星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
美咲ちゃんを受け入れて三日が経った。地球では、案の定美月さんに対する批判の声が挙がっていた。特別扱いになっちゃうし、私の助けを断らなかったって批判する人が居るんだよね。所詮は口だけかってさ。
気持ちは分からないでもないし、こんな声が挙がるのも予想してた。
だからアリアにお願いして、批判の声が挙がり始めた段階で教えて貰った。
「庇うのは駄目だよ?それこそ美月ちゃんの立場を悪くしちゃうから☆」
「分かってるよ、ばっちゃん」
バカな私だって、ここで美月さんを庇うような事をしたら逆効果だって分かる。
美月さんは全てを受け入れようとして、それでも助けたのは私の我が儘だ。
「ティナの判断は、今後の交流に於いてアード側にプラスとなります。批判する地球人の意図が理解できません」
「これは感情の問題なんだよ、アリア。
だから理屈じゃないと思う」
私個人の感情で助けたんだけど、アードとしても美月さんの存在は重要だ。
あのまま美咲ちゃんを死なせちゃったら、間違いなく美月さんの政治活動に影響が出る。
美月さんは優しくて真面目な人だから、後悔しながら生きる事になる。そんなのはアード側としても望まない。
「地球人の感情は複雑怪奇ですね」
「まあそれが地球人の良さでもあるからさ」
妬みの感情なんてアード社会にはほとんど無いからなぁ。私が知らないだけであるかも……あっ、ミドリムシにはあるかな?
……まあ良いや。取り敢えず今は美咲ちゃんの様子観察をしつつ、月での暮らしに慣れて貰わないといけない。
預かってる身だし、個人的にはお友達になりたい。
ちなみに滞在してるカレンは初日からグイグイ行って、まるで十年来の親友みたいな関係を築いていたりする。コミュニケーション能力が滅茶苦茶高いんだよなぁ。
「美咲ちゃん、こんにちわ」
「こんにちわ!ティナさん!今日も来てくれてありがとうございます!」
医療区画にある治療室のひとつに入ると、柔らかいベッドで身体を起こしていた美咲ちゃんが笑顔で挨拶をしてくれた。
今のところ異常は見付かっていないけど、念のためこのまま一週間は経過観察としてこっちで過ごして貰う予定だ。
今の日本に戻すのは危ない。アリアの観察と美月さんからの情報だと、誰かが喋ったみたいで美咲ちゃんの事が日本中に知れ渡ってるみたい。
マスコミや過激なパパラッチと呼ばれるジャーナリスト達が、美咲ちゃんの事を血眼になって探しているらしい。
そんな人達に、長い闘病生活で弱ってる美咲ちゃんを会わせるわけにはいかない。絶対にロクな事にならない未来が見える。
「もう、敬語なんて使わなくて良いって言ったのに。お母さんに似て真面目だなぁ」
美咲ちゃんは大分弱っていたから、体力回復のためにアードの栄養ドリンクを飲ませた……らしい。
いや、セシルさん達は完全な好意で飲ませてあげたんだよ。地球人に変化が起きる可能性が高いって情報を共有していなかった私が悪い。
……と言うか、ジョンさん達の変化をアード側は問題視していないんだよなぁ。
ザッカル局長にも、健康になって未知の力を手に入れた。それのどこに問題があるのかって心底不思議そうに聞かれたし。
今のところ変化は見られない。ジョンさん達はその場で変化が起きたし、やっぱり個人差がある。もしかしたら単なる偶然が重なっただけかな?(希望的観測)
「身体の調子はどうかな?」
私も側に用意された椅子に座る。やっぱり長い闘病生活で身体が弱ってるみたいで、立ち上がったり歩いたりするのはまだ難しいみたいだ。
「ここで治療を受けてから、まるで身体が羽根みたいに軽くなってるんです。
お医者様にはまだ無理をしちゃいけないって言われてしまいましたが、今すぐにでも走れちゃいそうです!」
「あはは、病み上がりなんだから無理しないで。ゆっくりと身体を癒してくれたら良いよ」
一週間と言ったけど、美月さんからは美咲ちゃんが完全に回復するまで月で預かって貰えないかって相談されてるし、ばっちゃん達も許可してる。地球のドタバタに巻き込みたくないんだろうな。
今の美咲ちゃんの立場は、ちょっと危ない。私の我が儘だけど、申し訳無いな。
まあ、見殺しにする選択肢なんて最初から無いけど。
「ここの生活には慣れた?」
「皆さん本当に良くしてくれて、何のお返しも出来ないのが辛いです」
「美咲ちゃんが元気になってくれるのが一番のお返しになるよ。だから気にしないでゆっくりと身体を休めてね」
まあ、気にするだろうけどさ。
そう考えながらのんびりとお喋りをしていたら。
「おや、ティナじゃないか。邪魔をしてしまったか」
「ヤッホー、セシリア」
「セシリアさん、こんにちは」
部屋に入ってきたのは、セシリアだった。相変わらずの面倒見の良さを存分に発揮して、ゼバ星系の皆さん絡みで忙しいだろうに毎日美咲ちゃんと会ってるみたいだ。
ちなみに彼女にとって親しい年下の子は全部妹か弟認定される。絵に描いたような世話好きお姉ちゃんだよなぁ。もちろん美咲ちゃんも妹認定されてる。
「身体を起こしていて平気なのか?」
「はい、お陰さまでとっても調子が良いんです!」
「それは良かった。今日は良いものを持ってきてな」
「良いもの?」
ちなみに私も年下なんだけど、何故か妹認定はされていない。何でだろうって思ってたら、ばっちゃんが教えてくれた。
曰く、「ティナちゃんはもうフェルちゃんから溺愛されてるし、お世話する必要を感じなかったんだよ☆」と。
まるで否定できないのがなんか悔しい。(ティナ長考中)
「うむ、これは我が部族に伝わる霊薬でな。幸いにして、地球やアードの植物で再現できたんだ。フィオレの手を借りてな。
もちろん事前に調べて地球人の身体を害する成分は含まれていないと出た。
味についても、地球のフレーバーだったか?その技術を借りて甘いものに仕上げた。無理なく飲める筈だ」
「れっ、霊薬ですか」
「ああ、大層な呼び名ではあるが要は気力薬のようなものだ。
つまり、活力が出る」
「元気になるお薬なんですね?」
フェルには頭が上がらないからなぁ。色々世話を焼かれてるのも事実だし、良く甘えてるし。
気をしっかり持たないと、何もかも投げ捨ててフェルに溺れそうになるから怖い。
「じゃあ、折角だから頂きます!」
「ゆっくりと飲むんだぞ。改良したとは言え、オリジナルは苦いからな」
「んくっ……あっ、イチゴの味がする……それに身体がぽかぽかする……ん……何だか背中がむずむずする」
「どれ、見せてみろ……おや、これは?」
『サンプルが増えました』
アリアの声で現実に引き戻された私は、嫌な予感がしたから慌てて振り向いた。
そこには、背中から透明な羽根を左右に二枚伸ばした美咲ちゃんが居た。
……ファッ!?