星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
「どうなってるの……?」
目の前で起きた大爆発を前に、私はただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。フェルが障壁を展開してくれたから被害は一切無いけど、この威力は明らかにおかしい。
アード有数の魔道師でもあるお父さんのファイアを小さい頃に見せて貰ったけど、ここまでの威力は無かった。
もちろんその時は危なくないように加減してるとは思うけど、これは明らかに規模が違う。
確かに最近マナが成長してるなって実感はあるけど、ようやく人並み程度かなって感覚だった。
こんな威力、チートのフェルならまだしも私が?訳が分からない。
戸惑っていると、いつの間にか美咲ちゃんはクレアと一緒に訓練所から出て、代わりにばっちゃんとアリアが入ってきた。
ばっちゃんはいつものような笑顔じゃなくて、いつになく真剣な表情だ。アリアは相変わらず無表情だけど。
ちょっと不安になったけど、傍にフェルが居てくれるから落ち着くことが出来た。
先ずは説明しないと!
「あの、ばっちゃん。これは……」
「今のはフェルちゃんがブーストしたのかな?」
ばっちゃんは私じゃなくてフェルに声をかけた。
そうか!フェルがブーストしてくれたならあの威力も!
「いいえ、私はなにもしていませんよ。
今のは正真正銘、ティナのマナで生成された魔法です」
「え?」
フェルはなにもしていない……?
「そっか……はぁあ……予想よりずっと早いけど、これ以上隠すのは逆に危険……か。
アリア」
「人払いの結界と防音結界を展開済みです。周辺に生命反応もありません」
「え?人払い?防音?」
何だろう?何と無く人には聞かれたくないような大事な話をするんだろうなって身構えていたら、突然ばっちゃんが片膝を地面に着けた!
「ばっちゃん!?」
「本来ならば女王陛下の御認可があるまでは決して伝えることを許されていませんでしたが、既に封印の綻びが看過し得ない程度にまで進行していると判断します」
「えっと?」
「ティナ」
ばっちゃんの変わりように戸惑ったけど、フェルがそっと私の手を握ってくれたから少し落ち着けた。
「どうか驚かずにお聞きください。貴女様は御自分をただの小娘と自認されていますが、それは誤りです。
貴女様は、アード王室の姫殿下にあらせられます」
そう言ってばっちゃんはそのままアード式最敬礼をした。
え、待って。私が、お姫様!?
「誰かと間違えていたり……」
「畏れながら申し上げます。貴女様の御母上様は、セレスティナ女王陛下の妹様。
すなわち、王妹殿下でございます」
「お母さんが、女王陛下の……?
じゃっ、じゃあ……私は……あっ、でも、私は皆と髪の色が……」
アード人は金髪、私は銀髪……。
「ティナ、遺伝子レベルで貴女とマスターティアンナが実の親子であることを私がここで証明します。そのようなことは言わないようにお願いします。マスターフェルが悲しみますよ
それと同時に、前回帰還した際にティアンナ殿下の髪色が銀となっていたことをお忘れですか?」
「アリア……あれは私に合わせて……」
「畏れながら申し上げます。その御認識は誤りです、殿下。
これまで王妹殿下は、ティナ殿下のマナを封印するために、御自身のマナを使っておられました。
髪色はその際に変色したのですが、それが元に戻ったのはティナ殿下の封印が解かれつつある証です」
ばっちゃんの話は衝撃的すぎて、現実味を感じなかった。混乱していた。
でも、私のどこか冷静な部分は納得してるんだよね。
良く考えてみれば、単なる小娘が見付けた銀河の反対側にあるアードから見れば未開の惑星との交流に、国を挙げて全力になる筈がない。
私が王族だから……?
でもそれは……なんだか……。
「嫌だな……」
「殿下?」
今はまだ無理かもしれないけど、私が王族だから地球人と仲良くなる。それは違うような気がする。
誰に言われたからじゃなくて、自分の意思でお互いに興味をもって仲良くするのが正しい交流だと思う。我が儘なのは分かってるけど……。
「ティナ、大丈夫です」
「フェル?」
私の内心を察したのか、フェルは変わらずに優しい笑顔で語りかけてくれた。
「私はティナが王族だから地球人と仲良くしてるわけじゃありませんよ?
異星人対策室の皆さん、特にカレンちゃんや美咲ちゃんは大切なお友達です。
これは自分の意思です。もちろん私だけじゃなくて、皆もそうです。
私の言葉を信じてくれませんか?」
「それは……信じるけど」
「付き加えるならば、この事実は女王陛下の命により最重要機密扱いとなっています。
ティナの正体を知る者は、アードでも極一部だけです。大半の者は、貴女が持ち帰った交流の成果を実感して地球人に関心を持ちました」
「ん……」
フェルとアリアがそう言うなら……まだまだ実感はない。気になることはたくさんあるけど、落ち着いて考える前にこれだけは聞きたい。
「じゃあ、どうして秘密にしてるの?」
数少ない女王陛下の身内……姪になるんだよね……まあそれは後から考えるとして、そんな私の存在を秘密にする理由が分からない。
アードには地球みたいな政治闘争は存在しない。
まあ、ミドリムシは居るけど。
「畏れながら申し上げます。これらは全て王妹殿下の強いご希望でした。
ティナ殿下には、その時が来るまで自由に過ごしていただきたいとの願いです。
女王陛下がこれを御認可なされ、秘匿するためにドルワの里で過ごしていただきました。我が里でも知るのは私を含めて極一部のみです」
「お母さんが……」
お母さんの優しさかぁ……つまり私は生まれ変わった時からずっと護られてきたんだなぁ。
護られてばっかりだ。そう考えると、私の行動は皆をかなりヒヤヒヤさせたんだろうな。特に傍で見てるばっちゃんは。
「……ばっちゃん、ありがとう」
「勿体無いお言葉」
「ん……それやめてよ。話難いし」
ばっちゃんは最敬礼のままだ。
なんだか、嫌だ。
「しかしながら……わっ!」
「おー、思っていたよりもずっと軽い!」
ばっちゃんが遠慮するから、脇の下に手を入れて抱えあげた。まあ、有り体に言えば抱っこだね。
前々からしてみたかったんだよなぁ。
小柄な私よりずっと小さなばっちゃんは、当たり前だけど子供扱いされるのが大嫌いだ。だってこんな成りだけど千年生きる長老だからね。
当然ながらムスっとしてる。
「ちょっと、ティナちゃん?」
「そう、私はティナだよ。秘密を教えてくれてありがとう、ばっちゃん。
正直色んなことを知りすぎてちょっと混乱してるけど、これからも今までのようにお願い」
「ティナちゃん……ん、分かった☆
分かったから早く降ろして欲しいな☆」
「んー、私の精神安定のためもう少し!」
……ゆっくり考えよう。時間はたっぷりとあるから。