星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
……ジレンマです!
地球側の動き、具体的には会合の内容をリアルタイムで把握していたアリアは直ぐ様ティリスと情報を共有する。アリアからの情報提供を受けたティリスは、直ぐ様行動に出た。
同時刻に椎崎首相の襲撃事件を知らされたティナが激しく動揺した。
「美月さんが襲われた……!?美月さんは!?」
「無事だよ、ティナちゃん。アリアが察知してちゃんと守ったから大丈夫。だから、落ち着いて」
「そっか……なんで美月さんが……あんなに頑張ってるのに!なんで!」
酷く動揺しているティナを見て、これから起きることをティナが知る必要はないと判断したティリスは、本人の精神的な安定には時間が必要として一週間の療養を決定。
「フェルちゃん、ティナちゃんをお願い。必要ならカレンちゃんとかジョンさん達を呼び寄せて良いから」
「任せてください」
同時に、ザッカル局長以下使節団の面々もすり合わせと協議のために一週間月面の居留地へ引き上げさせた。
「地球の政に関わるなと仰有るのですな、畏まりました」
地球からアード勢力を引き離したティリスは、無人の銀河一美少女ティリスちゃん号のブリッジにて艦長席へ腰掛け、ゆったりと脚を組んで地球を眺める。
「我々は他者へ慈悲を与える義務がある。そして地球人には慈悲を受けてチャンスを得られる権利がある。
……お手並み拝見するよ、地球人達。アリア」
『畏まりました』
ティリスの承諾を受けたアリアは、これまで収集して分析してきた各国に潜む不穏分子の情報を、各国首脳部へ一気に提供した。まさに情報による爆撃である。
そして、真っ先に動いたのは意外にもフランスであった。パリで起きた事件とそれに関連する事象により政権交代がなされていたのだが、彼らはアードの力を垣間見た立場としてある種の恐慌状態に陥っていたのだ。
ティナは完全な善意として一般的なスターファイターのスペックを公表していたのだが、それを見たフランス政府は呆然となった。
アードのスターファイターは星間航行能力を持つ。それは光速を優に越えてしまう速度なのだ。
少なくとも、旧冥王星近海から地球まで十数分で辿り着ける程度の速度を出せる。
もちろん戦闘時は相応の速度へ減速するが、それでも地球からすれば未知の領域である。
端的に言えば、アード側は武器を使う必要すらない。戦闘速力の半分以下のスピードでも、大気圏内を飛べば地上に甚大な被害を与えることが出来、尚且つ地球側には対抗手段がない。
パリの事件で市街地上空を飛ばれたため、その未来図が容易に想像できたのだ。
まさしくフランス政府は恐怖した。そして恐怖故に、情け容赦の無いものとなった。
国内の不穏分子についてある程度内偵は進めていたこともあり、アリアからの情報提供を受けたフランス政府は、先ず便乗して犯行声明を出した組織とそれに連なる団体へ徹底的な弾圧が行った。
警察組織、公安組織、更に軍まで投入したそれは凄惨なものとなり、一部の識者からは十九世紀末期の大弾圧を彷彿させるとして、“血の一週間の再来”と揶揄される程であった。
僅か一週間で国内に存在した反政府、反アード組織の内代表的だった三つの団体が壊滅し、更に連なる組織や団体も大規模な弾圧を受けた。
急いでいたこともあり国家の手を逃れた者も少数ながら存在したが、それでも当分はあらゆる行動を起こせないのは明白であった。
このフランスの動きに各国も動き始める。
「先を越されたのは些か腹立たしいが、まあ仕方ない。
我々はエスカルゴ共のように、粗末な仕事はしない。そうだね?ハーバーグラム君」
「はい。既に指揮系統の統一も完了しました。現場の混乱も最小限で済むかと。
無論、不足の事態に備えたバックアップも整えてあります」
「結構、始めてくれたまえ」
ブリテンはフランスに遅れること二日後に行動を開始。どこまでも淡々と、冷酷なまでに文字通り不穏分子を処理した。
その際、表には出せないアンダーグラウンドな手法も存分に取り入れられたが。
「知らなければ、それは存在しないのと同義だ。少なくとも大衆は知らない。
対象は治安を乱す存在だ。ならば、何の問題もない」
フランス程の派手さは無かったが、この日を境にブリテン国内の不穏分子は壊滅的な打撃を受け消滅した。
「きっ、貴様ら!こんなにも強引な真似を!そんなにもアードが怖いか!臆病者め!」
「いいえ、人類の未来にあなた方は不要なのです。既に証拠の数々は挙がっております。
後は法廷で伺いましょう。連れていけ」
合衆国での弾圧もまた苛烈を極めた。アリアからの情報と内偵を進めていた数々の証拠によって、かつて反アードとして暗躍していた政財界の大物が集まる組織“ジャスティススピリッツ”に所属する幹部の大半が逮捕起訴されることとなる。
その中には、ハリソン大統領の対抗馬であり反アードを掲げていたジョンソン議長及び派閥の議員達が多数含まれていた。数多の汚職を明るみにされた結果である。
無論与党側にも汚職議員は含まれており、ハリソンは公正を示すために与党議員も容赦なく逮捕するように指示を出した。
同時に過激な活動家や潜在的なテロ組織の一掃も図られ。
「どうやら、俺の存在が随分と目障りみたいだな。
だが、お前らの手に掛かるものか!俺は最後まで自由だ!誰にも邪魔はさせねぇ!」
その中でも大物は、チャーオ=ニゴースであった。武器弾薬を密かに集めていた事が発覚し、更にアリアによって位置を特定された彼を拘束すべく警官隊が向かったが、シンパと一緒に激しく抵抗して銃撃戦に発展。
「政府の犬が!これが自由だ!」
最後は集めた爆薬を使って派手に自爆。ただ、爆薬の存在を知らされていた警官隊はドローンを前面に出していたので、人的被害は最小限に留められた。
クサーイモン=ニフーターは最大の支援者を失ったが、彼本人は地下に潜り息を潜めていたので粛清を免れた。
そして、日本。アリアの情報提供を受けて急遽帰国した椎崎首相は、三日間随分と悩んだ。
テロ組織は許されるものではないが、反社会的或いは反アード的な主張をしているとは言え、関与していない組織にまで手を出すのを躊躇した。法治国家としての良心である。
だが、世界融和党系列の過激派と目される団体の一つが朝霧少年の誘拐を企てていることを知り、遂に決断を下した。
「マコ君を狙うつもり!?そんなことをされたら、ティナちゃん達がどんな反応をするか分からないの!?
個人的にも許せないし、何より人類の未来に暗雲を呼び寄せるような企ては許せないわ!徹底的にやるわよ!」
日本も世界の流れに乗った。