりなのだ。軍人であり武人気質が強いのだから。
尚、海で泳ぐ行為は早い段階で中止となる。それは誠少年が事前に大人達にしっかりと確認を取ったからだ。