星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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世界の動き

 ティナが地球へ降りて椎崎母娘の窮地を救っていた頃、各国では粛清が着々と進んでいた。特に苛烈な弾圧を断行しているフランスでは少なくない血が流れていた。

 反アード主義者達は弾圧に堪えかねて、危機感を抱いていた反政府勢力と結託。密かに蓄えていた武器類を用いた武装蜂起に至る。

 彼らは自らを“人類解放戦線”と呼称して、アードに媚びへつらい自由を侵害する政府を打倒して、真の自由と人類の自立を掲げた。

 ある意味に於いて正論であり、軍の一部も参加を表明して大騒ぎとなったが。

 

 

 

「まさか、本当に蜂起するとは思わなかった」

 

 

 

 報告を受けたシャルル大統領は別の意味で衝撃を受けた。それは蜂起そのものではなく、ブリテンの助言がそのまま的中した故である。

 弾圧を強めれば、不穏分子は必ず武装蜂起をする。つまり、暴力による反撃を行う。

 ブリテンが“善意”で行った助言に基づいて製作されたシナリオ通りの展開である。

 

 

 

「よし、怯むな!ここまで的中してしまったからには、最後まで断行するぞ!」

 

 

 

 武装蜂起を想定していたフランス政府の対応は早かった。予め人類解放戦線に賛意を示すだろうと思われていた政府関係者や議員、要人達をリストアップしており、実際に賛意を表明した瞬間にアリアと当局が密かに収集していたスキャンダルや不正の数々を一気に暴露したのだ。

 無論清廉潔白な者も居たが、少数派であるので問題視しなかった。何故ならば、“道理に反するような者達が参加する組織”であると国民へ印象付けるためであった。まさしくプロパガンダである。

 

 

 

 

 それと同時に、ブリテンから密かに提供された地球文明の未来に関するデータを公表した。

 無論公表前にフランス各学会の権威達を集めて精査させたのだが、結論は時期に多少の誤差はあれど避けられない未来であるとされた。

 地球文明がこれからも繁栄するためには、アードと共に歩む以外に道はない。

 そう国民に思わせたのだ。論点のすり替えであるが、これが効果的だった。

 

 

 

「確かに見方を変えればアードに媚びているとのご指摘は、必ずしも的外れとは言えません。私は、いや我々政府はあらゆる批判を甘んじて受けます。

 しかしながら、それでも為さねばならないのです!我々に残された時間はあまりにも短く、その解決策を講じる余裕すらない。これが現実です。

 だからこそ!子供達の未来のためならば、私はどんな決断も行います!どうか、国民の皆様も我が子のため、次の世代のための決断を!」

 

 

 

 それに合わせて行われたシャルル大統領の演説は、大多数の国民に響いた。

 極一部の例外を除いて、我が子の安寧を望まない親は居ないのだから。

 これらの施策と容赦のない弾圧はまさに粛清であり、血は流れたがフランスの治安は短期間で驚異的な回復を見せた。

 

 

 

 

 フランスの情け容赦の無い治安維持戦を間近で観察していたブリテンは、静かな笑みと共に成功を祝った。

 自分達の祖先がやって来たやり方を現代風にアレンジして助言したのだが、それが見事に成功したのだ。

 様々な知見を得られ、しかもブリテン人が血を流していない。愉悦に浸るのも無理はなく、悪辣と言える国家の本質を良く現していた。

 とは言え、彼らも無関係ではない。フランスでの成果を検証しつつ、民意を慎重に分析しながら弾圧を続けた。

 

 

 

「反アード運動に参加されている人々の大半は、不安なのです。

 その不安を取り除くことこそが、我々の仕事ではありませんか?

 これまでの交流で得られたアード側の情報を、全て公表するべきですわ!」

 

 

 

 財界の有力者達を前に熱弁を振るうのは、ヨーロッパ方面に強い影響力を持つレイチェル=ニシムラ(くっ殺女騎士コス)である。

 彼女もまた未来を憂い、その資産と影響力を惜しみ無く投じて事態の収拾をサポートした。

 

 

 

 さて、主に西側諸国で発生している粛清劇を恐怖と共に観察していたのは中東諸国である。

 ファーストコンタクトからアード関連に距離を置いていた彼等であるが、同じイスラム圏のエジプトへティナ達がやって来た事が転機となって、民衆に関心が広がりつつあった。

 だが、中東諸国の連合体である中東連合としては、些か取り扱いに難儀している面もあった。

 良くも悪くも宗教の影響力が強い地域であるが故に、ティナ達の存在は色んな意味で厄介なものであった。

 

 

 

 合衆国でケイン=ラッセル率いるアード教が着々と勢力を拡大しているが、それ以外にもティナ達を神の使徒であるとする新興勢力が世界各地で誕生している。

 中東連合とて例外ではなく、宗教の影響力が強い故に各地で小競り合いが発生しているのだ。

 各宗教指導者達は政治の要求や世の流れを見て自制を促し、今現在流血沙汰までは発展していないが、何時過激な反応が起きるか分からない情勢であった。

 この流れにエジプト来訪が拍車をかけた。エジプト経由でアードやリーフの情報、そして“トランク”や“医療シート”が僅かではあるが供給され始めたのだ。

 地球の常識では計れないこれ等の魔法の産物は、まさに神の御業とも言えた。

 アードに親しみを覚える民が増えることは時流として歓迎すべき事ではあるが、同時に少数ではあるがアードを神格化する者達も増えているのが悩みの種であった。

 

 

 

「悩む必要はありますまい。今こそ我らの寛容さを発揮する好機ではありませんか。

 頑迷な宗教国家連合と想われている我々が率先して新たな友を暖かく迎える。

 これこそが、偉大なる先人達の教えを脈々と受け継ぐ我らの使命だと私は愚考します。

 お歴々の皆様、どうかご一考の程を」

 

 

 

 有力な政治家や宗教指導者達が集まる極秘会談にて熱弁を振るうのは、中東世界に影響力を持つロレンソ=ニシムラ(悩ましい全身赤タイツ)である。

 この場に居る全員と親しい間柄であり、政財界に友人の多い彼の発言が軽視されることはなく、中東連合は国内の情勢に細心の注意を払いつつ、エジプト経由でアードとの交流へ向けて舵を切る事になる。

 それと同時に、ハリソン大統領が提唱する地球統一連合設立協議会への参加を表明。

 中東連合の参加は、ハリソン大統領にとって大きな追い風となる。

 

 

 

 各国で動きがある中、ニシムラ一族による暗躍も無視できるものではなかった。

 

 

 

「人類の存続と繁栄のためならば、アンダーグラウンドなやり方も肯定する。全ての責任はワシが負う。来るべき未来のため、何よりも今を生きる人々のために各自尽力して欲しい」

 

 

 

 一族を率いるキング=ニシムラ(黄金アヒルパンツ)は、一族の有力者達を動かして交流の促進と統一連合設立へ向けて、一族が蓄えてきたあらゆるリソースを注ぎ込んだ。全ては地球に住まう人々の笑顔と未来のために。

 多少多様性に富む彼らの語られることの無い貢献もまた、称えられるものであるのだから。

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