星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
こんにちは、朝霧 誠です。アードから戻った僕は、世界の慌ただしさとは無縁の平穏な日常へと戻りました。
でも変化はあって、僕が通う小学校の警備が明らかに強化されちゃいましたし、僕の直ぐ近くには必ず大人の男性か女性が一人付いてくるんですよね。
事前にボディーガードさんだって聞いていたけど、何だか申し訳無いです。まるで皇族みたいな待遇で、最初の内は恐縮しちゃいました。
人間とは慣れる生き物で数日経った今では、あんまり気にならないようになりました。
もちろんこれもボディーガードをしてくれる人達が配慮してくれるからだし、感謝の気持ちも忘れちゃいけない。
ただの小学生に過ぎない僕に出来ることは少ないけれど、お礼としてお母さんにお願いしてその日の担当さんには旅館で夕食をご馳走することになりました。
結局親に頼ってるから情けなく思いましたが。
「マコくんはまだ十歳なのよ?難しい事を考えるのは、私達大人の仕事。むしろその歳でよく気が付くわ。将来が楽しみね」
すっかりお母さんと親しくなって、よく旅館を利用してる美月お姉さんに優しく諭されました。
嬉しい反面、早く大人になりたいと改めて思い定めました。
「そんなに急がなくて良いんだ。まだまだ子供でいてくれ」
相談したら、お父さんは苦笑いしながら僕を抱き上げました。すっかり逞しくなっちゃったお父さんに抱っこされるのは、嬉しいやら恥ずかしいやら……。
でも、お父さんは喜んでいるみたいですから我慢します。色々大変なのは、子供の僕にも分かりますから。
「警備のオジさんが居なくなって、代わりにお巡りさんが増えたよね」
「安全になったから良いんじゃないかな?」
守衛だったオジさんの代わりにたくさんのお巡りさんが巡回してくれていますが、皆さん僕達を怖がらせないように、優しい笑顔で気さくに挨拶してくれます。
だから最初はビックリしていた皆も、今じゃお巡りさんとお喋りするくらいに打ち解けました。
……うちの学校はコミュニケーション能力が高い子ばっかりだからなぁ。
ちなみになにかと物騒な世の中らしくて、警備の強化は保護者の皆さんからも支持されているらしい。つまり、良いことばかりだ。校長先生とか教頭先生はなぜか青い顔してたけど。
『すごーい!ここが地球!』
「あんまり大きな声を出さないで、ティルちゃん!」
友達と別れた僕は、旅館やすらぎの近くにある家へ帰り付いた。
最近はやすらぎで過ごすようにって言われてるから、家に帰るのは久しぶりだったりする。二階建ての家で、僕の部屋は二階にある。
今の時間帯は、僕しか居ない。だから、約束通りティルちゃんを呼び出した。
ティルちゃんは窓から見える外の景色に大はしゃぎだ。本当にこの場所に居るような……本当に魔法って不思議だ。
……ん?と言うか。
「ティルちゃん、その翼は……」
窓から外を見てるティルちゃんの背中には、アード人らしく真っ白な翼がある。
前にあった時は基本的な一対の二枚だったのに、今じゃ二対の四枚になってる。アード人は一対なのに……いや、違う。
例外はティルちゃんのお母さんとセレスティナ女王陛下だ。確か、二対の翼があった。
お姉さんであるティナお姉さんは一対で不思議に思っていたけど、ティルちゃんもいつの間にか二対になってる。
もし僕の予想が正しければ、二対の翼は王族の証だ。つまり、ティナお姉さんやティルちゃんはお姫様と言うことになる。
それを考えたら……いや、考えるのは止めよう。父さんも言ってたんだ。知らない方が幸せなことはたくさんあるって。
「ママが、マコの前なら出して良いって!」
そう言ってティルちゃんは二対の翼をパタパタさせた後、二枚を消した。魔法みたいなもの?
でもティナお姉さんが、翼を消すことは出来ないって……いや、気にしない。大変なことになりそうだから。
「ティアンナさんが?つまり、僕達だけの秘密だね」
「そう!ひみつー!」
純粋に僕達だけ共有された秘密は、とっても嬉しい。
今は仮想の姿だけど、いつかティルちゃんがまた地球へやって来たら友達を紹介していろんな場所へ行ってみたいな。
幼い子供達がより良い未来へ向けて純粋な希望を抱いている頃、日本でも不穏な動きが起きていた。
「椎崎総理はダメだ。合衆国へ迎合するばかりで、アジア諸国を軽視している。これは由々しき問題だ」
「中華や朝鮮半島も疑問を呈している。このままでは、日本は孤立してしまう」
「だが、どうするのだ?政府のプロパガンダに騙された国民によって与党の支持率は高止まりだ。選挙をやるにしても、与党が大勝するのは目に見えている」
「ここに至っては、やむを得まい。立ち上がる時が来たのだ」
日本某所にて、世界融和党のシンパが怪しげな密会を開いていた。
「しかし、総理にはアードからの強い支持がある。操り人形とも言えるが、それだけに干渉されたら厄介だぞ」
「そもそもあの宇宙人が来てから、世界は誤った道へ進み始めたのだ。それを正すためにも、アードからの干渉は絶対に避けねばならない」
「だが、策があるのか?相手は遥かに高度な文明なのだ。
クサーイモン=ニフーター氏による暗殺も失敗したと聞いているが」
「アード人には敵わないが、奴等の動きを制限する策はある。忘れたか?あの少年を」
一人の言葉に、皆がハッと思い浮かべたのは朝霧少年である。
「そうか!大使の妹と懇意にしている少年が居たな!」
「あの少年を管理下におけば、アード大使をコントロールすることも出来るだろう。
警備はあるだろうが、アード人を襲うよりも難易度は遥かに下がる」
「中華の同志から融通された武器や資金を使うのは、まさに今だ。情報を集めて、あの少年を確保する。
然る後、アードを動かして椎崎内閣を退陣させ我が党が日本を正しい道へ導く。
それ以外に我が国が生き延びる道はない」
「中華は事が成った暁には、アジア共同体構想への参加と我々のポストを約束してくれた。
迷う必要はあるまい」
「アジアが一体となって世界に覇を唱え、アードと対等以上の関係を築く。
歴史的な偉業に成るだろう。各自、細心の注意を払って事へ望むのだ」
子供を巻き込む事への忌避感は存在しない。大義を成すために多少の犠牲はやむを得ない。
古今東西テロリズムを行う者達の共通点であり、近視眼的な視野しか持たない。だからこそ彼らはテロリストと呼ばれるのだ。
自分達の行動が何を引き起こすか、理想以外に関心はない。