星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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日本の決断

 主に西側諸国による不穏分子の弾圧に便乗する形で動いたのは大国である連邦である。ティリスによって熱心なアード信奉者となっているイワン補佐官の動きもあり、実は連邦内部では親アードの世論が着実に形成されつつあったのだ。

 強かな連邦大統領が、この流れを見逃す筈もなかった。

 

 

 

「テロ活動を示唆するような組織、そしてそれらを支援したり支持する組織は、国家にとっても無辜の民衆にとっても不要な存在であることに議論の余地はない。

 これまでは許されてきたが、人類の未来を見据えた世界の動きに賛同するのは大国としての責務であり、故に我々はその責務から逃れずに実行することをここに宣言するものである」

 

 

 

 密かにティリス経由で不穏分子の情報を得ていた連邦の動きも速く、それはまさに粛清であった。反アード思想の団体は当然ながら、テロ活動を示唆したり支持するような者達も個人や団体を問わずに徹底的な弾圧が実行された。

 その際にそっと自分の政敵達も粛清対象へ紛れ込ませる辺りが実に連邦らしいやり方ではあったが、これで国内を纏めあげた連邦は密かに西側諸国と接触を図り連携を深めていく。

 

 

 

 一方日本政府の動きを敏感に察知した中華。黄卓満首席は事態を静観するように指示を出したが、大国故に末端まで指示が浸透するのに時間を要してしまう。

 中華の軍は他国と違い独立性が強いこともあって、世界融和党系列組織からの要請を受けた一部の部隊は上層部の方針を拡大解釈することで行動を開始。

 具体的には日本に対する領空侵犯、領海侵犯ギリギリの行為を行って威圧したのだ。

 これまでの日本政府ならば遺憾の意を表明して終わる。少なくとも表面上はそのような対応をするだろう。実行を指示した者達はそう考えていた。

 

 

 

 だが、日本政府の反応は苛烈を極めた。正確には覚悟を決めた椎崎首相の動きは速かった。

 

 

 

「思想の自由、表現の自由は守られるべき権利です。しかし、行動には責任が伴います。

 今回発覚したこの不正の数々やテロ行為の計画は、到底看過できるものではありません。

 平和に生きる人々の安全と安寧を守るため、より良い未来へ向けての歩みを止めないためにも、私達は断固とした対応を取ります。

 これは私、内閣総理大臣椎崎 美月の名に於いて実行します。すべての責任は私にあります。あらゆる非難や批判は甘んじて受け入れます。

 しかしながら、子供を利用するような真似だけは許せるものではありません!」

 

 

 

 椎崎首相は数々のテロ計画を国民へ公表することを決断し、ただちに実行に移された。

 

 

 

「総理、まさかこれも公表されるのですか!?」

 

 

 

 椎崎首相へ送られた情報には、野党だけではなく与党議員の不正に関するものまであった。

 テロと直接的な関係がない情報ではあるが、それをわざわざこのタイミングで提供するアリア、より正確に言えばティリスの真意を椎崎首相は見誤らなかった。

 

 

 

「これを機に、我が国も政財界の大掃除をしろって事でしょう。全く、手厳しいね」

 

 

 

「しかし、我が党の幹事長の名前もありますぞ!」

 

 

 

「変革には痛みが伴う。全ての責任は私が取るわ。一気にやるわよ!」

 

 

 

 それから数日間で永田町に激震が走る。テロ関連とは別に、与野党議員の不正を椎崎首相自らが一斉に暴露したのだ。

 報道陣を集めた生放送の最中に名指しで不正を働いた議員を暴露していき、同時に証拠を公表。

 その中には与党の大物も複数含まれており、与野党を問わずに大騒ぎとなった。

 テロ関連で世界融和党の系列組織は公安と警察によって一斉に検挙されたのと同時に、これらの組織に資金提供等をしていた議員達も超法的措置として直ちに身柄を拘束された。

 その中には最大野党である共栄党幹部だけでなく、与党の幹事長まで含まれていたのだ。

 

 

 

 だが国民は数々のテロに関する情報、特に朝霧少年誘拐計画に激怒。

 自らが先頭に立ち、与党の大物だろうと構わずに公表して厳格に対処していく椎崎首相の姿に魅せられ、支持率は急上昇。

 思想の自由を主張し、独裁者のレッテルを貼ったり大弾圧等と批判する一部のメディアや専門家の意見が大勢に影響を与えることは無かった。

 それは大きな反発を予見した椎崎首相が自らの資産を真っ先に公表し、責任を取るためとして必要最小限の資産以外は全て慈善団体へ寄付し、また議員年金の返上や報酬の大幅な削減を宣言したのも影響を与えた。日本人好みの潔さを示したのだ。

 

 

 

 更に言えば、椎崎首相の親アード政策は災害大国である日本で最大限の恩恵を人々に提供したことも高い支持率に繋がった。

 “医療シート”は数に限りがあるので慎重に使用されたが、“トランク”はその有効性を存分に発揮する機会があったのだ。

 日本に割り当てられた分と、ティナが椎崎首相へ個人的に進呈した“トランク”十数個は、アードとの交流開始後も発生した地震や豪雨等による災害時に惜しみ無く投入されたのである。

 手軽に持ち運べるアタッシュケース程度の大きさに、大型輸送船並みの物質を保管できるのだ。

 様々な資材や物資の運搬、更には重機などの機材すら手軽に現場へ運ぶことが出きる。

 人員の輸送に注力する必要はあるが、災害救援速度が飛躍的に向上したのは言うまでもない。

 災害地上空へ航空機を飛ばして、“トランク”を指定された場所へ投下するだけで大量の物資を現地へ輸送できるのだから。

 

 

 

 

 もちろんこの動きに便乗して“トランク”を奪おうと企む不届き者も現れたが、全ての“トランク”はアリアの管理下にあるのですぐさま日本政府へ知らされた。

 そして、この様な輩に対して日本人は容赦しなかった。古来より火事場泥棒は忌み嫌われる存在である。自然災害に悩まされてきた日本人にとって、この感覚は顕著である。

 仮に盗んでもアリアが遠隔から干渉してそもそも“トランク”を開けることが出来ず、同じくアリアに誘導された当局が容赦なく対処した。

 

 

 

 この様な背景から、日本は他国に比べてアードの恩恵を実感し易い環境であったのはある種の皮肉であった。

 それ故に椎崎首相による反アード勢力への弾圧は、民意の圧倒的な支持を背景に徹底的なものとなった。

 一部の親アード識者などは、「反アード思想は、思想の自由に該当しない戯言である」と声高に宣言する有り様であった。

 

 

 

「まだまだ先は長いけれど、一歩踏み出せたわね」

 

 

 

「では、半日でも良いのでお時間をいただきたく。ティナと会ってあげてください。彼女も貴女の元気な姿を見れば、落ち着くでしょう」

 

 

 

「そうね……明日は重要な案件もないし、そうしようかしら。お願い出来る?ケラー室長」

 

 

 

 椎崎首相は来日して早々に海坊主と呼ばれて胃を痛めたジョンと極秘会談を行い、ティナと会うために月面へ向かうことを決めた。

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