星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
嗚呼、世界に幸福あれ!異星人対策室のジャッキー=ニシムラ(忍者)だ。
椎崎首相暗殺未遂事件を切っ掛けとして、主に西側諸国で大規模な反アード勢力に対する弾圧が開始されて数日が経過した。我が合衆国でも、逮捕者は既に数百名を越えている。
まあ、我が国は国民の武装率も高い。その分他国……例えば父祖の国より銃器を入手し易いからな。
当然反発も強い。言論や思想の自由を真っ向から否定しているのだからな、無理もない。
だが、反発した者は片っ端から逮捕されたり拘束されるのだ。デモを見れば分かるが、大半は日頃の鬱憤を晴らすために参加している。全員が筋金入りの思想家ではない。
これは歴史が証明している。思想家とは同時に扇動家でもあるのだから。
そして声を挙げれば確実に弾圧されると分かっていて声を挙げるような気骨ある思想の持ち主は、極少数だ。
更に今回はの弾圧は大多数の国民にとって実害が無いのだ。となれば反発の声が下火となるのは道理なのだ。
ついでに政府はデモ参加者の内筋金入りの活動家以外、つまり金銭などで動員された者に関しては注意だけで済ませるなど温情を見せた。
政府の徹底的な親アードキャンペーン、更にこれまでティナ嬢達が起こした数々の奇跡を大半の民衆は好意的に見ているのだ。
反発が完全に無くなることは有り得ないが、大勢を動かすことは二度とあるまい。
「クサーイモン=ニフーターを捕まえられないのは気になるわね」
「残念ながら、奴はモグラのように隠れておりますからなぁ」
ネット環境を完全に遮断しているのだろうな。更にアード側の監視から逃れるとするならば……海中か。
ここ十数年の技術革新によって海中に建設された家屋は少なくないし、現在進行形で増えている。
簡易水中テントなる物まで市販されているのだから。
「まあでも、これで少しは平和になるかしら?」
「政財界の混乱は暫く続きましょうが、変革には痛みが付き物。ですが、悠長な変化を待てる余裕はありませんからな」
今回の弾圧はかなり強引な手法であり、常道から外れた行為であることは明白である。批判は根強く残るだろう。
だが、我々人類にはもう悠長に変革する余裕など存在しない。
今回の弾圧を開始すると同時に、国連を通じて世界に地球の残存資源量と持続可能な社会の時間予測を公表した。
しかも内容は我が国が出したものではなく、ブリテンが出したより厳しいものであった。
これらはアード側から提供された観測データを元に再計算されたものであり、三十年以内に現代社会の崩壊が始まるとされた。
再生可能エネルギーを総動員したとしても、現在の需要には全く足りない。人口の大幅な減少があれば猶予は延びるが、その様な決断は出来ない。
少なくとも、解決策があるならば尚更な。
同時に提示された、アード側との交流が本格化した場合のメリットが大き過ぎるのも世論の背を押した。
現状を見る限り、間違いなく主導権はアード側が持つことになる。純粋な善意による支援や行動だからこそ質が悪い。
悪意をはね除ける理屈は幾らでもあるが、善意を謝辞するのは本当に難しい。高確率で相手の機嫌を害するからだ。
しかも相手は超常的な存在ならば尚更気を遣う。
まあ、その辺りは外交や政治の領分だ。人類の指導者達が愚かな選択をしないこと願う他無い。政治家になるつもりもないからな。
「このどさくさに紛れて、まさか統合軍の編成案まで任されるとは思わなかったわ。
お陰でティナちゃんの護衛も出来ない」
我が異星人対策室の一部と各国首脳にのみ共有された、宇宙に存在する脅威センチネル。
これらに対抗するため、ハリソン大統領は地球統一連合設立に合わせて統合軍も必要であると判断し、その案を軍部と何故か異星人対策室へ丸投げしたのだ。
順調にティナ嬢に毒されているようで何よりだが、丸投げされた方は大変だ。
元軍属であり
彼女は多忙故に中々ティナ嬢達と交流する機会を得られない。ケラー室長もその事に気を揉んでおられるが、残念ながら異星人対策室に彼女以外の適任者が居ない。
政府としてもこの件を重要視しているので、何れは軍部と我々を繋ぐ調整部門が設立されるだろうが、時間を要するのは間違いない。
軍人さん、とりわけ高級将校は聡明な人物も多いが同時に堅物も多いからな。アードとの交流機会が多い異星人対策室と関わるならば、柔軟な思考が何よりも優先される。
なにせ、ここに持ち込まれるアード由来の品や技術、文化は地球人からすれば常識の外側にあるものばかりだからだ。
「上も動いてくれています。今暫くの辛抱かと」
「分かってるわよ。はぁ、私も月でティナちゃん達とゆっくりしたいわ」
本来はティナ嬢の護衛役だったのに、随分と出世されたものだ。それを言うなら私もか。
ともあれ、ここ異星人対策室本部には数台のシミュレーション装置が密かに設置された。
これはアード由来の装置であり、なんとスターファイターのシミュレーターなのだ。
詳しい経緯は不明だが、ティリス殿の計らいらしい。地球人の高い闘争心に目を付けたのだろう。
手始めとして合衆国軍部から人員を募っているが、志願者が多くて選抜に難儀していると調整役がぼやいていたな。
全く羨ましい限りだが、無理もない。SFの醍醐味でもあるスターファイターのパイロットになれるのだ。
宇宙に夢を抱きながらも、宇宙飛行士に成れなかった者も大勢居る。
志願者が押し寄せるのも当然の反応だ。同時に、海外からも問い合わせが殺到しているらしい。
宇宙は我々を魅了する。それは古来より変わらないな。
「同意見ですな。私も月へ行ってみたいものですが、先ずは信頼を勝ち取りませんと」
まあ、ある程度は知っているんだがな。居留地に隣接する月面基地には、弟のケンジ=ニシムラが赴任している。
本来はISSのクルーだったが、月面基地の重要性が上がったのに合わせて其方へ転属となった。
……恐らく一族が手を回したな。信頼できる人材を配置したかったのだろう。ケンジは一族の中では割と常識人として通っている。問題はあるまい。
「それにしても、まさか実機を渡されるなんて思わなかったわ。地球の常識じゃあり得ないわよ」
我々の視線の先には、アード側からシミュレーターと一緒に提供されたスターファイターが一機翼を休めている。
強いて言えば某SF超大作の有名な戦闘機と類似している点が幾つもあるその機体は実機があった方が良いだろうとの配慮で提供されたものだ。
全く太っ腹なことだ。この機体の管理を巡って、一部の国が口を出しているらしい。この期に及んでまだ地球内部の覇権に拘るか。
「全く度し難いですな」
様々な思惑を察してため息を吐きつつ、ジャッキー=ニシムラ(際どすぎるハイレグ)は自身の主砲の位置を慎重に調整しつつ。
「人前で何やってんのよ!!!」
真後ろからメリルに股間を蹴りあげられて、恍惚とした表情を浮かべるのだった。