星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
……今暫く不安定ではありますが(  ̄- ̄)
カレンと水族館を堪能して、フィーレから一時間目を離していたら新しい合金と一緒に魔人なZさんが建造されていた。いや、全く意味が分からない。
「何で作ったの?」
「あっ、ごめん。これとセットなの忘れてた」
私の疑問を違う形で受け止めたフィーレは、そのままクラフト装置を弄った。
そして直ぐにクラフト装置をから光が投影されて、魔人なZさんの隣にグレートな魔人さんが聳え立つ結果になった。いや、何で?
「セットにするのが心意気だって豪徳寺のおじさんが言ってた」
「地球外技術研究センターの皆さんか!」
まぁたフィーレに余計なことを吹き込んだなぁ!?
いやまぁ、著作権云々は気にしなくて良いって言われてるけど事前連絡は……ああ、そっか。
ここは月の居留地だから気にしなくて良いって判断したんだ。多分、きっと、おそらく。
「まっ、まあ良いよ。新しい合金は地球の皆さんを助けることになるだろうし。クレアは大丈夫?」
「はい、久しぶりにたくさんの魔法を使えたので気分も良いです。見たこともない金属も興味深いですし」
クレアは、インゴットをまるで粘土みたいにこねくり回してご満悦の様子だ。
取り敢えず、地球の皆さんが知らなかったら存在しないのと一緒だ。フィーレに口止めをしようと思った瞬間、足音が聞こえたから振り向いてみたら。
「これ……アーカイブで見たことがあるわ。古いロボットアニメの代表作じゃない?」
そこにはフェルを連れた美月さんが居た。なんだか頭が痛くなったけど、先ずは説明しないと!
「……なるほど、新しい合金を作る過程でフィーレちゃんが……まあ、安心して。以前言ったように著作権については心配しなくて大丈夫よ」
「ビックリさせちゃってごめんなさい。フィーレには言っておきますから。
その、効果があるとは思えないけど」
何せ本人に悪気はないし、そもそも地球のルールの心配をしてるのは私だけなんだよねぇ。
まあ、当たり前か。私が地球人だったから多少地球の事情に詳しいだけだし、アードには著作権なんて概念すらない。
優れたものは公開して皆で共有するのが当たり前の社会だし。
「良いのよ、少なくとも地球にとって不利益にはならないわ。
……それよりも、先ずは謝らせて。心配をかけてしまってごめんなさい、ティナちゃん」
「何で美月さんが謝るんですか?悪いことをした訳じゃないし、無事で本当に良かったです。お怪我とかもしてないですか?」
なんで美月さんが謝るのか今一分からない。不思議に思っていると、美月さんはまるで安心させるように柔らかい笑顔を浮かべた。
「ええ、大丈夫よ。アリアが事前に教えてくれたから備えが出来たの」
事前に知りながらも敢えてテロを実行させたのは、椎崎首相の政治家としての強かさ故である。
国内に存在する過激な反対勢力を一網打尽にするため、未遂ではなく言い逃れの出来ない状態を作り上げたのだ。
ただ世界中がこのテロ事件に呼応して大規模な粛清を開始したのは、些か予想外の事態ではあったが。
その意味でも椎崎首相は、ティナと個人的な繋がりを重視しながらも国益を確保する、まさに政治家であった。閑話休題。
「怪我が無いなら良かったです。私の方こそ、直ぐに会いに行けなくてごめんなさい」
とても心配したけど、ばっちゃんからしばらく地球には降りるなって言われたからなぁ。なにか含む言い方だったから、それに従ったけどさ。
「ちゃんと事情も理解してるわ。それより、この新しい合金は技術協力と考えて良いのかしら?」
「いーよー。宇宙開発用の鋼材開発が難しいっておじーちゃんが言ってたし」
美月さんが話題を変えてくれた。ドクターには初期型のパルスドライブシステムや、惑星間航行船の設計図が提供されている。
どれもフィーレやアリアが今の地球の技術力でも再現可能なように再設計したものだけど、問題の一つが構造材だった筈。
「美月さん、新しい合金は使えそうですか?」
「私は工業品に詳しい訳じゃないけれど、地球に存在するどの金属よりも軽くて頑丈なら色んな分野で活用できる筈よ。
これのデータも現物は持ち帰って良いかしら?」
「ん、いーよ。クレア姉ぇ」
「こちらになります。ちょっと楽しくなって作りすぎちゃいました」
クレアが差し出したのは、小型の“トランク”、まあ私が持ち歩いてる“ポーチ”だね。
あれだけでも大型トラック以上の積載量があるんだから、色々持ち運ぶのに便利なんだよね。
ただし、実はポーチの方がコストが高かったりする。
「まさか、この中身全部?」
あっ、美月さんがひきつった笑顔を浮かべてる。
「新しい金属や鉱物に触れるのは楽しいんです」
クレアの能力に天然や人工の違いはない。一度触れた金属や鉱物はなんだって再現できちゃう。
流石にノーム人でもそこまで出来るのはクレアだけらしい。私の周り、チート多すぎない?
その後、美月さんもカレンと同じようにアードの服を着てくれた。今日は休暇として泊まる予定みたいだから、ゆっくりと休めるように頑張った。
みんなでお喋りしたり、地球のマッサージチェアを模範したリラックス出来る機材で身体を癒して貰った。
「ああ~……これ、どんなマッサージよりも効くわぁ~……」
「ふふっ、それは良かったです」
やっぱり疲れが溜まっているみたいだから、疲労回復効果がある治癒魔法を掛けてあげた。
ここ最近成長したのか、ちょっと魔法を使ったくらいじゃマナ欠乏症にならなくなった。
なんで急にと思わないこともないけど、別に困ることじゃないから気にしないようにした。
こうして直接美月さんの疲れを癒せるんだから問題ない。
夜、やっぱり精神的にも疲れていたのか美月さんは早めに休んでしまった。総理大臣だもん、心労も半端じゃない筈。
「気を遣わせてしまってごめんなさい、ジョンさん」
「構わないよ、ティナ。椎崎首相も君達と交流できて、心を安らげることが出来た筈だからね。
こちらもカレンがお世話になっているお礼を言わせてほしい」
「カレンも毎日楽しんでくれていますよ」
美月さんを連れてきてくれたジョンさんと、展望室で地球を見ながらゆっくりとお喋りをした。
「君が元気そうで何よりだよ。地球で色々あったから、ショックを受けただろう」
「まあ、慣れていますから」
確かにショックは受けたけど、それでも地球じゃ起こり得ることだって知ってる。
……うん、美月さん以外には秘密にしておくつもりだったけど、一番お世話になってるジョンさんにも打ち明けよう。
そうすれば、ジョンさんの心労を減らせるかもしれないし。
「あの、ジョンさん。あなたを信じて私の秘密を打ち明けたいんですが」
「それは……うん、ありがとう。誰にも言わないと誓うよ。君が許してくれない限りはね」
唐突だったけど、真剣な目で約束してくれた。その姿には安心感がある。
「私には前世の、地球人としての記憶があるんです。だから他の皆より地球に詳しいんです」
唐突なカミングアウトは、ジョンの消化器官に宇宙線並みのエネルギーを叩きつけた。
心労を和らげるつもりが、更なる心労を与えていることにティナは気付いていない。