星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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大人達の苦悩

 突如として現れたティナによる非常識な行為は、刺客達を一瞬だけ戸惑わせる効果を生んだ。

 その隙にティナはティルと誠を自分の後ろへ隠して、刺客達と対峙した。

 異常を察知した大人達が駆け付けるまで僅かな時間しか残されていなかったが、刺客達は諦めなかった。

 忌み者としているフェルを護る最大の後ろ楯が目の前の少女なのだ。彼らは直ぐ様標的を切り替えた。全ては楽園の繁栄のために。 

 

 

 

「大使殿とお見受けする!貴殿に恨みは一切無いが、楽園に永遠の繁栄をもたらすためだ!その命、頂戴する!」

「この悪行は、我らの命で償う所存!リーフ、アードのための礎として共に果ててくれ!」

 

 

 

 刺客達は口々に妄言を吐き、マナを練り合わせていく。時間は限られている。つまり、一撃で仕留める他ない。

 故に彼らは自分達が撃てる最大の魔法をぶつけるつもりであった。

 

 

 

「……そんな理由で妹とマコくんを狙って、その上私まで殺そうとするんだ?私だけを狙うだけならいざ知らず、妹達まで巻き込まれたらさ……私だって怒るよ?」

 

 

 

 普段の快活さが嘘のように、静かに怒りを燃やすティナの手にはいつの間にかビームランスが握られており、殺気を孕んだ瞳で刺客達を見据える。

 それは明確な殺意であり、刺客達は戦慄した。情報だと目の前の少女は最低値を更に下回るマナしか持たず、マトモに魔法を行使することすら出来ない筈である。

 にも拘らず、目の前の少女の身体から発されるマナは並みのリーフ人やアード人を遥かに凌駕するものなのだ。

 余りに濃密なマナは、周囲を蜃気楼のように歪ませる。空間そのものが膨大なマナに影響されている証拠である。

 不測の事態に直面した刺客達は、状況を打開すべく声を合わせる。複数人のマナを練り上げる合成魔法、極めて難易度が高いそれを発揮するのは、偏に彼等の熟練度の高さを示していた。

 

 

 

「「「「朽ち果てよ!楽園の恒久栄華のために!!!!ギガフレイムっっっっ!!!!」」」」

 

 

 

 巨大な魔法陣から撃ち出された巨大な炎の弾丸は、ティナもろともティル達を焼き払わんと凄まじい速度で三人へ迫る。避ければ後ろに隠した二人を巻き込む。

 それに弾丸にはホーミング性能が付与されているのが分かった。逃げようにも、二人を抱えて飛ぶのは不可能である。ならばとティナがありったけのマナを使って魔法障壁を展開しようとした刹那、彼女の前に現れた女性によって巨大な炎の弾丸は空中に静止する。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 その女性は二対の翼を持ち、ティナと同じ銀の美しい髪を腰まで伸ばし、天秤を模した杖を持っていた。

 アード社会の頂点に君臨するセレスティナ女王その人である。

 

 

 

 

「何者だ!?」

 

 

 

 刺客達は突如現れた乱入者に対して苛立たしげに誰何した。セレスティナ女王は滅多に人前に姿を現さないし、声も発しない。

 つまり、彼女の容姿を知る者は極めて少ない。まして外様であるリーフ人では先日目の当たりにしたフリーストくらいである。

 刺客達の言葉に応えることなく、セレスティナは悲しげな表情を浮かべて。

 

 

 

「ごめんなさい……フェルシア」

 

 

 

 亡き親友への謝罪を口にして、静止させていた炎の弾丸を更に強化して撃ち返したのである。

 まさかの行為に刺客達は反応する暇もなく、業火に包まれた。同時にセレスティナはサイレンス魔法を唱えて断末魔の叫びを遮断し、翼を大きく広げてティナ達の視界を塞いだ。見る必要はない、そう言わんばかりの行動である。

 

 

 

「ティルちゃん!」

「マコくん!無事か!?」

 

 

 

 異変を察知した大人達が次々と駆け付けてくるのを見て、セレスティナも踵を返すが。

 

 

 

「あのっ!

 ……ありがとうございました。貴女は……?」

 

 

 

 ティナに呼び止められ、振り返った彼女は静かにティナへ歩みより、そっと彼女の頬を撫でる。

 くすぐったそうに目を細めるティナの髪を、セレスティナは一度だけ優しく撫でて。

 

 

 

「大きくなりましたね……可愛いティナ」

 

 

 

「え?」

 

 

 

 名前を呼ばれて驚くティナに笑みを浮かべて、そのまま転移魔法で姿を消した。 

 

 

 

「アリア、今の人は?」

 

 

 

『該当データはありません』

 

 

 

 ティナの問いに、アリアは端的に応えた。秘密を護るために。

 

 

 

「姉様……ありがとう」

 

 

 

 ケレステス島ハロン神殿の聖域へ戻ったセレスティナをティアンナが出迎えて、万感の想いを込めて感謝を捧げた。今回の一件は、セレスティナ自身としても看過できなかった。

 秘密が露見する危険性があったが、それでも可愛い姪達を護るために彼女は亡き親友との約束に背いてまで介入し、リーフ人四人を手にかけた。

 

 

 

「……フェルシアは怒っているでしょうね」

 

 

 

「姉様は悪くないわ!悪いのはあのリーフ人達よ!」

 

 

 

「いいえ、事態を静観していた私の落ち度です。まさか可愛い姪達だけではなく、大切なお客様まで手に掛けようとするとは……私が事態を甘く見てしまいました。彼等の良心を信じたかったのです」

 

 

 

「姉様……」

 

 

 

 悔やむ姉の後ろ姿にティアンナは、悲痛の呟きを漏らすことしか出来なかった。

 

 

 

「あのまま放置していたら、ティナは怒りに任せてあの四人を手に掛けていたでしょう。

 まだ力の使い方に慣れていないあの娘に手心を加える余裕はありません。命を奪ってしまう事態になってしまったでしょう。

 それだけは何としても避けたかった。あの娘に手を汚すような事はさせたくない。これは完全に私のエゴです」

 

 

 

「……ありがとう、姉様。ティナ達のために……」

 

 

 

「良いのです、可愛いティアンナ」

 

 

 

 二人は抱擁を交わすが、事態の深刻さを考えたティアンナは青ざめる。

 

 

 

「姉様、これを機にミドリムシを一掃するべきよ!ティドルの時に釘を刺したのに、あいつらはまたティナ達を狙ったのよ!?」

 

 

 

 ティアンナは、一部の過激派がセレスティナ女王を狙ってヴァルキリーによって始末されたことを知らない。

 

 

 

「ティアンナ、それは……」

 

 

 

「畏れながら申し上げます。女王陛下自らが手を下したと公表すれば、アードの対リーフ感情は最悪なものとなりましょう」

 

 

 

 突如響いた第三者の声にティアンナが慌てて振り向くと、そこにはアード式最敬礼で控えるティリスが居た。

 

 

 

「里長?貴女いつの間に……?」

 

 

 

「はっ、ただならぬマナの揺らめきを感じ馳せ参じました。既にドルワの里の目撃者達には口止めし、アリアに依頼して全ての記録を削除してございます。

 ティナ殿下とティル殿下、朝霧ご一家は安全のため宇宙ステーションへ上がりました」

 

 

 

「ティリス……苦労を掛けます」

 

 

 

「勿体無きお言葉」

 

 

 

「待って!悪化しても自業自得じゃない!」

 

 

 

「王妹殿下、それではフェラルーシア殿下を喪うことになります。その様な未来をティナ殿下が望まれるでしょうか?」

 

 

 

 ティリスの指摘を受けて、ティアンナはようやく想い至る。目の前の理性的なティリスがある意味異常な存在なのだ。

 アード人の底知れぬ善性に隠されたセレスティナ女王への狂信は、容易にリーフ人殲滅へと方針を向けてしまうことを。そしてそこに例外は存在しない。

 女王陛下が手を下した=害ある種族であり殲滅しなければ。アード人の狂信性は、容易にこの術式を成立させてしまうのだから。

 

 

 

「なら、どうすれば良いのよ!?まさかまた泣き寝入りしろと!?娘達の命を狙われたのよ!?」

 

 

 

「今しばらく御猶予を頂きたく。排除すべきはリーフ上層部のミドリムシのみ。この身に代えても、アードとリーフによる真の融和を実現してみせます」

 

 

 

 女王によるある種危険な行為は、ティリスの手によって慎重に隠蔽され、ミドリムシに対する牽制と対策に役立てられることとなる。

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