星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ティナ達が無事に地球へ来訪し、事前の取り決め通りアード政府の有力者も同行している旨の連絡を受けた地球の為政者達は別の衝撃を受けた。
護衛を兼ねているのは承知しているが、まさか銀河一美少女ティリスちゃん号以外にも宇宙船が大幅に増えて、十隻を越える大艦隊で来訪するとは想定していなかったためである。
事前連絡を行った後に行われた宇宙艦隊とスターファイターによる見事な隊列によるデモンストレーションは、地球の民衆を熱狂させると同時に一部の者達に更なる危機感を与えることとなったのである。
「これまでのテロは最終的にティナ嬢の温情によって事なきを得たが、アード政府要人も同じような対応をするとは思えない!
あらゆる事態を想定して、万全の備えを怠るな!状況次第では、超法的な処置も許可する!決してテロ等起こさないようにしてくれ!」
主な交渉の舞台となる予定の合衆国では、ハリソン大統領が閣僚や要人達を緊急招集して万全の備えを指示していた。
また異例ではあるが、国内に厳戒態勢を敷くよう大統領令を発した。
しかしながら、大統領令は議会の承認を得る事無く行政権を行使できるが、決して万能ではない。
連邦最高裁判所に違憲判決を出されたり、連邦議会に反対する法律を作られれば、無効とされてしまう。
議会内部にも反アードシンパが根強く存在する現状で、何処まで国内の不満や不安を抑えられるか。全てはハリソン大統領の力量に懸かっていた。
「今度誘拐事件なんて起こされたら洒落にならないわ!ティナちゃんの温情にも限度があるのは、北を見ればわかるわね!?万全の備えを徹底して!ここが交流の正念場よ!」
同時にザッカル局長の来日が確定している日本でも、椎崎首相が政府閣僚を集めて厳戒態勢を敷くように指示を飛ばしていた。ザッカル局長だけでなく何時ティナ達がフラリと来日するか分からないのだ。
歓迎ムードを維持しつつ、不穏分子への警戒を強めるのは当然と言えた。そしてこれらの動きは地球全土に広がっていく。
しかし地球の為政者は知る由もないが、実はこれまでの来訪を通してもティナ以上のアード要人は居ないのだ。
その事実を彼らが知るのはもっと先の話であり、その時彼らは文字通り綱渡りのような人類滅亡と隣り合わせの交流をしていたことを知り、滝のような冷や汗を流すことになる。
「地球側にも予定があると思うから、ザッカル局長が地球へ降りるのは数日後にしますね」
地球側の混乱を察した訳ではなく、どうせなら宇宙から地球を堪能して貰おうと考えで出されたティナの提案は、地球の為政者達に一息吐かせる猶予を与えた。
交渉に備えて準備はしていたが、数日の猶予があれば各国首脳のスケジュールにも余裕を持たせられる故である。
「ジョンさん、紹介しますね!新しい友達のクレアです!私達やフェル達とも違う、ノーム人と呼ばれる種族の女の子なんですよ!」
異星人対策室のジョン=ケラーだ。まさかの大艦隊来訪に地球全土が様々な反応を見せて大騒ぎになっているが、我が異星人対策室の面々は平常運転である。
慣れとは恐ろしいもので、ティナがまた何かこちらの度肝を抜くようなことをするだろうなぁと身構えていた故でもあるが。
そして早速フェル達と一緒に敷地内へ転移してきたのだが、見慣れない少女が二人混じっていた。
いや、言葉は正確にしよう。一人は激しく見覚えがある。前回滞在時に、ティナが公開した映像に映し出されていた異星人の少女だ。
背丈はティナと変わらないくらいのエメラルドグリーンの髪を肩口で切り揃え、何故か……そう、スチームパンクのような装いをした少女と、同じくエメラルドグリーンの髪を持ったアード人の少女だ。こちらはティナより背丈もあるが、何故か無表情だな。
服装に関しても、月の居留地に住まう方々のような……まるで女神のような装いだ。
確か、成人女性が身に纏う装束だったはず。つまり、成人か?それにアード人の髪色は金の筈……いや、それよりも先ずは紹介された少女だ。
ノーム人、確かにアード人やリーフ人とは身体的な特徴が違う。つまり、我々地球人からすれば第三の宇宙人となる。
……っと、いかんな。彼女が不安そうにしている。
「初めまして、私は地球人のジョン=ケラーだよ。ティナとは長い付き合いなんだ。彼女の友達ならば、私とも友達にならないかい?」
安心させるように笑顔を意識して右手を差し出せば、彼女も戸惑いながらも手を握り返してくれた。地球の挨拶をティナが教えたのだろうな。
「ノーム人のクレアです。分からないことがたくさんありますが、皆さんと仲良くしたいです。宜しくお願いします」
「もちろんだとも。地球へようこそ、クレア。私達は貴女を歓迎するよ」
いきなり呼び捨ては馴れ馴れしかったか?いや、嬉しそうな笑顔だ。実に可愛らしい。少しでも彼女が快適に過ごせるように尽力しないとな。
……ただまあ、周りの反応を見るに対応するのは私がはじめてみたいだな。人類初のノーム人のとコミュニケーションを大統領ではなく私が……いや、ミスター朝霧が居たか。だがそれは皆が知らないこと、必然的に私がファーストコンタクターになるな。
……ティナはまるで叔父に友人を紹介するノリだが、自覚した瞬間頭痛と胃痛と腹痛が襲い掛かってきたが、笑顔で乗りきるぞ。
この瞬間、ジョンの肩書きにノーム人と初めて言葉を交わした地球人の称号が追加された。
厳密には朝霧一家が一番なのだが、彼らの渡航は極秘扱いなので公にはならない。閑話休題。
「ティナ、そちらは……」
もう一人の少女……いや、女性か?彼女について聞こうとしたら、本人が前に歩み出た。
「お会いできて光栄です、マスタージョン」
ん?この口調にこの声は……まさか!
「まさか君は……アリアなのか?」
「はい、ティナをサポートする高性能かつ超優秀なAIのアリアです」
「AI美少女キターーーーッッ!!!」
「うるさいわよ!」
「もっっ!?」
彼女が優雅に自己紹介した直後、控えていたジャッキーが魂の雄叫びをあげてメリルから物理的に諌められていた。まあ、いつもの光景だ。
しかし、SF作品ではAIが肉体を得るような描写も良くあるが、まさか現実で目の当たりにするとは。いや、アードの技術力を考えればおかしな話ではないか。
「これからは電子面だけではなく、ティナを物理的にも護衛することが出来るようになりました。相応の魔法及び武装もありますのでご安心ください。
敢えて申し上げるならば、合衆国海軍空母打撃群程度の火力を有しています」
ただでさえフェルと言う超火力が傍に居るのに、これからは空母打撃群並みの火力を持つAIが物理的に護衛するのだ。
文字通り世界のパワーバランスを軽く崩壊させ得るパーティーメンバーの追加でジョン達は新たな頭痛を与えられ、そして虎視眈々とティナを狙うクサーイモン=ニフーター達は泣いていい。