星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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謁見とアードの海

「さあ、こちらへ。アードは貴女を歓迎します。どうか緊張しないで、ゆっくりとお話をしましょう」

 

 

 

 クレアです。私はヴァルキリーの一人、パルミナさんに連れられてケレステス島のハロン神殿へ招かれました。

 謁見の間でアードを率いるセレスティナ女王陛下と謁見するだけだったのですが、何故か女王陛下は私の前に姿を現して、そのまま最奥にある庭園へ招かれました。

 豊かな森と美しい花畑が広がる庭園は、大地の精霊たちが歓喜しているのを肌で感じます。

 まあつまり、ノーム的にも非常に心地よい空間であります。

 

 

 

 噴水の近くで女王陛下は手にしていた天秤を模した杖で優しく地面を叩くと、その場にテーブルと椅子が現れて、女王陛下は先に座り優しげな笑みを浮かべて手招きをしました。

 私は恐縮しながらも対面に腰かけました。すると目の前にシンプルなティーカップが現れて、そこに満たされていたのは……黒い液体。この香りは!

 

 

 

「こちらはアードが宇宙を開拓していた時代に、ノーム人の物と思われる遺構で発見された飲料を再現したものです。残念ながら私達アード人の口には合いませんでしたが」

 

 

 

 女王陛下の言葉を聞きながら、私は黒い液体へ口を付けました。この口内全体に広がる苦味と、そして濃厚な香り。

 間違いない、これはノームのコーヒーです。

 地球にもコーヒーがあると知った時は歓喜したものですが、ティナさんが持ち帰ってくれた地球で最も苦いコーヒーでも私にとっては甘過ぎました。この芳醇な香りと苦味こそノームコーヒーと言えます。

 ノーム人ならば、小さな頃から愛飲するような飲み物です。なにせスペースが限られている移民船内部の農業区画で、専用の豆を栽培するエリアが作られるレベルです。

 酒精に勝るとも劣らない執念を感じましたね。いやまあ、美味しいので文句はありませんが。

 

 

 

「私の夢が一つ叶いました」

 

 

 

「夢、ですか?」

 

 

 

「いつの日か、この飲料をノームの方へお出しして、おもてなしをしたい。そんな些細な夢ですが、その夢が叶いました。この瞬間に感謝を捧げたいです」

 

 

 

「きょ、恐悦至極に存じます」

 

 

 

 アード語の翻訳は正常に機能していますよね!?とても優しげな笑顔で凄いことを言われましたよ!?

 ……マナからも慈愛の感情が伝わってきますね。ただ、この感じは……ティナさんに似てる?

 髪の色もそうですし、笑顔にも面影がある。もしかしたら……お二人は親族だったりするのでしょうか。

 

 

 

 

「っ…」

 

 

 

 親族である可能性を考えたと同時に、私の心を支配したのは罪悪感と恐怖でした。今こそセレスティナ女王陛下にセンチネルの真実をお伝えしなくちゃいけないのに、身体が強張ってしまって……右手が震えていることに気付き、そっと左手で右手を握って隠してしまいました。

 

 

 

「聞かせてください、貴女の物語を。貴女方の種族に何があったのかを。きっと力になれるはずです」

 

 

 

 自然と心を落ち着かせるような、そんな優しい言葉に促されてわたしはゆっくりと生まれてから今日までの出来事をお話ししました。ですが、ここでも私は自分が皇女であることを打ち明けることが出来ませんでした。

 自分の不甲斐なさに俯いて内心唖然としていると、両手に暖かな感覚が広がりました。顔を上げると、いつの間にかテーブルが小さくなって目の前に女王陛下がいらっしゃり、その手で私の両手を優しく包み込んでいました。

 

 

 

「怖がらなくて良いのですよ、自己嫌悪される必要もないのです。貴女の心配は杞憂に終わると断言できますが、それでも不安があるでしょう。

 だから、貴女の覚悟が決まってその内に秘めた想いを打ち明けられるその日まで、私達は待っています。私達は、あの娘達は、貴女の味方なのですから」

 

 

 

 私の目をしっかりと見ながら紡がれた優しい言葉に、正体不明の安心感を覚えてしまいました。私がなにかを隠していることを見抜いた上で、それを打ち明けるのを待ってくれる。

 ……私の母は私を産んで直ぐに無くなりましたが、母の愛とはこんなものなのでしょうか。何もかもを包み込み許してしまうような暖かさと優しさを感じながら、私はただ頷くことしか出来ませんでした。

 ……勇気を頂いたんです。私も、覚悟を決めなければいけません。あなた方を、アードの皆様を追い詰めたセンチネルを産み出した男の末裔であることを打ち明けるために。

 

 

 

 

 ティナだよ。アナスタシア様の娘さんであるパルミナがクレアを連れて女王陛下の下へ行ってしまった。

 本当なら私も同行するべきなんだけど、今回は朝霧さん達が居るから放置は出来ない。何よりティルがマコくんを連れ回しているから、心配で仕方がないんだよね。

 

 

 

「ティナも妹さんには甘いんですね」

 

 

 

「否定はしないけど、今は心配のほうが強いかなぁ」

 

 

 

 だから私はフェルと一緒に隠れて二人を見守っている。マコくんが海へ行こうと言い出した時は慌てたよ。

 だってアードの海は地球と比べ物にならないくらい危険な場所だからね。それは浅瀬であっても変わらない。

 だからアードの漁業は定置網みたいなものが主流で、船を出して海に乗り出すなんて自殺行為をする人は居ないし、そもそも余程の事情がない限り海岸に近付かないからね。

 まあ、基本的には浮き島だから里に居る限り海へ近付くことは無いんだけど。

 

 

 

「海へ行きたいって言われた時は、ビックリしましたよ。ティアンナさんは懐かしそうでしたけど」

 

 

 

「それは言わないで」

 

 

 

 だって空を飛べてとんでもなく広くて綺麗な海が広がっているんだよ!テンションが上がりすぎて、海面まで降りてしまって飛び出してきた巨大なウツボみたいな魔物に丸飲みにされたのは良い想い出だよ。

 ……心配して付いてきていたお父さんが慌てて助けてくれたけど、優しさの権化みたいなお父さんがあんなに怒ったのはあの時だけだよ。滅茶苦茶反省したし、あれ以来絶対に海には近付かないようにしてる。

 ……ただ、地球の海でフェル達と一緒に泳いでみたいって気持ちはあるかな。今度地球へ行ったらハリソンさんに確認してみよう。少なくとも地球の海に、数十メートルから数百メートル級の怪物は居ないしね。

 

 

 

 上手くマコくんが誘導して二人も里の中心地へ戻ってきた。あの歳で好奇心旺盛なティルを上手く扱えている様子は、正直姉として複雑ではある。娘を取られる父親ってこんな気持ちなのかな?

 そんなことを考えていると。

 

 

 

「ティナ、ようやくお話が出来ますね。サポートの幅も広がりますよ」

 

 

 

 私の前に現れたのは綺麗なエメラルドグリーンの髪を持ったアードの成人女性……まさか、アリア!?

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