星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

473 / 473
大人達の挽歌

 地球側にとって最大の不幸は、唯一状況を何と無くではあるが理解できるティナが美咲の変化とその後の様子観察に掛り切りとなって、地球へ意識を振り向けて居なかった事である。

 当然アリアはハリソンとザッカルの会談を把握していたが、今現在ティナの関心が美咲へ向いていた事もあって知らせていない。

 アリア自身も興味深い研究対象として美咲にリソースを割いていたので、会談後に地球で発生した騒動に関心を向けて居なかった。

 唯一その騒動を把握していたのはティリスだが、チャブル首相と連絡を取りながら事態を静観していた。

 あくまでも地球側の問題であり、過度な介入な内政干渉となると判断した故である。

 

 

 

 だが地球側、特に親アード国家群はむしろアード側の積極的な介入を望んでいた。

 圧倒的な強者による介入は、反発も生むと同時に大きな抑止力となる。

 何よりも、アード人と触れ合う機会が増えればそれだけ理解が浸透する。

 未知故の恐怖は、既知となる事で大抵は改善されるのだから。

 とは言え、今現在ティナ達が月へ引きこもった原因もまた地球側にあるのだ。来訪を要請することに躊躇が生まれた。

 双方の差を正しく認識する故の判断である。尤も、ティナ本人は呼ばれたら何処へでも行くつもりなので、ここでも双方に認識の相違が発生してしまったのだが。

 

 

 

「二日以内に意見を纏めよと仰有るのですか!?無理です!せめて一月は頂きたい!」

「無理は承知している!だが、これはアード側からの要望なのだ!彼等は二日以内に調印式の日取りを教えて欲しいと行ってきたのだ!長時間待たせるわけにはいかん!

 もし期日までに返答できなければ、どの様な対応をしてくるか分からないのだぞ!

 手段は選ぶな!人類の未来のためだ!」

 

 

 

 合衆国や友好国ではハリソン大統領によって会談の内容が周知され、同時に合衆国外務大臣は部下達に指示を出し、それは外交の最前線となっている国連本部の国連大使に対する厳命となった。

 無茶とは言え、宮仕えの悲しい性として命令された以上実行するしかない。

 そこで先ずはもう一つの大国、連邦と急いでアポイントメントを取った。意外なことに、合衆国からの接触を待っていたかのように連邦側は直ぐに応じた。

 

 

 

「先日申し上げた通り、我が国の立場は変わらない。懸念は表明しましたが、反対しているわけではありません。

 むしろ賛成票を投じると確約しましょう」

「では、なぜあの様な?」

「一種のガス抜きですよ。大半の国にとって、火星の所有権よりも国内の安定が最優先事項。

 合衆国主導の議題へ物申した。その事実だけで満足するものです。内政面への支援を提示すれば、賛成票を投じるでしょうな。

 我々も協力しましょう」

 

 

 

 連邦の真意を推し量ることは出来なかったが、時間がないのもまた事実。合衆国を中心とした西側諸国は、国際外交では異例の早さで反対していた国々へ経済支援などを提案。

 特に合衆国からの譲歩を引き出した諸国は賛成することを約束した。僅か一日と言う異常な早さであった。

 これは、アード問題で各国の国連大使達が繋がりを深めていた事も影響していた。

 

 

 

 翌日午前には決議が始まり、大多数の賛成によってアードとの友好条約締結が可決された。

 同時に、緊急で開かれた安保理事会では特例としてこの件に関する拒否権の無効化を合衆国が表明。他国も続き、中華も渋々と承諾した。

 

 

 

 そして翌日、ハリソン大統領は直ちにザッカル局長へ同意が取れたことを連絡した。

 

 

 

「それは素晴らしい!いや、私達のために皆様の貴重な時間を浪費させたくない。

 可能ならば、今すぐにでも行いましょう!」

 

 

 

 

 善意全開の提案に、ハリソン大統領の胃が悲鳴を挙げたのは言うまでもない。こんな時だけは再生するジョン=ケラーを羨ましく思ってしまった。思っただけではあるが。

 その日の夜。国連本部にて急遽開催された調印式で各国の国連大使達が見守る中、地球代表として担がれたハリソン大統領と急遽来訪したザッカル局長が議定書に調印し、ここに地球=アード友好条約が締結される運びとなった。

 

 

 

「地球の皆様に最大限の敬意と感謝を捧げます。これからアードは地球人の善き友として、共に歩ませていただきます。

 願わくば、双方の未来が幸福の光で満たされますように」

 

 

 

 

 記者達の前に立ったザッカル局長は笑顔でその様に宣言した。地球との国交樹立はセレスティナ女王の願いであり、決定事項である。アード社会において、セレスティナ女王の意志を聞いて出来ませんでしたは通用しない。

 無事に締結できたことは、同時に肩の荷が降りたことを意味する。それ故の晴れやかな気持ちでもあるのだ。

 地球側からすれば堪ったものではないが。

 

 

 

 大人達が苦労している最中、我らがティナは。

 

 

 

「大丈夫です。自分を信じて、語りかけてください。必ず応えてくれますから」

 

 

 

 居留地にある訓練所にて、両手を前に突き出した美咲の後ろからフェルが優しく言葉を掛ける。

 美咲は目を閉じて、集中しながらフェルの声に従い言葉を紡ぐ。

 

 

 

「ファイア!」

 

 

 

 次の瞬間、掌に生成された火球が飛び出して、クレアが作った的に命中して燃え上がる。

 

 

 

「出来た……!」

 

 

 

「上手ですよ、美咲さん。呑み込みが早いですね」

 

 

 

「フェルさんの教え方が上手だからですよ」

 

 

 

 リーフ人となってしまった美咲は、人類の夢である魔法を使ってみたいとお願いした。

 フェルがその願いに快く応じて、ティナとクレアが付き添う形で魔法の練習を開始。

 最初にフェルがお手本を見せて、初歩の魔法であるファイアを一発で成功させて呑み込みの良さを発揮した。

 

 

 

「凄いよ、美咲ちゃん!私なんて初級魔法を使うのも苦労したのに」

 

 

 

「皆さんのお陰です!ティナさんの魔法も見てみたいです!」

 

 

 

「私の魔法?」

 

 

 

「はい。テレビでも、あんまり魔法を使ってるのを見たことがなくて」

 

 

 

「あー……まあ、魔法を使う機会が無かったからねぇ」

 

 

 

 初級魔法であるファイアですら、かつてのティナだと死活問題となる。

 だが、多少は成長した(ティナの感覚)今ならば、簡単な魔法は使える筈。

 

 

 

 

「クレア~、新しい的をお願い!」

 

 

 

「分かりました~!」

 

 

 

 クレアが右手を少し振るうだけで、用意されていた土から立派な的が生成された。それを確認したティナは右手を的へ向ける。

 

 

 

「ファイア!」

 

 

 

 ティナとしては、全力を出しても今の自分じゃ美咲と同じかちょっと小さい程度の火球を想定していた。

 だから思い切りマナを込めた結果、数十メートルの巨大な火球が撃ち出され、的に直撃して大爆発を引き起こした。

 想定していたフェルが障壁を展開して爆風を防ぐことが出来たが。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 ティナ自身が呆然と立ち尽くす結果となり、密かに観察していたティリスは笑みを浮かべるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~(作者:あずももも)(オリジナル現代/冒険・バトル)

【TS成分少なめがお好みの方は8章を飛ばしてお楽しみください】▼【最初にTS場面ご希望の方は8章→1章~の流れでお楽しみください】▼【1巻からの方は3章より・2巻からの方は5章よりどうぞ】▼◆【地上に舞い降りた野良猫系女神】【僕っ子ショタ系口調呑兵衛ロリ】【たまにおっきくくく】【nai-nai】【人助けするくせ隠れるのが趣味なヘッドショット系ロリ天使】(視聴…


総合評価:18976/評価:7.39/連載:753話/更新日時:2026年06月04日(木) 18:47 小説情報

TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう(作者:ひのかぜ)(オリジナルSF/ノンジャンル)

天の川銀河の一角に存在している、地球を遥かに凌駕する科学力と想像上の産物である魔法技術を併せ持つ、強大な軍事国家であるリーガル大帝国。▼そんな国に、代々伝わる軍人の家系の1人として転生してしまった元日本人の男はとある日、女帝陛下より褒美として『太陽系』を与えられる。▼これは、そんな彼……もとい彼女が、女帝陛下からもらった太陽系にある地球に住む人々と関わりを持…


総合評価:5109/評価:7.87/連載:35話/更新日時:2026年04月02日(木) 16:15 小説情報

強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました(作者:Yura0628)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ミサイルの爆発に巻き込まれた強化人間イーグル1。目覚めた先は、魔法少女が戦う過去の地球だった…!▼自身の体が女性に成っている事に困惑しつつ、元の世界に戻るため、イーグル1は魔法少女として戦う事の対価に、この世界の組織に協力を取り付ける。だが、襲いくる強力な魔獣を相手していく上で、身体的損傷を許さざるを得ない状況に追い込まれ…彼女に救われた魔法少女達は、目から…


総合評価:1893/評価:8.5/連載:37話/更新日時:2026年05月09日(土) 11:11 小説情報

ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました(作者:chikuwabu)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 魔物からも認識されないし、人間からも認識されない。そんな癖の強いスキルのおかげで人知れずソロ探索をしていたら、いつの間にかドワーフだとか座敷童子だとか、変な目撃証言が広まっちゃった、見た目子供な女の子(18)のお話。▼ そんな噂は気にもせず、妖精少女をパートナーに従えて、カレーを作ったり、ハンマーを振ったり、探索したり、人助けをしたり、たまに目撃されたり、…


総合評価:10004/評価:8.74/連載:632話/更新日時:2026年06月03日(水) 23:00 小説情報

コミュ障TS転生少女の千夜物語(作者:テチス)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 何かよく分からないが自分の好きなキャラを作ったらその姿で異世界に居た。どうやら『夜の化身』として凄い力を手に入れてしまったらしい。夜になるたびポンポン生まれる眷属がなんか強い。▼ だけどクリエイト時につけてしまったもう一つの設定の弊害によりコミュ障で表情の変わらない女の子になっていた。その表情と能力が周囲の勘違いを産み、空回りを生んでいく。▼8/13 完結…


総合評価:25026/評価:8.94/完結:72話/更新日時:2021年08月13日(金) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>